映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年01月17日

『デビルズ・バックボーン』ギレルモ・デル・トロ

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The Devil's Backbone

ひょんなことから『ヘルボーイ』を観てしまいすっかりギレルモ・デル・トロ監督にぞっこんになってしまったフェイユイである。
『ヘルボーイ』の異世界感、人情味溢れる正義感に参ってしまったのだ。
世間ではすでに『パンズ・ラビリンス』で素晴らしい評価を得ているようだが私が観れるのはもう少し後になる。待ち遠しい。

『ヘルボーイ』とはまったく違う題材であるような本作だが、それでもあの時感じた独特の空気、精一杯の根性を出して悪と戦う正義の心は同じであった。しかも舞台が内戦の続くスペインであるということでさらにその妙味は濃厚になっているのである。

四方はどこまでも続く乾燥した荒地の中にぽつんと佇む孤児院に突然預けられることになった少年カルロスが主人公である。彼の目を通してそこで起きる悲劇が語られていく。
その物語が重厚でリアルなために戦争による悲劇映画と思ってしまいそうだがあくまでもこの作品はそういった状況に置かれた人々の恐怖・悲しみから生み出されたホラーなのだということに強く惹かれる。
幽霊とそれを見る主人公がどちらも幼い少年だというのも戦争映画の定石なのかもしれない。

『ヘルボーイ』でも私は一人ひとりに評を書かずにいられなかったが本作の登場人物も個々が非常に念入りに設定されていることが伝わってくる。
皆に酷い仕打ちをする悪い男ハシントは女性を夢中にさせるその美貌と裏腹に自分の欲望だけしか考えていないどす黒い心を持つのだが
「誰にも愛されなかった子供」という悲しい過去を持つ。救われることのなかった魂の彼こそが一番の悲劇なのだろう。
そんな彼を慕うコンチータは優しい人柄で彼女に恋をする少年ハイメが恥ずかしそうに渡した紙の指輪を綺麗だわと言って指にはめるような女性である。窮地でハシントに脅されながらも立ち向かう強い意志を持つが彼女の優しさが悲劇を止めきれなかったことが悲しい。
女性院長であるカルメンは年配ながら美貌と高貴さを持つ。戦いによって片足を失い義足をつけている。この義足は独特の不思議な美しさがあって目を引く。彼女の美しさと痛々しさをそのまま表現しているかのようだ。
そのカルメンを長年思い続け打ち明ける事もできないでいる初老の医師カザレス。彼もまたこの物語の主人公にもふさわしい。控えめで目立たない性格の彼は何も成し遂げてこなかった人生の最後に孤児院を守りきる覚悟を決める。
主人公カルロス。ちょっとタレ目の感じがとても可愛らしい男の子フェルナンド・ティエルブが演じている。新入りだと苛められも負けない強い少年である。
可愛い男の子が出てくるのもこの映画の魅力である。幽霊の少年もとても可愛く見えてくるから不思議だ。
他の映画と違うと感じるのはこの少年たちの行動にもある。確かにまだ小さい子ばかりで大きな体格の悪役ハシントに立ち向かえるはずもないのだが子供達は懸命に考え僕達は数で勝る、と言って銃を持つハシントに手製のやりで反撃するのだ。
それは子供の行動としては驚くものであるがはるかに大きな敵の暴力に屈しない弱者の勇気を見せてくれた。

この映画には印象的なイメージがあちこちにちりばめられている。この孤児院は見捨てられたように広大な荒地の中に建っている。そこの住人である男女子供たちも皆見捨てられた存在である。そこに置かれているのは瓶詰めにされた胎児である。生まれることができず瓶詰めにされた胎児とどこへもいくことができず小さな孤児院の中に閉じ込められている彼らは同じ存在なのである。
コンチータが扉を開け外を見るとそこには果てしない荒野が広がっている。絶望を思わせるショットだ。
そんな中で生きていた小さな少年サンティは突然の暴力で殺されそこから飛び出す機会すら断たれてしまったのだ。
石造りの建物の中に閉じ込められた小さな魂が救いを求めて彷徨うのは当然のことだろう。

最初、カルロス少年を目の仇にして苛めていたハイメが次第に打ち解け友達となっていくくだりにも心打たれる。
絵の得意なハイメがの画帳をこっそり見るカルロス。そこに秘密が隠されていた。
少年たちも生き生きと描き分けられていて魅了される。

そしてついに子供達は彼らだけで瓶詰めのような孤児院から歩きだす。小さな彼らが傷ついた体で荒野に出て行く姿は痛々しいものがある。そういった生きる事の厳しさとともに希望も見せる素晴らしいラストである。

孤児院の中庭に落ちて地面にめり込んだままの不発弾というイメージも秀逸だ。
信管を抜いたから大丈夫といいながらまだカチカチと音がするとも言う。不明瞭でいつ爆発するかわからない恐怖と隣り合わせに生きなければならない、怖ろしい設定ではないか。

2作品でこれ以上ないほどすっかり好きになってしまったギレルモ・デル・トロ監督。
メキシコ人監督だからなのか、よく判らないが観る事ができる映画はほんの少ししかないのが残念だ。
『パンズ・ラビリンス』がまったく待ち遠しい。
とりあえず、観る事ができる数本を観てしまおう。

監督:ギレルモ・デル・トロ 製作:ペドロ・アルモドヴァル  出演:エドゥアルド・ノリエガ マリサ・バレデス フェデリコ・ルッピ フェルナンド・ティエルブ イレーネ・ビセド
2001年スペイン

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ラベル:ホラー 友情
posted by フェイユイ at 20:37| Comment(3) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジェイ・チョウの『誰も寝てはならぬ』

テレビで知ったポール・ポッツの『誰も寝てはならぬ』に大感激した私ですがジェイの『誰も寝てはならぬ』があったのですね。

ジェイの『誰も寝てはならぬ』

posted by フェイユイ at 14:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 周杰倫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

張孝全『沈睡的青春〜 Keeping Watch〜(DVD) (台灣版)』発売

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張孝全『沈睡的青春〜 Keeping Watch〜(DVD) (台灣版)』発売

張孝全(ジョセフ・チャン)/郭碧婷/鍾欣凌出演 2月7日発売予定
これは日本版出る可能性低いでしょうから、絶対買わんばいかん。

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posted by フェイユイ at 11:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 張孝全 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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