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2008年02月03日

『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間 』デヴィッド・リンチ

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TWIN PEAKS: FIRE WALK WITH ME


さてさてついにやっと観ることができた『ローラ・パーマー最期の7日間 』これはTV版ツインピークス全話を観通してから観た方がよい(少なくともシーズン1は)
時間としてはTV版の直前の話になるわけでドラマシーズン1の最後にわかる犯人ががここで登場してくるのである。またドラマの中の謎が解き明かされていくのだが、だからと言ってTV版のもやもやがこの映画ですっきり晴れるかといえばますます謎めいて判らなくなってしまうのがデヴィッド・リンチならではの味わいとなっている。

冒頭のパートではツイン・ピークス/ローラ・パーマー事件よりさらに一年前の殺人事件が問題となる。17歳の白人少女が何者かに殺害されたのだ。
この事件を担当するのはクーパーではなくチェット・デズモンド。だがこの捜査官もクーパー同様、独特の才能を持っているのだ。
別件を扱っていたデズモンドを飛行場で待っていたのがでかい声でお馴染みのゴードン・コール(デヴィッド・リンチ監督その人)と優秀な検視官サム・スタンリー(なんとキーファー・サザーランド。丸顔で可愛い。いい人っぽい)そしてゴードンが用意していた女性リル。
真っ赤なワンピースのリルは奇妙な動きをしてみせ、慣れないサムを驚かせる。コンビを組むことになったデズモンドは事件現場の町まで走らせる車の中でリルの謎を解いていく。
しかめ面は現場の町の警察から歓迎されないということ、瞬きは上層部とのトラブル、手をポケットに入れているのは何か隠し事がある、足踏みは足を使った捜査になる、服が縫い直されているのは麻薬が絡んでいる胸についた青い薔薇の意味は説明できない、と言う。
この説明できない、と言う言葉がまた奇妙だが、青い薔薇はこの世に存在しないものでありそれを胸に着けているというのは存在しないものがそこにある、ということになる。説明できないものを捜査しに行く、ということになるのではないだろうか。
ローラ殺人事件1年前のテレサ・バンクス殺害事件から恐怖が始まっている。実際の事件でもよく言う言葉だが、このテレサ・バンクス事件で犯人が捕まっていればローラの悲劇は起きなかったかもしれない(彼女の場合は起きたかもしれないが)
優秀なFBI捜査官であるデズモンドの謎の失踪によってすべてが断たれてしまった。
キーファーの検視官ぶりもよく、この冒頭部分だけでも見ごたえ充分。
クーパーが監視カメラを使って不思議な確認をやっているところへ2年間行方不明になっていたジェフリーズと言う男(デビッド・ボウイ)が突然帰ってきて監視カメラに映りこむ。
だがゴードンに赤い部屋へ行った顛末を話している間にまた消え去ってしまったのだ。
デズモンドの後を引き受け捜査に乗り出したクーパーはテレサの爪の間に入れられていたTの字の書かれた紙から事件が連続するだろうという予感を覚えた。

そして1年後。
舞台がツインピークスに移り、後に殺害される女子高校生ローラ中心のドラマとなる。
TV版ツインピークスで美しい死体となって登場し思い出の中だけでの出演だったシェリル・リー=ローラの7日間が描かれていく。
麻薬に溺れ、開放的性生活また買春も行っていたローラの日常と苦悩が描写され、TV版でも語られていたことがローラ自身の行動を観る事でより具体的に感じられる。
ローラの苦悩は幼い時から積み上げれらたもので、彼女はいつ「ボブ」に体を奪われるかと怖れている。
「ボブ」は悪そのものでありその姿を見れる者は少ないがローラと過去所の母親はそれを感知できるのだ。
「ボブ」が父親だと知った時のローラの驚愕。
リンチのこの表現は様々に受け止めることができるのだろうが父親から性的虐待を受ける少女の恐怖を表しているように思える。
ローラ自身そのことを以前から知りつつ、確信できずにいたようだ。12歳の時からボブの姿を見ていたと彼女は言う。
その恐怖が彼女を麻薬に溺れさせ、他の男とセックスすることで父親から感じる性的な圧力から逃れさせていたのかもしれない。
だからこそ親友ドナが自分と同じ行動を取ろうとした時、そういった恐怖のないドナが「する」必要はない、と訴えたかったのではないか。
ローラの母もそのことを薄々感じながら認めたくない気持ちがあり二人のその気持ちが「ボブ」という悪魔の姿を見させていたように思える。
実の父親の自分に対する異常な性愛を認めざるをえない少女ローラの葛藤はどのように深いものだったか。
この映画のローラは狂ったように騒ぎ、走り出し、笑い、泣き出す。その激しい精神の不安定さ。まだ少年のジェームズは彼女を愛してはいるがその苦しみを背負ってあげる力がない。TV版でもローラはジェームズの純真さに物足りなさを感じ精神科医に頼るがそれでもローラを救うことはできなかった。
映画において近親相姦という題材がさほど衝撃でなくなった感もあるが、やはりそれは異常で怖ろしいことであり、被保護者であるローラのような少女が父親という権威から逃れる事はできない悲しさがある。愛している、という気持ちがあるためにそれが性と重なった時、子供はどうしようもないのだ。
ローラが父こそがボブであると確信し、父親から強姦された挙句殺される運命にあると感じる。それでもなんとか明日までは逃れたい、と願いながらローラは男達のところへと出向くのだ。
その願いも空しく、父親リーランドから見つかった時のローラの嘆き。引き裂かれるように叫ぶローラの悲しみ。
この場面は他ではないほどの恐怖に満ちている。父親から殺害される娘ローラの絶望の叫び。
赤い部屋でクーパーと共にいるローラの前に天使が現れる。
様々な「悪い行い」をしていたローラだが、それは逃れられない恐怖からくるものだった。惨たらしく殺されてしまった憐れなローラに消えてしまったはずの天使が現れたのだ。
ローラは笑う。
だがなんとなくこの笑いに悲しみも溢れているように思えてならないのだが。

原題は『FIRE WALK WITH ME 』火は私とともに歩む
業火に苦しむローラ、そしてリーランドのことも含むのだろうか。

監督:デヴィッド・リンチ 出演:カイル・マクラクラン シェリル・リー デビッド・ボウイ モイラ・ケリー メッチェン・アミック ヘザー・グラハム レイ・ワイズ ダナ・アッシュブルック ジェームズ・マーシャル キーファー・サザーランド
1992年アメリカ



posted by フェイユイ at 22:08| Comment(2) | TrackBack(0) | ツイン・ピークス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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