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2008年04月28日

『長江哀歌(エレジー)』ジャ・ジャンクー

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山峡好人

これもまた期待に期待を重ねていた作品だが、それ以上の素晴らしさで却ってなんと言っていいのか判らない。
褒め言葉を並べ立てることになってしまうのだが、本当に見ごたえのある面白い作品なのである。
急激な発展開発を進めて行く中国政府と実際にそこに住む人々とのすれ違いがリアルでありながら滑稽さも交えつつ描かれていく。
物語を展開していく主人公が現地にいる夫或いは妻を捜しに来た他の地の人間であるために鑑賞者は彼らと共に山峡の土地開発を奇異の目で見ていくことが出来る。
美しい壮大な自然と飾り気のない人々見ているとここは現代ではない遠い昔のことのように思えているのに突然出てくるTVに衣映される『男たちの挽歌』(古い映画ではあるが。レスリー(涙))やけたたましい携帯の音が時代は今なのだと教えてくれる。
急激な開発が古き人々の住居を壊していく。それは突如現れるUFOやヒロインの背景になっている奇怪な建物がスペースシャトルのように打ち上げられてしまうことでいかに理不尽なことが起きているかを表現しているのだ。また醜怪な建物を邪魔だとばかり追い払ってしまったかのようにも思える。
観る者は主人公達と同じように誰か(何か)を探しながらも思うようにいかない苛立ちを覚えてしまうだろう。
そして彼らは探し人を見つけた時、一人はその人と別れ新たな道を歩き出し、一人はその人と暮らす道を選ぶ。
答えは一つではなく自分で見つけるのだというように。

監督はこの映画で中国の過激な変化と混沌に大きな不安を感じ訴えているのだが、自分は勝手ながら昔と今が同時に存在するような不可思議なこの国を描きだした映画に物凄い興味を抱いてしまうのだ。
それが監督の意図とは違うものかもしれないのだが。
だが多分感動を覚えた人々は国を憂えて告発した作品ということだけでなしに、広大な国の小さな一地域に住む人々の生活を見せられた面白さに惹きつけられたはずなのである。
それにしても華々しいイルミネーションに飾られた大きな橋の側を走っていく車の寂寥感というものは例えようもない。

この映画は監督が友人のドキュメンタリーを撮る為にさほど興味もなかった山峡に行った際に突然映画として撮りたいと思い立ち、町がなくなってしまう前にと大急ぎで撮影されたということらしい。
このような面白さのある作品がそんな短期間に製作されたとは驚きだが、それだからこそ勢いのある作品になったのだろうか。
昨日ぼやいていたカット多すぎの『ボーン・アルティメイタム』とは大きく違いゆっくりと画面を観ていくことができる作品である。とはいえ、ジャ・ジャンクー監督作品としてはかなりにカットが多いのではあるが。

小難しい作品を望んでいるわけでは決してないがこのように混沌きわまりなく面白く不思議な世界を見せてくれる中国映画、もっともっと観たいのだがなあ。

監督:ジャ・ジャンクー 出演:チャオ タオ ハン・サンミン ワン・ホンウェイ リー・チュウビン マー・リーチェン



ラベル:歴史
posted by フェイユイ at 00:57| Comment(6) | TrackBack(3) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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