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2008年03月09日

『サッド・ヴァケイション』青山真治

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なんというか、怖い映画を観てしまった。この作品、本当はコレでいいのか、こういう話を作ってしまって許されるのか。というところまで来てると思うのだけど、観終わって暫くしてると、いい映画だったように思えてくる。
でもそう思ってはいけないような本当には恐ろしい話なのではないか。

健次は母親を慕いながらも怖れている。まさにグレートマザーそのもののような存在の彼女はすべてを許し司っているかの如き風格である。それゆえに彼女の考え行動はある時は暖かな慈愛を感じるがある時は非常に残酷で冷たいのだ。
私はそこに母親そのものを感じて健次と同じように彼女を愛し、怖れる。

北九州を舞台にして地元の話し言葉をそのまま再現したこの作品で語られるのはいかにも九州らしいものだ。
男たちは言葉も性格も荒々しいが女性には母親を求めていて子供っぽい。最後に梢にすがる後藤とそれを受け止める彼女の姿が象徴的である。
また冴子も健次を許し待ち続け、そのお腹には彼の子供が宿っているという母性を強く表している。

子供っぽい男達とそれを抱く母親的な女性の構図は九州では当然のものだが、反発を感じる場合もあるのだろうか。
復讐を誓って母親を見つけ出した健次だが、なんのことはない、母親に飲み込まれてしまった。

このグレートマザーを演じているのが石田えり。ふくよかなその容貌からしてぴったりである。
梢は宮崎あおい。バスジャックに遭ったという辛い少女期から成長した女性を演じているが、その雰囲気はもう当然といったところだろうか。
健次が勤めることになる間宮運送の社長は母親の再婚相手である。この運送会社は様々な傷を持つ人々を受け入れて成り立っている。この運送会社も母性的な意味を持っている。社長は中村嘉葎雄で実にうまい。
そこで働いている後藤は借金取りから追われる身の上。彼を演じているのがオダギリジョーなのだが、初めてとても合っているいい役なのではないかと思った。
お馴染みの斉藤陽一郎がいつもどおりのお調子者で決めていた。

『サッド・ヴァケイション』というタイトルはニューヨークドールズのジョニー・サンダースが、シド・ヴィシャスの死を悼んで作った歌。「君と会えない時間は僕にとってとても悲しい休暇だ」
ここでは健次が慕っていた安男への思いなのだが、嵐の晩に安男の幻影を見た健次はそれから精神状態がおかしくなってしまうのだ。
ヴァケイションが終わり彼は行動を始めてしまう。

健次役の浅野忠信。『Helpless』からの10年後を演じているのだが、これがまたかっこいい。
いつもの彼よりやや男っぽい生な感じが出ていてキスシーンなんかもステキであった。

ところで間宮運送の息子・勇介のベッドの脇にフランケンシュタインの怪物の小さなポスターが貼ってあった。
怖い顔にぎょっとしてしまうが、このモンスターといえば生みの親に愛されず愛を求めて苦しんだ怪物である。勇介の胸の中を表しているようだ。

監督:青山真治 出演:浅野忠信 石田えり 宮崎あおい 板谷由夏 中村嘉葎雄 オダギリジョー 光石研 斉藤陽一郎
2007年日本


ラベル:女性 家族
posted by フェイユイ at 17:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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