

Hustle&Flow
『ブラック・スネーク・モーン』を観て惚れてしまったクレイグ・ブリュワー監督のその1年前の作品だが、これもまたたっぷり酔わせてくれた。
数人の売春婦(黒人&白人)を使ってしがない稼ぎで食いつないでいるピンフ(客引き)の黒人中年男Dジェイがひょんなことで聞いてしまった黒人女性の歌声に涙する。
Dもかつてはラッパーを目指していたのだった。
まともな生活をしている昔の友人(黒人)と彼が連れてきた若い白人男と手を組んでDは再びラッパーの道を目指すのだった。
黒人・白人と書き立てるのは気が引けるが『ブラック・スネーク・モーン』と同様(こっちが先だが)黒人が主要人物というのがやはりポイントなのである。プラス白人の女性と男性が少しずつ登場して白人の観客も参加できる仕組みになっている(のだろう)
物語はもーいかにもラッパーならではというこてこての展開。貧乏で不運で女を食い物にして日銭を稼ぐならず者なDジェイ。日頃の鬱憤を全てラップに注ぎ込む。
夢と希望の全てをかけてデモテープを作り上げ人気ラッパーにそれを手渡そうとするが喜びは束の間、Dの行動が全てをぶち壊しにしてしまう。
黒人女性の歌を聞いて涙を流すDを観てまあなんという判り易い反応だろうと思いながらもその歌声の素晴らしさにこちらもじわり。
情けない客引き男があっという間に音楽にのめり込み友達と共に悪戦苦闘でスタジオを作り、音楽を作り上げていく過程は観ているだけでも楽しくなってにやついてしまった。
歌を作っていくのって面白そうだなあ。とはいえ私は音楽素養などまったくないので作れるわけもないが。
Dの売春婦の一人で妊娠中のシャギにちょっと歌わせたところ、これがとんでもなくいけていた!うーん。黒人女性だからなあ、などと納得していいのやら。これがめちゃめちゃかっこいいのだからもうどっちでもいいか。
とにかく御手製のスタジオ、仲間内でソウルフルなラップが吹き込まれていく。
そんな大事なテープをどうして有名とはいえ一人のラッパーに手渡す事で夢を繋ぐのか、実はいまいち判らない。
まだしも最初からラジオ局なり、どこかの音楽事務所なりに持ちかけたほうがましと思うのだが、アメリカではこういう形、もしくは黒人としてはこの方法が多いのか。
まあ、こうしてDは自分の手で自らの夢を断ち切ってしまう。
普通ならここでもう「なんて最低な結末だ」になりそうなものを思わずにやりとしてしまうこれからへと繋げてしまうのだ。
ラップといえば自分は台湾人の周杰倫のしか聞かないし、てんでなにもわかっちゃいないけど、この映画は最高にいかしてた。Whoop That Trick!
Dジェイは女にも酷いし情けない役どころなのだが、演じるテレンス・ハワードはどう見てもかっこよくてステキに見えてしまうんだよね。ホントに嫌な感じだったら見たくないだろうけど。
やせっぽちの白人青年のブルースに関する熱論がかっこよかったし、白人売春婦ノラの最後の活躍も決まっていて白人二人もソツなく活躍。
音楽のできる過程をわくわくと見れてそういまくいかないよ、と釘をさされ、でも人生そう捨てたもんじゃない、と思わせてくれるちょっといい映画だったね、これは。
走る車のホイールが綺麗だった。
監督:クレイグ・ブリュワー 出演:テレンス・ハワード アンソニー・アンダーソン タリン・マニング タラジ・P・ヘンソン D.J.クオールズ
2005年アメリカ
ラベル:音楽