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2007年09月05日

『サハラに舞う羽根』シェカール・カプール

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一応イギリス青年の友情と愛、そして失われた名誉を回復する冒険を経ての成長の物語なのだが、私にはとにかくスーダンにおけるイギリス軍とネフディー軍の在り方戦い、そしてまさに「神に使わされた」としかいいようのないアブーとハリーの関係が面白くて見入ってしまう映画だった。

1884年、イギリスが地球上の4分の一を植民地としたこの時代、イギリスの男達は国と女王陛下のため戦いさらに領土を広げることを名誉としていた。
そんな中で主人公ハリーのような軍人が戦争直前に逃げ出してしまうなどということは最大の恥でしかなかったのだ。「臆病者」の印である白い羽根を4枚送られたハリーは屈辱を晴らす為、単身スーダンの地に入り込んでいく。

プライドのため、というより意地を張ったとしか思えないハリーの行動だが、軍隊にいたのでは見えないスーダンの国の人々と触れ合う事になる。
ハリーがなぜ戦争直前に除隊したのか。彼は怖ろしかった、と答えているのだが、現在の目から見れば戦争とは名ばかりで結局はイギリスによる他国の略奪である。
それに加担しなかったのは今であれば勇気ある行動と見てもいいのだろうが当時では許されないことだったのだ。
神の国であり先進国であるイギリスが野蛮人の国を植民地化し正しい道に導いてやるのだ、という傲慢な意識のもとにスーダンへと赴く兵士たち。
だがそんなイギリス軍を待ち構えていたのは優れたイスラム指導者マフディーが統率するスーダンの戦士たちだった。
絶対的な勝利の意識を持ち角陣で敵を(っていうかイギリスが敵なんだけどさ)迎え撃つイギリス軍だがマフディーの作戦は彼らの上をいっておりそのゲリラ的な戦法は格式ばったイギリス軍を打ちのめした。
映像としてもこの戦いの場面は迫力あるものだった。マフディーの軍隊をできるだけ引きつけようと待ち構える英軍の緊張。角陣を四方から追い詰めていく場面の恐怖。マフディー側に入り込んでいたハリーが一旦落馬した後、走る馬に駆け乗っていく疾走感はぞくぞくせずにはいられない。
はっきりとこの場面はイギリス帝国の滅亡の兆しを感じさせるものである。
勝利を収めたマフディーの戦法がこうもかっこよく負けたイギリス軍をここまで惨めに描いたのは監督がインド人のシェカール・カプールだからだろうか。とはいえイギリス映画はよく自国を自虐的に描くものであるからこのような描写が許された、というのはイギリスらしいというべきなんだろう。

アブーの存在は不思議である。なぜハリーをここまで助けてくれたのか。作品の中で問われてもその答えは「神の使い」というだけで凡人である自分には完全に理解できるものではない。
ハリーが友情のために命がけで友を救い出す、といってもアブーがいなければハリーには無理だったのではと思われる。
ジャックとハリーの友情は幼馴染という暖かな優しいものであるがハリーとアブーの友情は成長した大人のそれである。ハリーはアブーに命を助けられそれを直接恩返しできるものではないだろう。
ハリーは心の中にアブーを抱き違った形で返していくのではないだろうか。

イギリス人の目を通したエキゾチックな冒険活劇という観方だけでもなかなかに面白く観たのだが。

ハリーとアブーのあり得ないようなぞくぞくする友情に比べハリーとジャックの友情はいかにもよくある平凡なものではある。が、友情は平凡な方がほっと落ち着くものではあるけれど。

さてハリーを演じたヒース・レジャー。冒頭の頼りない坊ちゃん顔はどうもいけなかったが、スーダンに入って髭を伸ばし日焼けしボロボロの格好になってからはやっぱり魅力が光りだす。
馬に飛び乗るシーンは多分彼がやってるのではないかと思うんだが、さまになっててかっこいい。その乗馬シーンも含め友人の名前がジャックなのでどうにも「ブロークバックマウンテン」を思い出す方も多いだろう。しかもジャック氏「君が行くから僕も行くんだ」などと勘違いしそうな台詞をのたまわれるので余計に混乱してしまうのだ。かつジャック氏の風貌がなんとなくあちらのジャック(ジェイク・ギレンホール)に似ていなくもない。まあ、映画製作の順番はこちらが先だが。
などと言いながらも本作はジャイモン・フンスーの一人勝ちなのである。はっきり言って彼の映画である。
映画にはヒーローが必要だがこのかっこよさ。あの棒を肩に担いでふらりと歩いてるとこなんて凄く素敵なのである。美しいからだに見惚れて彼を知っただけでもこの映画の価値はある。

ところでまたヒースに戻るが最近離婚されたとかで快哉を叫んだファンもいると思うのだが、私も何故だかちょっと嬉しくなり(鬼)そんなに好きだったか?と自問したがまあそんなもんである。

監督:シェカール・カプール 出演:ヒース・レジャー ウェス・ベントリー ケイト・ハドソン ジャイモン・フンスー マイケル・シーン
2002年イギリス


posted by フェイユイ at 23:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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