映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年09月16日

『HAZE ヘイズ』塚本晋也

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怖かった。目を背け、身をよじり、すぐ消してしまって忘れてしまいたくなった。
気づくと主人公は薄暗く細長い石の通路に座らされていて身動きができない。と思う間にいきなりそれは動き出し低い天上から突き出た金属で頭を切ってしまう。
腹部にもいつの間にか傷を受けてとが溢れている。

主人公はいつ何故自分がそんな場所にいることになったのか、全く判らないのだ。
男がはっと気づくとさらに狭い空間、押しつぶされそうに石の天井と床が迫っている場所を仰向けに這っていくしかないのだ。

息苦しく体を思うように動かせない恐怖。石の壁と天井と床が重く冷たく今にも自分を押しつぶしてしまいそうだ。
聞こえてくるのは主人公の自分への問いかけと苦しい息遣いだけ。

しかも男の恐怖と苦渋はさらに酷く酷くなっていくばかりなのだ。

自分以外には誰もいないのに自分の精神と肉体を苛め抜かれていく。“敵”の姿もそういうものがいるのかもわからないのにこの追い詰められていく焦燥感はなんだろう。
やっと立てるかどうかという位置で大きく開けた口の間に鉄パイプを咥えて歯を当ててキキキと言わせながら横歩きをしなければいけない状況なんてどうしたら思いつけるのかわからない。
この辺のあり得ない恐怖は監督が夢に見たものでないのかと思うのだが。夢の中ではこのような意味不明で不可解な状況に置かれたりするものだから。ただしここまで異常な体験はしたことはない。

そこに留まることはできないし進めば進むほど地獄が深くなっていく。
だが進むしかない。頭を叩かれさらに細い通路へそしてまた。
そこで見たのは惨たらしく殺されていく人間達の姿。だが何故どうやって殺されているのか全く判らない。

ばらばらになった死体の中に生きていた女性が一人いたのを見つけた時は映画ではないかのようにほっとした。

行き場のない恐怖の中で女性は出口を探すという。主人公は戸惑いながらも彼女を追いかける。
体が押しつぶされるのではないかと思われた後、男は外へ。だがそこにはまた思いがけない悲しみがあった。

女性の映った写真。白髪になった男。二人で見上げる花火。二人は恐怖を抜け出たのだろうか。

別々に悲しい孤独感に襲われていた男と女が出会い、心中しようとしたのだが最後でそこから脱し得たんだろう、と思う。
二人できっと長く暮らしたんだけど女性のほうが先に亡くなってしまったという最後なのだろうか。

苦しく暗い石の通路の後の爽やかに高い青空とはためく洗濯物のシーツの白さが眩しい。

見始めてすぐにこれまで感じたことがないような圧迫感の恐怖に怯えたが最後まで観てよかった。凄い作品である。

主人公の男を塚本晋也監督自身が演じている。そしてもう一人の女性との二人だけの物語と言っていい。
この苦痛は二人のそれまでの苦しみを表しているのだろう。この映画ほど最後の青空の爽快感を感じさせるものは内容に思える。
たった49分とは思えない。

監督:塚本晋也 出演:塚本晋也 藤井かほり 村瀬貴洋 神高貴宏 辻岡正人
2005年日本

タイトルの『HAZE』は「もや」というような意味をもつようだが、最初の“H”には囲いとか仕切りとかいう意味合いがあるらしい。
などといわなくても“H”の形を見てると行き止まりな囲いに見えてくるが。この中で主人公は苦しんでたんだな。
だからこれは英語タイトルに意味があるのかもしれない。

ちょうど「アルファベットの事典」という本を読んでたらそういう記述があった。


ラベル:恐怖
posted by フェイユイ at 21:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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