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2008年02月23日

『ハリウッドランド』アレン・コールター

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HOLLYWOODLAND

この作品でベン・アフレックがヴェネチア国際映画祭 男優賞受賞したということもあって期待して臨んだのだが、どこかしら期待したものとズレがあって失望のうちに終わってしまった。

と言ってもこの作品の出来栄えがそうそう酷いわけでもないのだろう。よく似た題材の作品『ブラックダリア』より地味目で渋い仕上がりであり、ミステリーというより人間ドラマに重きを置いている点などからこちらに評価を上げる方もあるのだろうが、自分としては(そんなに『ブラックダリア』が大好きというのでもなかったが)非常に退屈を覚えてしまう2時間だったのである。

1950年代末、やや翳りを見せ始めたとはいえ、まだハリウッドが黄金の夢の世界であった頃、TVヒーローであったスーパーマン役者ジョージ・リーヴスの自殺は全米中の子供達をショックに陥れた。
だが彼の死は本当に自殺だったのか、ひょんなことから彼の死を調べる事になった私立探偵シモは調査するうちにリーヴスの苦しみと自分の今の状況を次第に重ね始め共感を覚えだすのだった。
欺瞞に満ちたハリウッドの華やかさにはまったく憧れを持つことができないし、そこで有名になったものの当時二流としかみなされていなかったTVヒーローの役しかできないことで苛立つリーヴスの悲しみも共感できない。仕事がなく事務所をたたみ、離婚した妻子からはうんざりした眼差しで見られているシモにも男の哀愁などを感じられない私なのであった。
つまりここで描かれていることは自分の好きな世界とまったく異なっている上に好きであるミステリーの要素が非常に薄い、ときては興味を保つ事が難しく激しい睡魔に襲われながら鑑賞を続けた。
作り手側は今はもう失ってしまったかつてのハリウッドの繁栄に郷愁を覚えながら底で蠢く野望や人間の醜さをリアルに再現したことに満足しているように思えるのだが、そういった要素のすべてがいかにもイメージするハリウッドそのものでそれ以外の何物でもないことを再確認させられることが退屈だったのだ。

これは趣味の問題でこういった話、華やかなハリウッドの裏話、落ちこぼれの探偵の悲哀、疲労した男の色気、などといったものにそそられる人にはなかなかの秀作として受け入れられるのだろう。
ベン・アフレック=リーヴスとエイドリアン・ブロディ=シモに魅力を感じなければいけないのだろうが、私には彼らの苦悩に同情できないのである。
幸運といってもいい仕事に不満を持つリーヴスと妻子のために身を粉にし這いつくばって養うべきなのにふらふらとして奇妙な行動をとってしまうシモ。
そういった存在になお共感と愛情を覚える人もいるだろうがいかにも可哀想だろう、という見せ方に嫌悪を感じてしまうのだ。それがリアルさを追求した表現なのだというのがわかるだけに余計嫌なのだ。
スーパーマンに嫌がらせをする子供や自分勝手な恋人などすべて事実を描いたのだろうが、露悪さだけがこう立て続けにでてくると何のためにそこにいるのか、何のために観ているのかすら判らなくなってしまう。
さらにシモが昔の家族のフィルムを観て反省し元妻子のところへ行くラストシーンにはなぜか激しくむかついてしまう。
この反感はもう理屈でなく感情として湧き出てくるものでどうしようもない。
この反感は以前『ゆれる』で感じたものに似ているのだが、物語はまったく違うのだが「華やかな世界(芸能界とか)」と貧しい生活者との対比、かつての幸せな時期のフィルムを観る事によって反省する顛末、というところが何故か同じだ。幸せだった頃を思い出して自分を見つける、という展開はいくらなんでも当たり前すぎないのか、と思ってしまう。同じように『ツイン・ピークス』の悪人ベン・ホーンも昔幸せだった子供時代のフィルムを再生して反省いい人になるが、これはその姿を笑っていておかしいのである。そういうことだと感じたわけなのだ。

何となくエイドリアン・ブロディ主演作は『戦場のピアニスト』『ジャケット』そしてこれ、と奇妙にも激しい反感を持ってしまってばかりなのだ。どうしてなのだろう。相性が悪いのだろうか。

ジョージ・リーヴスを演じたベン・アフレックはさすがにスーパーマンしかできない役者の憐れさが感じられてよかったが本音を言えばそこまで感動したとは言いにくい。
結局本物のジョージ・リーヴスを再現したご褒美なのかとすら考えてしまう。

ダイアン・レインも実物のトニーにそっくりということで評価されているようだ。年老いても美しい女性という役を魅力的に演じていたが、これも作品自体が疑問なのでそれ以上感じ入る事ができない。

自分的にはエディ・マニックスの片腕的存在の彼がちょっと好きだった。

要するにやたら男の哀愁めいた話はうんざりなのだ。その哀愁を楽しむ、という手もあるわけで。
それに気づかなかったのが悲しいのだといわれればそれまでだがどちらにしても好きなジャンルじゃなかった、ということなのだろう。
同じように悲しんでいても好きな話ならまた感じ方も違ってくるのだろうし。

しかしこの文章を読むのも私がこの映画に感じた同じ苦痛を与えるだろうなと冷や汗が。影の部分をみせるのは難しいものなのだ。

監督:アレン・コールター  出演:エイドリアン・ブロディ ダイアン・レイン ベン・アフレック ボブ・ホスキンズ ロイス・スミス ロビン・タニー
2007年アメリカ


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posted by フェイユイ at 22:43| Comment(6) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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