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2008年01月06日

『西太后』 [ノーカット版] 第一部・第二部

The Burning of Imperial Palace.jpgThe Burning of Imperial Palace.gifReign Behind A Curtain 2.jpg
第一部/火燒圓明園/The Burning of Imperial Palace
第二部/垂簾聽政/Reign Behind A Curtain

溥儀に続いて『西太后』である。歴史的順番は逆だが。この辺の話が好きな上、皇帝がこちらもレオン・カーフェイ、西太后が劉暁慶(リウ・シャオチン)と聞いては観らずにおけない。
これも『藍空』で『西太后の紫禁城』と言うドラマが凄く面白かったことを書いているのだが、李翰祥『西太后』はそのドラマのずっと以前の話。西太后がまだ玉蘭と言う名前で大勢の側室の一人になんとか選ばれてから皇太子を生み、皇帝が崩御して後、皇太子の後ろ盾として垂簾聴政を始めるまでの過程を物語った作品である。
私は西太后を描いたドラマ、著作などをほんの少し齧ったに過ぎないが、彼女の人間とも思えない残虐性や様々な伝説を知ると共にそれらはすべて嘘であり、彼女が悪女であったことを示す為の作り話だという説もあり、一体どちらが本当なのか判らなくなってくる。
例えばこのドラマでも満人である彼女・玉蘭が皇帝にその美しさを認められたにもかかわらず「部族は?」と聞かれ「エホナラ」と答えた為に下っ端の側室となってしまった。それは「エホナラの呪い」というものがある為だという。かつてヌルハチ(清の創設者)がエホナラを滅ぼした時、エホナラの首長が「エホナラの女が一人でも清朝に加わればその女が一族を滅ぼすであろう」と言い残した為に皇帝はエホナラの女性とは結婚しないという言い伝えがあるのだ。
が、実際はエホナラ族の后もいたということでまったくの作り話らしい。
また有名な「皇帝のお気に入りの側室を嫉妬のあまり手足を切断して甕につけて生きながらに苦しめた」というのも映像となっていたがこれもデマらしい。大体中国歴史上の悪女(呂后、則天武后)がいずれもこの手足切断をやっている伝説ばかりなので確かに同じ趣味ばかりということもないだろう。
歌声と美貌を皇帝に気に入られたというのもデマなら、後の光緒帝が愛した珍妃を井戸に投げ込んだというのもデマという話で一体何が本当の話か判らなくなってしまう。珍妃の井戸なんて観光でよく説明されているようなのに。
疑ってばかりではドラマの感想もいいにくいので一応ここで描かれたことを信じれば、デマとされるその「手足切断甕漬け事件」以外は確かに西太后は気は強いが特に悪女というほどもない。確かに重臣たちを失脚させ処刑しているが彼らもまた西太后の命を狙っていたわけで同じ穴のムジナといったところである。
また皇帝の遺言である「東太后を尊敬し、共に皇帝を守れ」というのを西太后も遂行したようである。彼女も病死した事で西太后にまた疑いが持たれたようだがこれも潔白ということだ(らしい)
ただ非常に頭がよく男まさりに政治に強かったので男性から嫉妬というか疎ましがられたのだろう。ドラマでも皇帝が「皇太子の母だからそれなりの地位につけなければ」と言うだけでどことなく彼女の才知にゲンナリしているかのようで可哀想ですらあった。重臣からも「温和な東太后の命令ならいいが、あんたじゃ嫌だ」という言われ方である。息子も皇后である東太后の方にばかりいるのでどうにも孤独な西太后であった。

さて『西太后』は第一部『火焼圓明園』と第二部『垂簾聴政』で成り立っている。
第一部は史実を映像化した説明といった具合で英仏を主にした諸外国が清朝を食い物にしていく様子が描かれる。
大砲や銃を武器とした英仏軍に対し、弓矢と騎馬で応戦する清軍が涙ぐましい。多くの町村が焼かれ、強奪され、民衆が無残に殺戮されていく。且つ多額の賠償金を払わせられる。
美しい庭園だった圓明園が焼き払われ、様々な宝が奪われオークションにかけられたのである。
それにしても戦いの時、カンフーじみたアクションがはいったり、撃たれてもなお旗を持つ兵士などといった演出がややおかしさを出してしまう。イギリス軍人と組み合って投げ飛ばす清軍人というのも変な挿話である。
溥儀と違ってまさしく皇帝らしい生活を送る咸豊帝を演じたレオン・カーフェイ。皇帝と言っても外交も戦争も兄弟にまかせ、観劇と側室との戯れ、阿片もやっている様子だけが描かれる。結局皇子は一人だけだったらしい。
片や西太后となる玉蘭は貴人として側室のひとりになったものの夜伽に呼ばれることもなかったが積極的に自己宣伝し、そのたった一人の皇子を産むことになる。
第二部『垂簾聴政』では宮廷の内情がじっくり描かれていく。
それにしても玉蘭には助言者がいたわけでもなく、このようにたった一人で戦って昇進していったのだろうか。皇后が温和な人柄で玉蘭にも優しかったようなのが救いだった。本当にこのような女性だったので西太后は東太后だけには忠誠を尽くしたのでは、と思いたい。
観劇の途中で具合が悪くなったのを知った役者たちが「こりゃ、芝居より面白いことになりそうだ」と言うのが妙にリアルであった。
歴史を知る以外にも清朝宮廷内の様子が伺えて楽しい。仏像が物凄く大きく驚いた。仏像のデザインも日本とは違う。
この世界を初めて観る人は弁髪や女性の髪・服だけでも違和感があるかもしれない。これも次第に見慣れてくるものである。女性の真ん中が高い靴を履いているので怖ろしく歩きにくそうだ。でも満人なので纏足ではないのだろう。

中国・香港のスタッフによる『西太后』といっても作り話とされる逸話がそのまま幾つも映像となっている。
西太后の実像、というのは結局誰にもわからないものなのだろう。それに本当の彼女を映像化したら「面白くない」のかもしれない。
数々の伝説により史上最強の悪女の一人となった西太后。何度観ても興味は尽きないのである。

なおタイトルの[ノーカット版]というのは、この作品が日本公開された時は、西太后の残虐性のみに焦点をあてて編集しなおし、ナレーションを増やして場面をつないだということからか。そのことによって西太后の残忍性が語り継がれているなら何をかいわんやである。

監督:李翰祥 出演:梁家輝、劉暁慶
1983・1988・1986年 / 中国/香港

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ラベル:歴史
posted by フェイユイ at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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