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2006年11月20日

「フレンチ・コネクション」ウィリアム・フリードキン

フレンチ・コネクション.jpg

70年代アメリカ映画の屈指の名作。私は勿論テレビで観てた筈なのだがすでに細かい記憶はなく観るうちに「あーそうそう」と少しずつ思い出す。
とは言え子供が観るにはかなり渋い話でもある。刑事のコンビものと言うのは定番で人気もあるがなにせジーン・ハックマンとロイ・シャイダーという色気のないやつらだし(って私は二人とも、特にハックマンが好き)麻薬密輸組織を数週間に渡って張り込み尾行するという地道な捜索活動の部分が結構長いのだ。
今観るとそこら辺が面白いのだが、覚えているのはやはり派手なアクションシーンであった。
それと酷く寒い日に金持ちのヤク(昔はこう言った)取引の黒幕シャルニエが暖かいレストランの中でフランス料理を食べる間、街角で冷たくなってるであろうピザを食うしかないポパイ刑事(ハックマン)の姿である。薄い手袋をしていて靴をこすり合わせているのが辛そうだ(この日は本当に凍てつく寒さだったらしくハックマンの演技もそれだけではないようだ)

地味で暗い性格のクラウディ(ロイ・シャイダー)とどこかとぼけていて豪快なポパイの対比は楽しい。
この映画は実際の事件とそれに携わった刑事たちをモデルにしているそうだが、彼らのキャラクターも本人達とほぼ同じだと言うことで現実でもこういうデコボコな組み合わせがうまくいくものなのだろう。

この映画の特徴の一つはドキュメンタリータッチで撮られていることで全編ロケだということだ。
つまり実際の事件現場で役者たちがいきなり演技を始め何も知らされていないカメラマン達が考えながらその行動を追うことでドキュメンタリーらしくなるということなのだが、上手いと感心するもののカメラマン達の腕にこそ驚く。一体そんな風でこうもスムーズにいい画面が撮れるものか。
例えば高速道路の渋滞場面など断りもせず、勝手に渋滞を作って撮影したらしい。無論警察に怒られたという。物凄いことやる。
それだけでなく度々ゲリラ撮影を行っている様子。
そのために緊張感溢れる映像が生まれているが、限られた予算でなんとか作り上げる、という意味もあったのではないか(←ハックマンは予算のせいではないと信じたいそうだが)

それにしても実際のニューヨークの街並みが見れるというのも楽しいことだ。古びた雰囲気の街や行きかう人々の服装や髪型もいい。

カーチェイスだけでなく麻薬取引の黒幕シャルニエとポパイの地下鉄での駆け引きが面白い。シャルニエという人物がいかに食えない人物かと言う事がわかる。

そして有名な高架橋の下のカーチェイス。
ドイルを射殺しようとした殺し屋ニコリは失敗し電車で逃げていく。その電車を高架橋を見上げながら奪った車で追いかけるポパイ。
運転しているのはジーン・ハックマン自身で、サイレンを鳴らしながら行きかう車の中をぶっ飛ばしている。監督もサイレンつきで追いかけたらしい。周囲を走る車は一般の車両で2・3のスタント・カー以外は何の仕掛けもないという。いつ大事故になってもおかしくない。実際、すれすれの無傷で駆け抜けるはずのハックマンの車はスタントカーにぶつかってべこべこになる。それでも走り続けたのだ。
まったく尋常ではない。監督は青二才だからできた、とか。
命知らず、というのだろうか。

派手なアクションシーンに続く物語の最期は納得しがたい落ち着かないものとなっている。
黒幕であるシャルニエは大勢の警官に囲まれているにも関わらず無事帰国。手を組んでいたサルは捕まったものの減刑され釈放されているという。
フリードキン監督はこの顛末は麻薬犯罪組織と警察上層部の裏取引ではと考えている。なら一体ポパイたちの寝る間も惜しんでの捜索とはなんなのか。
映画はポパイ刑事がもうすでに姿を消したシャルニエに向かって発砲する音で終わっている。最期まで犯人の追跡をあきらめなかった刑事の執念の一撃だった。
しかもこの時ポパイは自分を否定し続けた上司を間違えて撃ち殺すのだ。空しい終わり方である。
命がけで働いても何を得ることもない。そうしたどんよりしたラストがポパイ刑事とこの映画を記憶に残すのかもしれない。
(この最期の場面は廃墟となった精神病院が舞台となっているらしく、足元もぬかるんでいるしじめじめして気持ちが悪い)

そしてこのポパイ・クラウディのモデルである本当の刑事たちは不正行為を訴えられ辞職したという。
監督が言うには人気者になった嫉妬の為、無実の罪を着せられたのだと。
ますます空しい。

監督:ウィリアム・フリードキン 出演:ジーン・ハックマン、ロイ・シャイダー、フェルナンド・レイ
1971年アメリカ

映画の冒頭に黒人差別を容赦なく口にしたり暴力に訴えるシーンがある。これには少なからずショックを覚えた。同時にジーン・ハックマンは平気でこういうことができるのか、とも思えてしまうからだ。
だが現実のハックマンはそのシーン(黒人を酷く殴りつける)はやれないと監督に訴えたらしい。監督はしょうがないのでその場面を後回しにしてクランクアップ直前すっかりハックマンがポパイになりきった頃にもう一度撮ったそうな。
今度は上手く殴れたと。監督曰く「ハックマンは豪快そうだが実は繊細なんだ」


posted by フェイユイ at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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