

私が大好きな二組です。ジュテーム
左側の画像物凄くクリックされそう(笑)どうぞ大きくして見て下さい!生唾ものですぞ〜
さて昨日の続きです。再観するのも記事を書くのもこんなにわくわくすることも少ないのですが。
パリの街20区を舞台に18の物語が繰り広げられるのだが時間も朝・昼・夜と様々な顔を持つ。
5話目。『16区から遠く離れて(16区)』監督・脚本:ウォルター・サレス、ダニエラ・トマス/出演:カタリーナ・サンディノ・モレノ
最も笑いの少ない重い映画だった。『そして、ひと粒のひかり』で有名なカタリーナ・サンディノ・モレノ が殆ど一人だけの出演である。
裕福な家庭のベビーシッターを仕事にする移民者の女性アナ。彼女にはまだ乳飲み子である赤ん坊がいるのだが朝早く起き赤ん坊を施設に預けて自分は裕福な家の赤ん坊の世話をするのだ。
出て行こうとすると泣き出す赤ん坊をあやすアナ。電車を乗り継いで到着する高級住宅地。そこに住む母親である女性はアナにベビーを預け外出していく。「一時間遅くなるわ」置いてきた赤ん坊と一時間余計に離れていなくてはならないがアナには断る術はない。
母親が出て行って泣き出すベビー。アナがベビーをあやす声は我が子をあやす時と同じ歌である。
ウォルター・サレスらしい男女の愛ではなく犠牲が題材になっている。アナのあやす声が心に残って切ない。
6話目。『ショワジー門(13区)』監督・共同脚本:クリストファー・ドイル/出演:バーベット・シュローダー
これはもう大好きなドイルだから取り上げてみたのだが、正直どういう意味なのか全然判らない(笑)
マダム・リーの並外れたプロポーションに見惚れた。ミスター・アイニーが場所を聞いた若者がケイシー・アフレックに見えた。まさかこんな所に。フランス語しゃべってるし^^;
このショワジー門辺りがチャイナタウンになっているらしい。アーそういえばパリにいたチャイナガール、つんつんしてたっけ。
8話目。『ヴィクトワール広場(2区)』監督・脚本:諏訪敦彦/出演:ジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォー
最も涙が溢れる話だった。小さな子供を亡くしてしまった母親はいつまでも息子の声が聞こえてくるようで忘れる事ができない。
息子はカウボーイが大好きで会いたがっていた。
その夜も息子が出かける声が聞こえ母親は後を追いかける。誰もいない真夜中の通りに子供たちの遊ぶ声が響く。そこにいるはずもない馬に乗ったカウボーイが現れる。「子供に会いたいか」
母親の前に失ってしまったはずの可愛い息子が。狂ったように抱きしめる母親に息子は「カウボーイについていきたい」と離れようとする。腕をすり抜ける息子を母親は引き止めることはできなかった。
雨に濡れた石畳が子供を失って嘆く母親の心のようで冷たく乾く事がないのだ。
心配して駆けつけた夫に抱かれてその傷ついた心が癒されて欲しい。
嘆きの母親をジュリエット・ビノシュが演じていて悲しみが伝わってくる。
9話目。『エッフェル塔(7区)』監督・脚本:シルヴァン・ショメ/出演:ポール・パトナー/ヨランド・モロー
昨日このオムニバスの表一位は『14区』隠れ一位は『マレ地区(4区)』と発表したのだが表一位をどちらにしようかと迷ったのがこの『エッフェル塔』なのである。
最初、太っちょのマイマー(なにせパントマイムは痩せた人ってイメージがあるし、マルセル・マルソーみたいなね)がなんだか疎ましくも思えるし、パントマイムには全部音がついてるし(にせものだー)足が漫画的に高速回転して走っていくしなどと訝しく思ってたが観てる内に(ったって5分ほどだが)すっかりおかしくなってきた。なにしろエッフェル塔だし太っちょマイマーの格好もベレエでいかにもフランス的だ。ギャグもなんだかとぼけてフランスらしい。昔みたジャック・タチの雰囲気なのである。
特に牢屋でそっくりのパントマイムガール(?)に出会ってもう爆笑。不気味なダンスがくせになりそー。しかし同室に入れられた男がこんないかれた奴らとぶちこむなー、っていうのは同情する。確かに怖い。
太っちょさんがにっこり笑ってカメラがズーンと引いて行くのがおかしいし太っちょの体でのマイムがいちいちおかしいしなんだかしつこい感じがいつまでも観たくなってしまう。
何と言ってもパントマイム夫婦の可愛い息子が苛められながらも両親を愛しているのが伝わってきて嬉しくなる。
彼の大きなランドセルがまたおかしいけど。最後の猫も可愛かった。
監督のシルヴァン・ショメはアニメーション作家でこれが初めての実写作品というのも驚きやら頷けるやら。
最もフランス的な明るく楽しい作品なのではないだろうか。最もジュテームって感じだった。男女の愛と家族の愛がこの上なくハッピーに描かれている。
10話目。『モンゾー公園(17区)』監督・脚本:アルフォンソ・キュアロン/出演:ニック・ノルティ、リュディヴィーヌ・サニエ
ニック・ノルティ演じる中年男と若い娘が逢引をしているが女にはギャスパールという男がいるらしい・・・と見せかけて実は、というお話。
夕暮の街を歩きながら話しているだけの物語だが、どうなるか、と気になって観てしまう。ニック・ノルティが怪しいフランス語をたしなめられるのも面白い。
16話目。『フォブール・サン・ドニ(10区)』監督・脚本:トム・ティクヴァ/出演:メルキオール・ベスロン、ナタリー・ポートマン
ティクヴァ監督らしいスピーディで凝りに凝った構成演出。目の見えない成年が主人公というのもティクヴァらしい。『ラン・ローラ・ラン』は走りまわる強い足。『パフューム』は並外れた嗅覚というように体に関する興味が強い人なのだろう。そして叫ぶ女が好きだ。
危険地区とされるサン・ドニで女性の悲鳴を聞いた盲目の青年は助けようと声をかける。それが出会いであった。
女性は女優志望、青年は様々な外国語を勉強する。だがある日受けた彼女からの電話は悲しいものだった。
よくぞ5分間にここまでの映像がはいるものだ。映画に対する情熱若々しいパワーを感じる。それでいてロマンチックなのである。これを観てテイクヴァやっぱり早くもっと観よう!と思ったのだった。
残酷さもテイクヴァらしく効いている。ナタリー・ポートマン可愛い。
そして昨日書いた3本が私のお気に入り(笑)半分ですな。
といっても他の作品もそれぞれ面白く鑑賞できたという優れたオムニバスであった。音楽も素晴らしいものであった。
好きなのでもう一度書いていくと表第一位の『14区(14区)』アレクサンダー・ペイン監督・脚本。平凡なアメリカ中年女性がパリに来て感じた悲しみと喜びを描いている。
一人でレストランで食事をし、美しい景色を観ることに寂しさを感じている。
何かを思い出したような気持ちが彼女におこる。それを知らないのに待っていた、と。その言い表しがたい感情を私もこれを観ることで少しだけ共感できた気がする。そしてそんな感情がいつか私自身湧き上がることがあるのかもしれない。喜びと共に悲しみが訪れでも自分は生きているのだと感じた彼女のように。
それにしてもボーヴォワールをアメリカ人はボリバルと呼ぶのだろうか、ちょっとおかしい。
2話目の『セーヌ河岸(5区)』グリンダ・チャーダ監督作品はイスラム女性の気持ちが描かれていて新鮮だった。イスラム圏の物語はもっと紹介されてもいいのではないだろうか。
そして隠れ一位とした3話目『マレ地区(4区)』ガス・ヴァン・サント監督。
何度でも観たいし、この短さでは満足できん、というかこんな出だしだけ見せられて我慢できるかー、という涙目なのである。いや、作品としては充分これで素晴らしいものだと思います。思いますが、彼らの続きが知りたいではないかーしくしく。
ギャスパーのぐしゃぐしゃした髪が魅惑的。坊主くんも可愛い。なんであんな一所懸命走って行ったの?電話したの??
「運命を信じる?自分の片割れの存在を?」ってすごいナンパだなあ。
サント監督が撮っているとギャスパーより以上に凄い美青年になってしまう。
この話だけのためにDVD買う価値はある。
ということで大変に楽しんだこの一枚だった。
他の作品も観る時期なんかでまた印象も変わるかもしれない。変に高尚ぶらずに面白い作品が多かったのも嬉しい『パリ・ジュテーム』であった。




監督:ガス・ヴァン・サント ブリュノ・ポダリデス グリンダ・チヤーダ ジョエル・コーエン イーサン・コーエン ウォルター・サレス ダニエラ・トマス クリストファー・ドイル イザベル・コイシェ 諏訪敦彦 シルヴァン・ショメ アルフォンソ・キュアロン オリヴァー・シュミッツ リチャード・ラグラヴェネーズ ヴィンチェンゾ・ナタリ ウェス・クレイブン トム・ティクヴァ フレデリック・オービュルタン ジェラール・ドパルデュー アレクサンダー・ペイン