映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年04月26日

『ボーン・アルティメイタム』ポール・グリーングラス

ボーン・アルティメイタムs.jpgボーン バイク.jpg
THE BOURNE ULTIMATUM

物凄く久し振りのマット・デイモン主演映画。待ちに待っていたのにちょうどDVD化した頃に自分が松ケンに入り込んでしまったために鑑賞が今頃になってしまった。ごめんよマット。
が、しかし待ち望んだ映画にも関わらず喜びはあまり芳しいものではなかった。

グリーングラス監督お好みの手振れハンディカメラは決して嫌いではないのだが、この細かいカットの夥しさは心地よいものではなかった。
こちらは久し振りのマットの顔をゆっくり観たいと思っているのに意地悪としか思えないほど、さささと映しては切り替え撮っては外され、欲求不満がずっと尾を引いてしまう。
まるで神経機能に異常がある人間の目で観ている景色のようであちこちあちこち落ち着かない。それがアクションを描写するのに効果がいかほどあったのか。
カットの多さが売りだという前評判だったわけでなるほどこれがその仕上がりだったわけか。
手振れはいいが、この切り替えの多さには気が滅入る。物語はさほど複雑な事を語っているわけでもないのに映像の複雑さで物々しい雰囲気を作りたい、という狙いなのか。でも単純な話だとはすぐわかるのだけどね。
マットが言っていた「流行のカンフー的なアクションではなく、本当に威力のある格闘にしたんだ」という奴をじっくり見たかったのにあわあわと切り替えまくるカメラで格闘の重厚さも薄くなってしまった気すらする。
それでも確かに格闘シーンが迫力あったのは見えたのだが。
いや、格闘シーンだけでなく単純なストーリーだとは言ったがなかなか見ごたえのある内容だったと思うのにこの落ち着かない映像がむしろ邪魔なのだ。
スタイリッシュというのか、奇をてらったというのか、グリーングラス映像の特徴はこの作品で最高に発揮されているのだろうが、自分としては精神に異常をきたしているとしか思えない。そういえば、人物像に斜線のようなものが入る場面があるのだが、フランシス・ベイコンの絵画のような怪奇な印象を与えるのだった。
ここまでなくともアメリカ映画にはなにやら留まるのを怖れるような早回しの作品が時折あるのだが、そういうものが「退屈させない映画」と思い込んでしまっているのではないか。
あまりに早い映像というのも続きすぎると却って眠気を呼ぶものなのだが。
この作品、同じ内容で普通の撮影をしたものをもう一度観てみたい。
問題は撮影方法というより映像処理の方にあるのだ。

では作品が気に入らなかったかというとその映像処理さえ我慢すれば(って言ったって全編だから全編我慢した上で、なんだけど)面白い、と思う場面は多々あった。
前半は細かい切り替えばかり気になってマットでなければもう止めようかと思ったのだが(顔もよく映してくれてないし)後半に差し掛かるモロッコでのバイクチェイスになった頃「お!」と画面に入っていった。
『ボーン・アイデンティティ』の時、監督は違うがミニ・クーパーのカーチェイスが面白かったのだが、ここではアメリカ映画に珍しいスクーターと軽排気量のバイクでの追いかけっこシーンが楽しい。
マットがオンロードバイクをオフロードのように操るのは(いくらなんでもスタントマンさんだろうが)かっこよくてステキだった。アメリカ風大味カーチェイスには興味がないが、こういう細かいバイクの追いかけっこなんかは大好きなのだ。最近殆どこういうの観る事なかったので久しぶりにクギづけになった。

そして最大の見せ場だろう同じくモロッコの街中をびょんびょん飛び回るアクションも楽しめた。
しつこいが普通の撮影で観れたらもっとよかったのに。

さてボーンの正体を明かす最後の場面は苦い味となって残る。
物語としてこういった人間殺人兵器を作り上げている政府組織への問いかけという意味はわかるが、ボーンが拘束された人間を撃ち殺すのはおぞましく感じてしまう。
アクションシーンの中での殺人はつい見逃してしまうものだが、こうリアルに見せられると露骨に感じてしまうものだ。
これをダーティな魅力として感じるのか、殺人鬼として認識させられてしまうか。
そういった暗い過去を持つ影のある男として捉えるべきなのか。
映画自体に感心していないだけに反感として残ってしまったようなのだ。

マット主演ということで楽しみだった本作だがマットを見れたのは瞬きする合間、合間であった。残念だ。さて次は『グッド・シェパード』もう少し彼の顔をじっくり眺めさせてもらいたいものである。

ダニエル・ブリュールが出演しているというのも期待の一つだったのですが、亡きマリーの兄ということでの僅かな場面だった。
もっとマットとの対決だとかの絡みがあったらよかったのになあ。英語も話せるのに!

ラストシーンは海の中。こういう風に海のシーンから始まったから海の中で終わる、という手法、みんな好きだねー。別に悪くはないが。

監督:ポール・グリーングラス 出演:マット・デイモン ジュリア・スタイルズ デビッド・ストラザーン スコット・グレン パディ・コンシダイン ジョーン・アレン ダニエル・ブリュール
2007年アメリカ


posted by フェイユイ at 23:28| Comment(3) | TrackBack(0) | マット・デイモン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『吉原炎上』五社英雄

吉原炎上.jpg

以前にも書いたのではないかと思うが、なぜ売春という物語にこうも惹かれるのであろうか。
無論、ここで描かれる世界は夢のように華やかな数少ない一例なのでその美々しさに見惚れているのは確かなのだが、それだけではない。
男優が一度は兵士の役をやるように女優は売春婦の役をやりたくなるのではないだろうか。(やりたい、というのが間違いならやってしまう、というのか)自分がそれをやりたいのかは別としてもそれを演じる事でまた観ることで女というものは何なのか、を考えさせられてしまうからなのか。

この作品ではおとなしい女性だった久乃が吉原に買われ花魁として生き抜いていく様が描かれていく。
時間が経っていくので久乃=若汐の言動がかなり急激に変わってしまったり、女郎というものがそういうものという演出なのか、かなりエキセントリックな女性たちが登場するので驚きっぱなしで鑑賞していった。
公開当時、有名女優たちのヌードだとかポスターの通りのレズビアンな映像だとかが話題だったがその時はさほど観たいとも思わなかった。
一つは主役の名取裕子があまり色っぽい綺麗さに思えなかったからだが、今観るときりりとした知性ある美人ではないか。やはり子供では判らないものなんだろう。
ストーリーとしてはそれほど衝撃ということはないのだが、結局若汐と若旦那の信輔の純愛物語なのであった。
信輔はなぜか若汐と性的交渉を持とうとしないまま終わるのだが、仲良く寄り添い信輔の顔を覗き込むようにして抱く若汐のポーズはまるでクリムトの絵のようで微笑ましく美しいのだった。

それほどドロドロとした描写もなく以外に優しい女将たちや新参者の若汐にレズっぽく親切にする花魁だとかも観ていてなかなか楽しいし、何と言ってもそうした明治時代の吉原のしきたりだとか内装だとかを眺めているのが面白くてしょうがない。映画としての演出もあるだろうが。

クライマックスともいえる花魁道中だが、信さんが身銭を全て使ってのものとしては意外にあっさり。今だったらCGを駆使してなんとか華やかに増強するところだろうけどここは想像力でもっと華やかなのだろうなと補うことにしよう。

出世頭の若汐=名取裕子と対照的に置かれたのが、どうにも悲惨な運命の菊=かたせ梨乃であった。

逃げ出そうとした若汐を救おうとして救えず、客として通うことになる若旦那・信輔役に根津甚八。青臭いことばかり言っているのがなかなか可愛らしい。も少し大人の男だったら幸せになれたろうに。
変な巡査を緒方拳がやってたり、変なバイオリン弾きを竹中直人がやってたり(これは普通だがg)若汐改め紫を身請けした旦那が小林稔侍だったりほんのちょいと成田三樹夫が出てたりと豪華な面々である。
ふのり、ってあーゆーことに使うのね、と初めて知る。

監督:五社英雄 出演:名取裕子、かたせ梨乃、二宮さよ子、藤真利子、西川峰子、根津甚八
1987年日本

ラベル:売春
posted by フェイユイ at 01:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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