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2007年06月14日

「遠い声 遠い部屋」デービッド・ロックサベージ

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ダウンロードシネマでトルーマン・カポーティ原作映画「遠い声、遠い部屋」を観る。映像が溶けきってるし、かなりの低予算なのかTVドラマみたいな仕上がりの映画だったがカポーティ原作だけあってなかなか面白かった。

母が亡くなり叔母の家で暮らしていた少年・ジョエルの元に9年間音沙汰なかった父親から引き取りたいと言う手紙が届く。
父親はかつてボクシングの巡業をしていて叔父も信用してはいなかったが少年を育てる余裕もない、という理由で見た事もない父親の家へジョエルは一人向かうことになった。

到着した家は立派なお屋敷だったがひっそりと静まりかえり黒人の祖父と孫娘が館を切盛りしている。
ジョエルは黒人メイドのズーとすぐに打ち解けるが、屋敷の女主人は奇妙な雰囲気を持ち近づきにくい存在だった。
肝腎の父親の姿が見えず、屋敷の者も口ごもってしまう。
戸惑うジョエルの前に現れたのはキモノをガウンのように着ている病弱な印象の男性・ランドルフだった。

ランドルフは全く屋敷から出ることもなく毎日部屋の中で酒を飲んだり音楽を聞いたりして過ごしているのだ。
ランドルフはジョエルに優しく接し、肖像画を描き、勉強を教えてくれる。だが近所の少女と遊ぶ以外閉じ込められた生活に少年ジョエルは次第に苛立ちを感じ始めた。

階段から落ちてきた小さなボールでジョエルは階上に誰かがいることを感じる。それこそが小さな部屋に寝たきりになっているジョエルの父親だった。彼は口もきけず体も動かせないのだった。

映画とは思えないくらい淡白な映像で役者も知らない人ばかりだが、結構見入ってしまった。
勿論この作品はランドルフのキャラクターが重要だしジョエル君の可愛さも必要なのだがどちらもよかったのではないだろうか。
もうちょっと映画らしい演出があったらミステリアスで凄くいいんだろうなあ、と思ってしまう。

このランドルフはカポーティならではのキャラクターで、その昔ジョエルの父が巡業していたお抱えのボクサー・ぺぺに恋をしていた。
勿論そのことを言えるわけもなくランドルフは仮面舞踏会で女装の貴婦人に仮装しぺぺと踊ったのだ。
ぺぺが女と共に金を持ち逃げしてからは屋敷に閉じこもりずっと昔の思い出に浸っているのである。
そしてランドルフはもう一つの秘密を持っていた。

アメリカ南部のお屋敷で時折女装しながら閉じこもっている男。なんとも胡散臭い話だが少年の目を通してミステリアスに描く事で神秘性を持たせている。うまい語り口である。勿論少年ジョエルを手放さないことがもう一つ妖しい雰囲気を持つことになる。

またジョエルとズーの関係、ジョエルと年上の少女との挿話もいい。少女はちっとも女の子らしくないということで家族の中で浮いていてジョエルと駆け落ちしようとするのだ。

それにしてもアメリカ南部の景色はとても好きなのである。あのうっそうと茂っている樹がいい。
カポーティが話題になったし、小説もまたちょっといいのを作ってもらいたい。

監督:デービッド・ロックサベージ 出演:Lothaire Bluteau(「ベント」など出演)
1997年アメリカ


ラベル:家族
posted by フェイユイ at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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