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2008年05月06日

『真夜中のピアニスト』ジャック・オディアール

真夜中のピアニスト.jpg
DE BATTRE MON COEUR S'EST ARRETE/THE BEAT THAT MY HEART SKIPPED

そんなに大好きでたまらない、というほどはないがなかなか面白く楽しめる作品だった。

『ラヴェンダーの咲く庭で』のダニエル・ブリュールを観ていたら、なんだか凄く演奏家の映画が観たくなって探し始めすぐに当たったのがこれだったが、ピアニスト、というには渋い設定である。
亡くなった母親の影響で若い頃はピアニストを目指していた主人公トムはいつしかその夢も忘れ不動産の裏ブローカーとして脅迫と暴力を振るう毎日を送っている。夢を抱いていた頃から10年が経ち28歳のトムはある日母親のマネージャーだった男と出会い「ピアノは?」と訊ねられる。
荒んだ生活を送っていたトムはその言葉を聞いた日から再びピアノへと向かう。

だが現実は厳しく10年放っておいた指はもう動かない。
そんな時、見知らぬ青年の紹介で北京から来たという東洋人女性からレッスンを受けることになる。
言葉も通じないままトムは彼女のレッスンを受け次第に感覚を取り戻す。

荒みきったトムの生活と夢のようなクラシック音楽の世界。人を殴る事しかしてこなかったトムがピアノに再会し、今度はその世界に夢中になってしまう様子が切なくおかしい。
愛してはいるがうまく会話がなりたたない父親との関係、不倫と暴力に満ちた仲間の関係となかなか思うようにならないものの少しずつ弾けるようになりピアノへの愛情が強まっていくバランスが危ういながらも変わっていく。

トムの恋愛も最初は仲間の妻という不倫から言葉も通じず苛立つばかりだった東洋人の女性へと変わっていくなど一つ一つが微妙な変化を見せるのが実に細やかに描かれていく。

ところでこの東洋人女性は私が思うには「北京から来た」とはいうもののベトナム女性なのだろう(中国人男性が「中国語、英語、ベトナム語を話す」と紹介しているが)紹介者が中国人男性だったので最初は中国語、少し話せると言う英語を使っているが、途中からは私にはまったく聞き取れないベトナム語を話しているようだ。顔立ちがベトナムというより中国的に見えるけど。
なぜベトナム女性からレッスンを受けるのか、というのは多分授業料が安くすむからなんだろう。
そのため露骨にトムとの言い争い場面がなくなるし、非常に真面目で控えめな彼女が言葉の通じないままベトナム語で涙ながらに言い返す場面はちょっと泣ける。トムもこれでは大人しくならざるをえないわけで巧い演出だと思う。

トムなりに懸命にレッスンし、オーディションを受けるが上手くいかない。2年後、映像的に「お」と思わせるがそれもちょっとした勘違い。これからも一体トムはどうなっていくのだろうか、と思わせながら画面は黒くなる。

あっけなく才能が開花するようなことのない渋い展開ではあるが、怪我をするだとか、オーディションが受けられなくなる、などという気に障る事件が起きないのは嬉しい進め方である。
親の仇を半殺しにしたトムだが、その後もなんとかやり過ごせそうな予感はある。いい最後だった。

ところで演奏家を観たい、という本来の目的はあまり満足されなかった。というのはトム役のロマン・デュリス、全体を通しては大変な熱演で素晴らしかったが、ことピアノを弾く、という部分に関しては完全に指先が物陰に隠れていたり、とそこだけを見ていた自分には「?!」な演技であった。
そりゃ元々ピアニストのジェイ・チョウばりのテクニックを期待してもしょうがないとはしても、もう少し頑張って欲しかったなあ。これを見たらば松山ケンイチくんのほうがはるかに名ピアニストであったよ。
先生であるミャオ・リンも演奏が凄い、ということではなかったようで。
そこだけは不満な作品であった。それだけを期待している自分のような鑑賞者でなければとても面白い映画だったのではないだろうか。

監督:ジャック・オディアール 出演:ロマン・デュリス エマニュエル・ドゥヴォス オーレ・アッティカ リン・ダン・ファン ニエル・アレストリュプ
2005年フランス


ラベル:音楽
posted by フェイユイ at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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posted by フェイユイ at 19:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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