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2008年01月29日

『ロード・オブ・ドッグタウン』キャサリン・ハードウィック

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LORDS OF DOGTOWN

まだ幾つか観ていなかったヒース・レジャー出演映画を全部観てしまおうとしてきたこの何日か、どうも彼を讃えるには足りない作品が続いて(自分の好みでは、ということだが)やはり好きなものから選んでいたのだなと納得もしていたのだが、ここにきてがつんとやられてしまったのがこれ『ロード・オブ・ドッグタウン』
これが思いもかけずめちゃかっこいいのであった。

車の間をすり抜け、壁に飛び上がり、地面すれすれでターンしながら街中をスケートボードで駆け抜けていく悪ガキ共。通りがかりの人たちをからかい、他人の家の庭を通り抜け、悪態をつかれ怒鳴られても止めはしない馬鹿者たちよ。
毎日毎日をそんな意味のない悪ふざけで青春を潰していく3人の少年たちがいた。

カリフォルニア州ベニス。貧しくて不潔な楽園。
サーフィンショップを手がけるスキップ(ヒース・レジャー)はそのサーフィンの腕前で悪ガキどもにも一目置かれている。
ある日、手に入れたスケートボードのウイールのグリップのよさに目をつけ、ガキどもがすっかりこれに夢中になったのを見てスケートボードチームを結成しボードで一儲けしようと企んだ。

悪ガキどもが道路だけでなくボードを走らせるのに見つけたのが当時水不足になったカリフォルニアの家々にある空っぽになったプール。
あちこちに侵入しては絶妙のカーブを描くプールの底でボードを自由自在に走らせる。
見つかっては逃げ、また別を見つけてプールのそこで舞うのだ。

3人の少年がそれぞれに魅力的なのである。年齢は16歳くらい。
長い金髪のステイシー(ジョン・ロビンソン)は最初女の子かと思った。ガス・ヴァン・サント『エレファント』の主役の子だ。
バイトもしっかりしながら(腕時計も車も持っている)スケートボードの練習もきっちりやってる努力家。
メキシコ人のトニー・アルバ(ヴィクター・ラサック)はダントツの腕前。カラーリングした金髪と濃い顔立ちも性格もおとこらしくてかっこいい。かっとなりやすいのが玉に瑕。
ジェイ(エミール・ハーシュ)は母親と二人暮らし。ちょっとだらしないところのある母親だがジェイはとても愛している。
3人ともに才能を持っているのだが、目をかけられ企業と契約をして働き出す二人と違いジェイはいつまでも町の中でボードを走らせることに留まっていた。
そして3人といつも一緒でありながらうまく滑れないということで番外になっているシド。彼こそがこの3人のかすがいになっているのだが、彼自身も明るくひたむきで下手ながらもスケボーと仲間を愛している。3人がかっこよく滑るのを感心してみているのが可愛らしいのだ。

10代のまだなにもつかめていないような不安定な少年の頃に同じような才能と希望を持ちながらも少しずつずれていく彼らの行き先。
いつまでも一緒に走り続けられると思いながら様々な出来事、思惑が友達である3人を離れさせていく。
観ていて胸が痛くなる、心のすれ違い。何かが悪いのでもないのに成長するほどに別れはくるのだろうか。
そんな彼らともう一人つるんでいた裕福な育ちのシドはいつもこけているのだが、内耳が悪くてバランスが取れないのだと思われていた。
その彼が実は脳腫瘍のせいでバランスがとれないでいたのだと判る。
ばらばらになっていた3人の気持ちがシドを中心に戻ってくる。
以前金持ちのシドの父はプールの底は危険だと走らせてくれなかった。息子が病気になった今、それを許してくれたのだ。
シドの前で技のありったけを披露する3人。そして車椅子に座るシドをプールの中に降ろす。
カーブするプールの底はまるで空中のようで海の底のようで3人は繰り返し繰り返し、シドの周りでジャンプし、回転し、走り抜けるのだ。まるで鳥のように魚のように。シドを心配したお付きの看護師が注意するまで。何度も何度も。

水色のプールの底を滑らかに走る少年たちの姿の美しさ。まぶしさ。
成長する事はまた悲しみもあるが、決して千切れてはいなかった彼らの友情が胸に迫ってくる。シドの車椅子を3人が支えながらプールの底を走らせる。手術の傷跡も痛々しいシドの笑顔。
たとえまた離れてもこの時をともにした思いはもう忘れる事はないだろう。

スケートボードというちょっとばかししょうもない感のある遊びみたいなものだと見くびった気持ちもあったのだが最後には胸が痛くなるほどの思いだった。
3人の少年たちはどの子もそれぞれに思い入れができる丁寧な設定になっている。
自分的にはメキシコ人アルバがかっこよくて好きだった。他の2人より先走って金儲けの世界に入ってしまい、持ち前の短気で痛い目にあうのだが、彼がシドのプールに戻っていたのを見た時は涙がこぼれそうになってしまった。
母親思いのジェイも生意気が可愛い。結局は一番損な役どころだったのかもしれない(出世と言う意味では)金儲けと聞くたびに逃げてしまうジェイは最も純粋にスケートボードを楽しんでいるのかもしれない。
ステイシーは可愛い顔だが3人の中で一番のしっかり者。気持ちも優しい少年で魅力的だ。
実話を元にした物語ということが信じられないような美しい話だった。海に向かって走る彼らの爽快さ。

ヒース・レジャーはこの悪ガキどもを利用してスケートボード製造で一儲けしようとして失敗するかなりしょぼい男の役なのだが、これが意外と似合っている。
酒びたりでサーフボードを懸命に作っている様子がけなげである。
世代ごとに思い出の青春映画というものがあるだろうが私がこの映画で思い出したのが『ビッグウェンズディ』本作が70年代ならこれは60年代を懐かしむ、という物語だった。こちらも3人の若者がサーフィンで青春を謳歌しやがて大人になり再び、という感動作であったっけ。
本作の出だしがサーフィンだったし、ヒース演じるスキップのサーフィンがかっこよくサーフボードを作るシーンなどが重なって思い出された。

それにしても空のプールでのスケートボードのシーンは忘れられない衝撃だったなあ。
本作の脚本を仲間の一人ステイシーが手がけているのも驚き。登場人物の一人ひとりに愛情が感じられる。

監督:キャサリン・ハードウィック 脚本:ステイシー・ペラルタ 出演:エミール・ハーシュ ヴィクター・ラサック ジョン・ロビンソン マイケル・アンガラノ ニッキー・リード レベッカ・デモーネイ ヒース・レジャー
2005年アメリカ

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posted by フェイユイ at 21:20| Comment(4) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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