映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2006年10月02日

「LOVERS」十面埋伏 /HOUSE OF FLYING DAGGERS

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大変面白い映画でした、色んな意味で。
何と言っても踊りを含むアクションの華麗さ・奇抜さを美しい映像を通じてみるのは心地いい事です。
小妹役のチャン・ツィイーのきりとした強い眼差し、優美な身のこなしは見惚れてしまう魅力に溢れています。
金城武も相変わらず2枚目で彼の大きな身体はヒロインの華奢な風情を表現するのにうってつけの相手役です。
が今回の見所はアンディ・ラウなのかも。私は彼の作品を殆ど観てないのです(思い出せるのは「インファナル・アフェア」ものくらい)が、香港のスーパーアイドル的な存在というイメージがありますからきっとヒーローの役が多いのだろうと思います。その彼が演じた劉という男はなんとも物悲しい情けない存在ではありませんか。
感情を押し殺した演技から苦悩が伝わってきます。ラスト雪の中をよろける様に去っていく姿にもどうしようもなかった悲しさを感じました。
この物語は王様やお姫様の話ではなくしがない役人と飛刀門の下っ端の二人の生き様なのでした。
その点も前作の「英雄」と比べてまた興味深いのではないでしょうか。数多くの作品はどうしても目立つ存在の者が主役になってしまうものですが、このように名もなき者たちにも生死を賭けた生き様があったはずです。

この映画を観てて唐突に白土三平の「カムイ外伝」の中の一話を思い出しました。それは抜け忍のカムイが山の中に住む木こりの集団の中に身を置き追っ手から姿を隠す、という話なのですが、実はその木こり集団こそが追っ手でそこでカムイが知り合った美しい少女はカムイを殺す為に機会を狙っていたのでした。だが少女はカムイと過ごすうちに彼を愛してしまったのです。
別にストーリーは似てはいないのですが小妹が盲人のふりをしていたことに対してこの少女が美しい顔を汚して醜い顔に見せていたこと。カムイを殺す為に短剣を投げる手段をとっていたこと。カムイを騙していたこと。そして最後に死んでしまった事などが不思議に重ね合わせて思い出されたのでした。
まあ、余談です。

ところで(私を含めて)多くの人がこの映画に疑問を持っているようです。つまりはこの映画のストーリーと主題がどうしてもよく判らないのですね。
張芸謀をして一体なぜなのか?それはエンドロールが出てきてあっと叫んだのですが、この映画を「故アニタ・ムイに捧ぐ」となっているではないですか。実はアニタ・ムイがこの映画の要であろう飛刀門の頭目であったのでした。
彼女の代役を立てることもなく作り上げた作品はどうしてもこのような「何かが足りない」状態になってしまったのでしょう。
まったくアニタ・ムイの頭目を観てみたかったと思います。

それとこの日本語タイトル。最近タイトルに疑問を持つことが非常に多くて一体どうしてなのか、と思うのですがこの映画でも「LOVERS」では皆の疑問がより多くなってしまうようです。
言語タイトル「十面埋伏」の方が日本人の目で見てもまだ八方に伏兵が潜んでいる危うい状態を感じさせていいのではないでしょうか。主人公たちはこのタイトルどおり八方ふさがり、自分たちではどうしようもない立場にいるのですから。
金が小妹に言った「風のように生きていこう」という言葉は彼女にはかなわぬ夢でしかなかったはずです。

か、英語タイトル「HOUSE OF FLYING DAGGERS 」飛刀門というわけでストレートでいいですね。

中華圏の映画を観てると役名と役者名が重なっている事がよくあるのですがここでも金=金城武、劉=劉徳華、チャン・ツィイー=一番若いから小妹、というそのまんまですね。

監督:張芸謀 出演:チャン・ツィイー、金城武、アンディ・ラウ
2004年中国




posted by フェイユイ at 22:40| Comment(2) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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