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2007年03月24日

「陸軍中野学校」増村保造

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日本で初めての諜報機関員養成学校を題材とした作品で昭和十三年、緊迫した世界情勢の中での物語であるが私にはそうした政治的歴史的背景とこの映画をつなげて論じるような事はできないので単純にこの作品についてのみ考えてみる。

実在する諜報部員養成施設の成り立ちを描いているわけで物語は極端にシリアスである。
その誕生は草薙中佐という一人の男の夢・英国諜報部に負けないものを日本にも作りたいという熱意のみで成されたものなのだった(映画の中では)
陸軍からは認められていない個人の寺子屋的施設ということでまるで学校内で無認可で部活をしているかのような侘しさがある。
集められた青年達はいずれも将来有望な才能溢れる者ばかりということでますます少年漫画でよくある才能ある奴を集めて野球部を作る的な雰囲気である。
主人公は次郎演じる市川雷蔵だが多くは青年達の青春群像劇として物語られていく。
草薙中佐は青年達にスパイがいかに過酷であるか、だが自国のために必要であるかを説くのだが、ここではすべて口頭のみの説明に過ぎないのでスパイに関する数少ない自分の知識を思い浮かべるしかない。
スパイというとすぐに思い起こすのはそれこそ英国諜報部員007だがあの華やかなる世界と違い、本作の学校は貧乏でしんみりしてしまう。私はまだ観てないが「カジノロワイヤル」と見比べてみてもいいのかもしれない(そんな人いないか)
最初は乗り気でなかった青年達が草薙中佐という先生の熱意にほだされ次第に愛着を持っていく様も運動部のノリを感じさせる。それにしても登場人物たちの考え、行動に対して強い反感を持ってしまうのは同時代を生きていないからなのだろうか。
スパイにとって大切なのは誠の精神だとか盗みを働いた仲間に「先生に迷惑がかかるから」と腹切りを強要したり恋人を思ううちにいつしかスパイ活動をする羽目になってしまった婚約者を憲兵に突き出そうとしたり(先生に止められ、殺してしまう。どっちもどっちだ。好きな人の手にかかって死ぬ方が幸せですと)そういったエピソードが当たり前のように出てきて「やはりこの時代の日本は怖い」と暗澹たる気持ちになったりする。

主人公・次郎を演じる市川雷蔵があくまでもクールで二枚目であるためにますますこの狂った状況が恐ろしい。
それでも雷蔵はやはりかっこよくて話の云々より彼の美貌を観る為にのみ鑑賞したほうがよいのかもしれない。

だがこの映画はとても観たかったものでやはり観てよかったと思う。この不条理な世界は今作ろうと思っても作れそうにない。
ストーリー自体は諜報部員になる為、親も恋人も切り捨て訓練に没頭する次郎と音沙汰なくなった恋人・次郎を探す雪子がいつしか英国のスパイになるという皮肉を絡ませ面白いものであった。
一流のスパイになるためにダンスを習得したり女性の性感帯を勉強したりなどという箇所もある。この辺ばかり興味をもつ人もいそうだけど。

この作品はシリーズで5作品あるようだ。2作以降は全く違う娯楽作品になるらしい。一応007シリーズを意識して製作されたということでこれらも観ていきたいものである。

監督:増村保造 出演:市川雷蔵、小川真由美、加東大介、村瀬幸子、早川雄三、待田京介、仁木多鶴子、三夏伸、仲村隆、ピーター・ウイリアムス、E.H.エリック
1966年日本

小野田 寛郎さんが陸軍中野学校卒業生だったと今頃気づく。


ラベル:戦争 増村保造
posted by フェイユイ at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 増村保造 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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