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2007年08月19日

「日の名残り」ジェームズ・アイヴォリー

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(後半に「上海の伯爵夫人」のネタバレあり)

まずは古き英国貴族の生活を誠実な執事の目を通して描かれていくその面白さを堪能する。
そしてアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンの味わいある演技に見惚れる。

この作品は有能な執事スティーブンスが常に主人に忠実に仕えることで物事の本質を見誤っていく過程とミス・ケントンへの打ち明けきれなかった密かな愛が描かれている。
そしてそのミス・ケントンもスティーブンスに惹かれながら自分を誤魔化してしまったのだ。

頭がよく人間性もある二人なのになぜ間違った道を歩んでしまったんだろう。
浅はかに結婚を決め仕事をやめる若いメイドを見てミス・ケントンの気持ちは複雑に揺らいだはずだ。貧乏をしてでも愛を取るという若い女の考えなしの行動に軽蔑と共に憧れの気持ちもあったろう。ミス・ケントンも結婚のため仕事をやめた。だがその相手は愛のない男だったとは悲しいことである。自分に振り向かないスティーブンスへのあてつけで彼女は人生を変えてしまった。
そしてスティーブンスは唯一好意を持った女性に素直に打ち明ける事もせず、主人には余計な口出しをしないことが執事の役目とばかり全ての厄介ごとに目をつぶってしまった。
何が美徳なのか、すべき事はなんだったのか。幸せだった日々を思い返しても人間は歩いていかねばならない。
何事も起こそうとしないスティーブンスは本当に悲しい人間である。
そしてミス・ケントン(後は名前が変わるが)もまた。
自分の心に素直に言わなければいけないのだ。たとえ、どんなに怖ろしくても。

スティーブンスは涙も流さないので車の窓にしとど降る雨が彼の気持ちを代弁している。

古きイギリス伝統の執事を題材に描いたものだが、原作者のイシグロ氏が日本生まれのせいなのか、何となく昔の日本人的なものも感じてしまう。親が亡くなっても好きな人が泣いていても仕事第一。ミス・ケントンのあきらめもまたしかり。

などと言うことのみ書くとなんだか空しさだけを感じるが作品そのものに他に無いほどの深い情感があり、なんともいえないコクを感じることができるのだ。

先日観た同監督の「上海の伯爵夫人」でも主人公は好きになった女性にすぐには打ち明けきれずもう少しで大事なものを失うところだった。だがこちらでは二人は危ないところで自分に素直になることができた。本当に自分に大切なものは何か、例え未来が不安でもそれを掴まねばいけないとあの作品では描いていた。

「日の名残り」ではヒュー・グラントも登場して英国青年らしい雰囲気を出している。
そして何と言ってもクリストファー・リーブが颯爽と表れた時、作品とは別に感慨深いものがあった。
 
監督:ジェームズ・アイヴォリー 原作「カズオ・イシグロ 出演:アンソニー・ホプキンス エマ・トンプソン ジェームズ・フォックス クリストファー・リーブ ヒュー・グラント ミシェル・ロンズデール ピーター・ボーン
1993年アメリカ




posted by フェイユイ at 23:26| Comment(0) | TrackBack(1) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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