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2008年04月20日

『光の雨 連合赤軍事件』高橋伴明

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巷では『映画/実録・連合赤軍−あさま山荘への道程』が話題を呼んでいる最近である。自分はいつもどおりで劇場には行けないのが残念でならない。DVD化されたならすぐに観たいと願っている。
そういうのを横目で見てるせいもあり、何かしら連合赤軍の映画はないかと思って観たのがこれである。

さほど期待はしていなかったのだが、思った以上に、というのでは足りないほどに緊張感と迫力に満ちた作品だった。

現在を舞台にして『連合赤軍』の映画を撮影していく過程を追っていく、という構成になっている。
従って映像の中の登場者は当時の役柄を演じている、ということになるのだ。
合間、合間にカットが入り、暴力シーンが途切れたり自分の役柄について批判したりするのである。
普通ならせっかくの緊張感が嘘であるとばらされ、白けてしまいそうだが、これが却って一つ一つの言動を考えさせられるし、この事件を知らない世代にも解りやすい解説になっているのではなかろうか。
と共に、映像の中の出来事の恐怖感があまりに酷いのでそうしたカットが自分には救いのようにすら感じられた。
それでも、そうやって映画の中の演技が「映画撮影のための演技をしている演技」とわかっていても時々非常にリアルに感じられぞっとするのであった。

映画の中の映画監督が製作に耐え切れず逃げ出してしまう設定も通常ならだるい展開だが、当時を生きていた者だからこそ耐える事が出来なかった苦しみが感じられた。

『連合赤軍』映画撮影のための演技という設定と知りながらも、自己批判の緊張感、総括援助という名前の惨たらしいリンチ、それらは狂気としか感じられない。次第にエスカレートしていく状況の中で誰もリーダー倉重と彼よりも恐ろしい存在感のある女性・上杉(劇中での創作名だろう)に逆らう事ができない。
映画が監督蒸発のために中断した時、仲間の悪口を言った者に「自己批判せよ」というのはまるで映画の中の登場人物が乗り移ったかのような不気味さであった。

映画のメイキング撮影を担当した阿南役の萩原聖人、現代の若者である役者たちがそれぞれの感想を述べていくのも興味深い。
それぞれがその役を演じる事でどこかその当人とつながってしまったような錯覚を覚えてしまうのではないだろうか。
特に12名を殺害に導いていく倉重役の山本太郎もさることながら、裕木奈江の演じた上杉の恐ろしさというのは特に声を張り上げたりヒステリーを起こしたりすることもないがためにより言い知れない奇妙な力を感じた。
読んだ話でしかないが実際は上杉役に当たる女性=永田洋子が妊娠した女性がリンチで死亡した時、胎児を取り出せないかと言い出したということらしいが映画では山本太郎演じる倉重=森恒夫が発言し上杉は首を横に振っている。これは製作者があまりに惨たらしい発言を女性にさせるのを憚ったのだろうか。
ともあれ裕木奈江といえば自分世代には「男受けだけする女性、男性に甘ったれた女性」を思わせるタレントとして女性からはかなり嫌われたイメージだったのに、ここでは仲間の男からも「女としては見ていない」と言われる存在になっていてやはり驚いてしまう(順番としては逆のデヴィッド・リンチ『インランド・エンパイア』での彼女の汚れ役を先に観ていたので公開当時に観た人ほどではなかったろうが)

時代背景、思想、様々なことが絡み合って生まれてしまった事件なのだが、人間の狂気、というものが現実においてこのように実行されてしまうという事実。
創作としてもこのようなことは考え付かない恐ろしいことではないだろうか。
もっと早くに観ていてよかった映画であった。
凄まじい題材であるのに(だからなのか)これだけを正面から扱った映画というものはそうないようである。
冒頭に書いた『映画/実録・連合赤軍−あさま山荘への道程』も是非観たいものである。

監督:高橋伴明 出演:萩原聖人 大杉漣 山本太郎 裕木奈江 池内万作 川越美和 高橋かおり 鳥羽潤 小嶺麗奈 板谷由夏 山中聡 大柴邦彦 西守正樹 塩見三省 池内万作
2001年日本


ラベル:狂気
posted by フェイユイ at 23:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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