


[is A.]
映画と言うのは単なる筋書きではない、ということを教えてくれる本作であった。
少年犯罪、父と子の葛藤、空虚な心を抱えた少年たちが他には求められない愛情を互いに求め合う関係、などなかなか興味を引く設定と配役であるにも関わらず、出来上がった作品には心に沁み通っていくものがないのはどうしたことだろう。
悲しいかな、映像が映画に成りきれてない素人っぽい技術を感じさせてしまうのだ。
技量が及ばなければ良い素材があってもそれを生かしきれないことが判る。
それはTV的な顔のアップをはじめとするそれぞれのショットの構図が稚拙に感じられることや使われる台詞が陳腐であること。各人物の造形も物足りなさがある。ストーリーを表現する為の演出にももどかしさがある。
そういった技術的な未熟さがまず感じられるので作品の内面に入り込む障壁になってしまうのだ。
そして主人公の行動。少年犯罪による無差別爆破事件で妻子を殺された刑事は4年後出所した若者を撃ち殺す。
このラストは無論怒りで犯人を撃ち殺しても心の問題は解決しないことを訴えたかったのではなかろうかと思うのだがやはり同じく稚拙な表現の為にありきたりの感じ方を呼んでしまう。すべてが物足りないのだ。
少年犯罪の若者を小栗旬が演じていて彼は非常に魅力的だった。姜暢雄演じる若者から崇拝されている、という役でもあり二人の部分がとてもよかっただけにここをもっと描いてくれていたらよかったのに、と思う。小栗演じる少年は以前仲のよかった友達も殺害しているわけで、そういう関係に焦点をあてて父親や刑事の部分は少なくてもよかった。小栗旬が素晴らしかっただけに本当に勿体ない。残念である。
監督:藤原健一 出演: 津田寛治 小栗旬 姜暢雄 内藤剛志 戸田菜穂 水川あさみ
2003年日本