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2008年02月08日

『SUKIYAKI WESTERN ジャンゴ 』三池崇史

SUKIYAKI WESTERN.jpg

DVD鑑賞なので音声は日本語にも英語にもできるわけだが、せっかくなので英語で鑑賞した。
しょっぱなからクエンティン・タランティーノがガンマンとして登場してくる。源氏と平家がとある村に埋蔵されているお宝を巡って抗争を繰り広げる所へ一人のガンマンが流れてくる、という三池崇史監督らしい破天荒な物語である。
作りもコメディであるし、心ゆくまで楽しめばよい、という作品なのであるが、そうそうどっぷりと楽しみきれなかった感もあった。
とんがった批評をする作品でもないし、する気もないし、感想もハチャメチャに楽しませてもらおう。

なかなかに面白かったのはそれぞれの役者がたっぷり楽しんでいる雰囲気でかっこいいのは見ごたえあり。
殆どの英語は誰が聞いても下手にしか聞こえないだろーが私はどーせわかんないから、まあそれはよい。
ただし肝腎のハチャメチャ感が思ったほどには感じられなかった。三池監督は幾つか観てくると感じるが、それほど映画というものにさほどの執着心というものはなくてそこそこ楽しめるものを作ればよい、というタイプのように思える。その辺の適当さがいいといえばいいのだが、それがうまく当たる時と当たらない時があってそれは人それぞれの好みの問題なのだが、今回は私にとっては少々ハズレだったようだ。
とはいえそれでも全然つまらないわけではなく上に書いたように伊藤英明、佐藤浩市、 伊勢谷友介がそれぞれに独特の個性あるかっこよさで安藤政信も入れ歯までしてせっかくの美貌を崩したり、香川照之は相変わらず小技をきかせ動くたびに音がするなどおかしい演出で凝っている。桃井かおりがかっこいい女であった。
なのに何か物足りないしつまらないのはどういうわけなのか。ストーリーなどというとまたそんなものはない世界なのだと言われそうだが、かっこよさ、面白さを追及するためのストーリーは必要なわけでせっかくの源氏・平家と薔薇戦争をかけた面白さが表現できていたのかなと勿体無くも思う。
源氏・平家のパロディといえばすぐに高河ゆん『源氏』を思い出してしまうがあのようなめちゃくちゃさもなかったような気もする。
ガンマンが村にやってきて平家と源氏が二手から出てくる様は黒澤明『用心棒』だろうが、無論この映画と比較するわけにはいかないだろう。
何と言っても源平合戦をマカロニウェスタンでやっているわけだが、マカロニウェスタンを別の舞台に移した映画作品といえば『マッドマックス2』がある。
なるほど、本作は『マッドマックス2』と似ている。というか両方ともマカロニウェスタンが下敷きだから似ないわけはがない。
伊藤英明がメル・ギブソンでお宝がガソリンだった。何となくガソリンと言うほうがこのガソリン高騰の折、切実に感じられもする。
大人の中に一人男の子が登場するのも同じだったりする。
だがめちゃくちゃにスピード感があって恐ろしいほどのかっこよさがあった『マッドマックス2』に比べればどうしても見劣りがしてしまう。
またガンガン人を撃ち殺すのはサム・ペキンパー『ワイルドバンチ』だがこれもまたしかり。
それにしてもこの2作品にしろ、かつてのマカロニウェスタンにしろ、皆シリアスであった。シリアスな残虐さだった。
本作は残酷だがコメディである。コメディというのは「コメディなんだから、そう目くじら立てるなよ」と笑って逃げられる道がある。
題材がシリアスであれば手法としてコメディで笑わせるというのがうまいし、題材がふざけていればあえてシリアスで攻めてみる。
シリアスな作品はシリアスであればあるほどおかしさがこみあげてくるという怖さ、またはこんな残虐なものをシリアスに見せるなんてという非難をあびてしまうという怖さがある。シリアスにこだわりながら破天荒な映画を作るのは難しいだろうが観ているほうはのめりこんでしまうものだ。コメディが格下でシリアスが上等だとかそういうことではなく、とことん酔わせてほしいのだ。
笑ってしまうほどシリアスになって欲しいと思ってしまう。コメディは最初から笑うことを前提としているのでその楽しみがない。
だがここで思い出してしまったのは以前三池監督が「残酷な映画ばかり撮っていたら駄目だと言われた。じゃあどうすればいいと聞くと、お笑いなら残酷でもいいと言う。笑いながら残酷と言うほうがよほど酷いのではと思ったがそうしなければ作れないのでコメディで作る」というようなことを言われていたような記憶があって、確かに三池監督はそうした特長がある。日本ではシリアスにふざけるのが禁止されているのなら、もうどうしようもないが、こういった映画をシリアスに破天荒に作ったのを観れたなら、と思ってしまうのだ。
タランティーノもコメディ側なのでなかなか今シリアスの残酷は難しいのかもしれないが。
前回観た三池監督『ぼっけえきょうてえ』はシリアス度が強かったのが面白かった。

佐藤浩市=清盛はぶっ壊れていて楽しかったが、 伊勢谷友介 =義経は不満がある。いや、とてもかっこいいとは思ったのだがそれだけにもう少しゲイ的な要素をいれて欲しかった。
最初、ガンマンに「かわいい奴」などと言っている雰囲気でそういう方向かなと思っていたらそうでもなくてせっかく石橋貴明=弁慶が女になってしまって義経にせまってくるのにとことん嫌ったりせず、そういう関係になってみてもよかったのではなかろうか。
『マッドマックス2』でもヒューマンガスの懐刀みたいなモヒカンがゲイで美青年とタンデムしてるのがアメリカン暴走族とはちょいと違うテイストで好きだったのだが、日本の義経もゲイな魅力を持っていて欲しかった。三池監督案外意気地がないのでは。ていうかサービス精神が不足。大人のウェスタンなのだからその辺是非トライして欲しいものだ。

などとあれこれ注文をつけながら考えてみるのも他にない可能性のある映画だからこその楽しみであるだろう。

塩見三省氏は本作でネイティブアメリカンの役だと思うのだが、どうだろう。

監督:三池崇史 出演:伊藤英明 佐藤浩市 伊勢谷友介 安藤政信 石橋貴明 木村佳乃 香川照之 堺雅人 小栗旬 クエンティン・タランティーノ 桃井かおり
2007年日本


ラベル:コメディ
posted by フェイユイ at 01:05| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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