映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年09月02日

『ツイン・ピークス』シーズン 1 Vol.2 第2章 デヴィッド・リンチ

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今回一番の目玉となるのは森の中でのクーパー捜査官による奇妙な捜査方法である。
ローラが日記に書いていた「Jに会うのが心配」という文章のJを探し当てるのだ。
その方法とはクーパー捜査官が数年前夢に見たチベット式演繹法に基づく心と体を使って直観を呼び覚ますというものであった。

あらかじめ黒板にJのつく名前を書いておく18・5メートル先の切り株の上にガラス瓶を立てる。
保安官に名前とローラとの関係を言ってもらうとクーパー捜査官はホークが持ったバケツの中の石を手に取りその名前をつぶやく。
そしてガラス瓶めがけて投げつけるのだ。
当たったものをルーシーがチェックする。
ジャコビー精神科医の時、石が当たるが壜は割れない。そしてレオ・ジョンソンで壜が割れたのであった。

まったく変な捜査だがこれもクーパー捜査官の能力の一部に過ぎない。

今回は湖の先にある「片目のジャック」という妖しげな娼館を見ることになる。
ベン・ホーンは帰ってきた弟とそこへ出かけていく。オードリーの言葉でローラとベン・ホーンがなにやら関係あったかと思わせる。
ジェームズとドナは仲を深め、シェリーは夫レオに殴られそれを知ったボビーは怒る。ただしレオに会った時はその迫力に怯えているが。

ネイディーンは夫エドの失敗のせいで逆に音のしないカーテンレールを発明する。

FBIアルバートが捜査に駆けつける。だがその傲慢な態度に温厚な保安官がきっぱりと言い返しクーパーはそれを見て親指を立てる。

ローラの父親リーランドローラの写真を見ながら泣き出し踊り狂う。

最後にクーパー捜査官が不思議な夢を見る。
片腕の男マイクとボブである。ボブはまた誰かを殺すと不吉な事を言う。
赤い部屋に年をとったクーパーが座っている。小人の男が身を震わせている。黒いドレスをきたローラも椅子に腰掛けているのだが小人は「ローラによく似ているだろう」と言う。彼らの後ろを何かの影が横切る。
クーパーが「ローラだろう」というとその女性は「彼女を知ってる気がするが時々腕が後ろにまわるの」と答えるのだ。
音楽が流れ出し小人が踊り始める。ローラが立ち上がってクーパーにキスをし何かを耳元で囁く。
クーパーは目覚めハリー保安官に「犯人がわかった」と電話した。

この赤い部屋はこのドラマの中や他のリンチ映画でも彼のイメージとしてよく使われるものだ。この世と別の世界の中間の待合室のような不気味な空間である。
小人やローラが話す言葉は普通の音声ではないのも彼らがこの世のものではないことを示しているのだろうか。
腕が時々うしろにまわるというローラに似た女性の言葉は何を意味しているのだろうか。


posted by フェイユイ at 23:44| Comment(4) | TrackBack(0) | ツイン・ピークス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ヴェラ・ドレイク』マイク・リー

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ヴェラ・ドレイクはいつの世にもいた人なんだろう。社会的にどうでも女性にとって必要な人。でも男性はどう思うのか。なぜかその答えはいつも曖昧のようである。

ヴェラは幸せになれる人なんだろうか。
自らは優しい夫と二人の子供を持ついい母親で幾つかの家の下働きをして収入を得ている。いつも明るく振舞って、気難しい年老いた母や近所の病人にも心配りをする働き者で善意の人、ヴェラ・ブレイク。
どこかで覚えた素人の堕胎術で20数年もの間「困った女性」を助け続けてきたヴェラ・ブレイク。
ただの一度もその報酬を受け取る事はなしに女性達を助けるために法を犯し続けてきた。そのてきぱきとした処置の仕方や「困った女性」への対応にはまったく戸惑いは見えないが、ヴェラがその行為を正当化していたわけではないことは警察が逮捕に来た時の彼女の言動から伺える。ヴェラは素人が行う堕胎を有罪だと認めながらも「困った女性」がいると知れば見過ごしておけなかったのだ。20数年もの間、無報酬で。
そして逮捕され幸せな家庭を失ってしまった。一体何のために。

ヴェラは正しいのか、正しくないのか。
望まない妊娠をした女性にとって法的にまたは経済的に堕胎手術が受けられないなら誰かに頼らざるを得なくなる。
妊娠というのは女性だけでできることではないのに、堕胎は女性が行わなければならない。
堕胎が様々な理由で公的にできないなら古今東西ヴェラ・ドレイクは必要なはずだ。現にそうであったろうしこれからもそうであろう。
正しいのか、正しくないのか(黒か白か)ではなく必要なのだ。

「妊娠・出産・育児という女性の問題について」などと言われたりする。しかしそれは男性があってしかあり得ないこと。なぜそれが「女性の問題」なのか。
という疑問は所詮大人気ない非常識な屁理屈なのであろうか。 

ましてやそれが堕胎ということになると男はそんなことに関係した事はないかのごとく存在を消してしまう。
理由は様々あるだろうが映画の中では特に堕胎は女だけの苦しみとなって表現されてしまう。

医学的に堕胎が可能であっても宗教・思想・文化が嫌悪感・罪悪感を生み出す。
妊娠・出産は祝福された結婚から生み出されたものであることが望ましいという考えは地球上の多くの地域でなされているものだろうが実際にそれだけではないことは皆が知ってる事実なのに必然として行われる堕胎は闇の中の行為となる。
そうでなくなるためには宗教・思想・文化が変化し「困った女性」は経済的理由で悩むこともなく堕胎できるように体制が整わなければいけない。そうでなければヴェラ・ブレイクは存在するはずだ、どうしても(しかも彼女のように“いい人”であるならまだしもだ)
だがこうして書いているだけでも堕胎を奨励するのかというそしりを受けそうである。
もう一つの道は妊娠した場合万全に出産できその子供が養育できる環境ができることだ(それに近い国もあるかもしれないがまだ近未来小説での社会にしか思えない)
望まない出産のために母親・子供はどういう生き方をするのか。誰かが責任をとってくれるわけではない。

ヴェラ・ドレイクの物語から離れすぎてしまった。
ヴェラは平凡でさほどの学歴もない中年女性だが持ち前の気さくさと人から必要とされると断れない性格も手伝って割に合わない手助けを引き受けてしまう。その結果、家庭は崩壊し未来は予想もつかない。
2年半の禁固刑を言い渡されたヴェラは刑務所内で同じように堕胎手術を施して捕まった女性達に出会う。彼女らは再犯でヴェラ以上の罰を受けるのだ。それまで泣きはらしていたヴェラは心に何を思ったのか。
ヴェラが出所してまた「困った女性」に頼まれた時、彼女は断ることができるのか。再犯の女性達と同じ道を歩んでしまうのではないか。
看守から「足元に気をつけて」と言われながら危うい階段を上っていくヴェラの後姿はその後の彼女を暗示しているかのようである。
沈鬱に集まり言葉もない他の家族達の様子もその未来が単純に明るいものではないように思える。


ヴェラ役のイメルダ・スタウントンは言葉を発さないまま感情を表現していく。犯行の理由と過去を問われ涙を流すだけで何も言えないヴェラには話したくない重い過去があるのかもしれない。
彼女が大切なのは家族なのに「困った女性」も見捨てきれないでいる。他から見れば報酬もないのだから(私なんかそこにこだわる)やめればいいのに、と思うのだが。
友人面をしてちゃっかり代金を横取りしていた女性こそ腹立たしい。あちらは何の罪もないのか。不満である。
秘密にしておかなくてはいけないのに自分への罰をおそれヴェラの名を口に出してしまう女性を見てると完全な秘密とはあり得ないと判る。

この映画では細かい説明というものが省略されていて観客が疑問に思う点も幾つかあるようだが、本当のところヴェラの堕胎術というのはどのくらいの成功率だったんだろう。精神的ケアや2度目の診察などがないのは無報酬だから(こだわる)当然だろうが処置を受けた女性達のその後が描かれてない、もしくは説明もなかったので他にも何らかの被害を受けた例はなかったんだろうか。それを暴こうとしている映画ではないので省かれているのだが、石鹸水堕胎がどのような結果になるのか、知りたくもある。

監督:マイク・リー 出演:イメルダ・スタウントン フィル・デイビス ジム・ブロードベント ピーター・ワイト ヘザー・クラニー ダニエル・メイズ アレックス・ケリー
2004年イギリス/フランス/ニュージーランド

追記:望まない妊娠、悲しい言葉である。そこにはすでに生命の誕生が隠されているのにその子供は望まれていないのだ。
一体幾たびそういう思いが抱かれ、悲しい運命が待ち構えているのか。それが生まれないにしても生まれるにしても。
堕胎が全く必要ない社会ということがありうるのだろうか。すべての命が祝福されて迎えられるわけではない。そして男女の営みはすべてがすべての納得の上で行われるわけではない。
どうしても望まれる妊娠のみを求めるなら男女とも精子・卵子を採取保存した上で互いに子供を生まない体(つまり去勢)そして医学的に望む子供だけを生むのだ。
そういう社会を望む日がくるのだろうか。今の感覚で言えば寂しい気がする。
その場合は多分逆のヴェラ・ドレイクが出てくるのだろうが。
ラベル:イギリス映画
posted by フェイユイ at 21:14| Comment(0) | TrackBack(3) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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