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2008年05月07日

『マーラー』ケン・ラッセル

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ケン・ラッセル。懐かしい名前だ。
若い頃、こういう映画もあるのか、とおっかなびっくり観ていたような。
今観るとかなりチープな作りでまた驚く。グスタフ・マーラーという名作曲家を描く手法としてこのやり方はとんでもないのではないかと思われるのだが。

いかにも70年代のアートであり、イギリス的な雰囲気に満ちた作品だ。
マーラー自身は見惚れるような横顔の美男子で彼を観るだけでも価値があるといった風情なのだが、作品自体はかなりぶっ飛んでいるといった感じ。しかし繰り返すがマーラー役のロバート・パウエルは見ごたえある。
下品で卑猥という表現もあり、こういうのは今は逆にあまり作られることもないのではなかろうか。
手作り感溢れる演出が時々悲しくさえなるが、これがイングランドの味わいといえよう。
特にユダヤ人マーラーとナチス風コジマ・ワーグナーの一騎打ちの場面は信じられないほどのとんでもなさで苦笑いするしかない。

とはいえ、死期を感じたグスタフ・マーラーが列車のコンパートメントで妻アルマとの会話を通しながらこれまでの人生を振り返っていくという構成はなかなかよかったりする。
結局音楽家は言葉では物事を言い表す事はない。音楽で表現するのだ、ということなのであり、文章でしか物事を考える事しかできない自分にとってはやはり音楽家というのは謎の存在なのである。

なお、この映画でもっとも「お!」となってしまったのは冒頭、プラットホームで発車を待つマーラーの目の前に化粧した美男の老人が座っていてその後ろで金髪の美少年がくるくる踊っている。つまりはグスタフ・マーラーその人がモデルとなったというヴィスコンティの『ベニスに死す』をマーラーが眺めているわけである。
この物語も死期を目の前にした男の話なのでマーラーの姿と重なる、というケン・ラッセルの遊びなのだろう。
自分はマーラーさん自身は知らないのでこういう部分だけがぴんと来たわけなのだ。
その後の展開はマーラーの生涯及び音楽に詳しい人ほど面白いのであろうなあ。

監督:ケン・ラッセル 出演:ロバート・パウエル ジョージナ・ヘイル ジョージナ・ヘイル リー・モンタギュー リチャード・モーラント ロザリー・クラッチェリー ミリアム・カーリン
1974年イギリス


ラベル:音楽
posted by フェイユイ at 23:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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