映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年05月15日

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』ヴィム・ヴェンダース

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ bb.jpg
BUENA VISTA SOCIAL CLUB

昨晩観た『サルサ!』でキューバ熱に火がついて今夜はこれ『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』
無論『サルサ!』もこれをきっかけに作られているのだろう。波の荒い海岸べりの道や古いアメ車が平気で今走っている不思議な光景が印象的である。
自分はライ・クーダー氏自身をよく知らないでいるのだが(すみません)なによりもう引退同然で世界的には無名だったはずの年老いた彼らの音楽をこうして集め聞かせ、見せてくれたことには感謝せずにはいられない。
以前にも観て記事にも(『藍空』)書いていると思うが読み返してはいないので感想は重複していると思う。
特にまとまったストーリーというものはないこの映像作品にはライ・クーダーが忘れられてしまった存在のキューバの老音楽家達を丹念に呼び集め、友人の映画監督ヴィム・ヴェンダースにより撮影されたものである。
殆ど音楽活動をしていなかったはずの彼らはライの要求に嫌がることもなくあっさり演奏を再開している様子で彼らが心から音楽を愛していること、生きていることと音楽とが自然に結びついていることが伝わってくる。
この映像にはコンサートの場面から始まり、そんなかれら一人ひとりの語りとそれぞれの音楽が散りばめられるように収録されているだけなのだが、それでいてまったく退屈することがない。誰一人有名だとか知っているミュージシャンだとかいうのでもないのに。
無論この映画の中で彼らを知り、彼らを好きになってしまうはずなのである。
特にコンパイ・セグンドとピアニストのルベーン、歌手のイブライム・フェレールには参ってしまうのだ。
その音楽の素晴らしさは言葉で語られるわけもないのでまずは観て聞いてもらうより仕方ない。ライはフェレールをキューバのナット・キング・コールだと言う。私にはよく判らないが彼の歌声がスペイン語の巻き舌も相まって素晴らしく音楽的に響くことだけは判る。声の一つ一つが不思議な深みのある響きを持っているのだ。
とにかくキューバ音楽の明るく軽やかなのに重く湿った悲しげなこの音色というのはなんだろう。
なぜこうも懐かしく思ってしまうのか。なぜこうも心の中に入り込んでくるのだろうか。

音楽の美しさに加え、ヴェンダースの映像がさらに郷愁を誘うようなそんな趣がある。
冒頭の道路に打ち上げてくる波飛沫の海岸通りの場面は酷く印象的である。
小奇麗とは言いがたい狭い道と街並みを歩きながら歌う姿。昔あったクラブを尋ねると通りかかった人々が口々に教えてくれる。
冷蔵庫を運ぶ人たちに「手伝おうか」と気軽に声をかけるフェレール。

また美しい色彩の窓がある部屋での演奏や人気のない昼間のバーで話をする時、窓から風が吹き込んでカーテンが緩やかに舞い上がるのが涼しげである。
キューバ音楽には悲しげに響く情熱と心を吹き抜けていく涼しさがある。それは暑い国で暮らす人々を安らげるのだろう。

ルベーンの弾くピアノも今まで見て聞いてきたヨーロッパのものとは全く違う音である。
そしてパーカッション!なんて奇妙な不思議な叩き方なのか。パーカッションはうるさくせず極めて軽やかに聞かせないといけないようだ。

ああ、音楽的な言葉を全く持っていないのに判ったかのように書くのは至難である。
どうしたって音楽は言葉ではなく感じることなのだから。

フェレールは歌だけでなく話にも心惹かれる。子供の時に両親を亡くした彼の人生は容易いものではなかったはずだ。
それでも彼の歌声は素晴らしい。彼は母が信じていたという聖ラサロを信じていると言って部屋の壁にラサロを祭り、大好きなラム酒と蜂蜜を捧げ、出かけるときは香水を自分とラサロにふり掛けると言う。そんな信仰心がなぜかじんわりとしてしまうのだ。

フェレールが女性歌手と歌うラブソングがいい。彼らの歌はやはり恋の歌なのだ。
90歳代のコンパイ・セグンドは今なお恋愛現役で「女性と花とロマンス」がないと生きられないという色男である。かっこいい。
『サルサ!』にも描かれていたような恋の力が彼らの原動力なのだ(なんて書いてること自体がもう駄目だね)

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』夏が来ると聞きたくなってしまうものでもある。熱さの中に涼しい風を感じさせる、打ち揚げてくる波のようでもある。

監督:ヴィム・ヴェンダース 出演:イブライム・フェレール/ルベーン・ゴンザレス/コンパイ・セグンド/オマーラ・ポルトゥオンド/エリアデス・オチョア
1999年ドイツ、アメリカ合衆国、フランス、キューバ


ラベル:音楽
posted by フェイユイ at 23:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 中南米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『笑っていいとも!』DMCつながりで松ケンに?・・・はなかったです

『笑っていいとも!』昨日は「ロバート」が宮崎美子さんを呼んでいたのでこれは秋山竜次さんのDMCつながり、もしやその次は松ケンでは、と期待したのですが、違いましたねー(笑)

とはいえ、松ケンは宮崎ママに電報を送ってました。花でなく自分で言葉を選んだと思われる電報ってとこが松ケンらしい?
丁寧な長い電報で心がこもってました。
さすが役になりきってしまう彼はクラウザーになってるとこを宮崎ママに見られたくないと思っていた、というのがおかしい。
好きです、とか書いてて可愛かったですねー。

ポスターは漫画のままでしたが、8月公開ということで、今後どのように宣伝されていくのでしょうか?

ラベル:松山ケンイチ
posted by フェイユイ at 12:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 松山ケンイチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『サルサ!』ジョイス・シャルマン・ブニュエル

サルサ!.jpg
Salsa

映画を観てる間始終にやにやしっぱなし、そして合間に涙をこぼす、という芸当をやりつつ感動の嵐に吹き捲られた!

生粋のフランス人で白人のレミに深く感情移入して鑑賞。『ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ』を観て以来、キューバ音楽が最も好きな自分である。あの映画もキューバに魅せられた白人の映画だし。
クラシック音楽学校で素晴らしい成績を収め、将来を嘱望される若者レミは大切な審査(?)でその腕前を披露するが、突如演奏を止め、驚く皆の前でいきなりラテンミュージックを激しく弾きだすのだった。

栄光の未来を全て捨て、パリのキューバ人街に乗り込むレミはキューバ人の友達フェリペを訪ねる。
だが彼の答えは「ここに来る人間はキューバ人の男を求めてくる。白人のお前と組んだら“白雪姫と7人のキューバ人”だ」

移民である彼らの中には不法滞在の者もいる。白人社会の中で黒人である事は差別の対象でしかない。
だがその黒人であり、キューバ人であることに憧れてしまう白人(及び黄色人(私))もいるわけで。
ショパンを弾いては一流の彼もキューバ音楽とダンスにかけてはずぶの素人。特にダンスはフェリペの足元にも及ばない。
仕方なく髪と皮膚を黒く塗り、派手な服を着て、キューバ訛りを必死で覚え、生粋のフランス白人であることを捨て去ろうとするレミがおかしいやら悲しいやらで始終笑いっぱなしで時々その懸命さに涙が出てしまうのだった。
いやあ、白人の時は甘ったるい美少年だったのが色を黒くしたら、あら不思議、セクシーなラテンボーイに変身してしまうのだ。何故だか視線まで心にまで入り込んでくるような強い眼差しに変わってしまう。
無論この辺は映画ならではの演出なのだろうが、こんなに違っちゃうんだなあと感心しきり。確かに色黒キューバ人に変身後のほうが断然いかしているのだもん。

とにかく何とかしてキューバ人になりきろうとする優等生ピアニストのレミが愛おしくてしょうがなかった。
そして彼と恋仲になってしまうのがフランス白人女性ナタリー。職場ではフェリペの恋人である同僚(白人女性)から真面目すぎる、暗い、とばかり言われている彼女がひょんなことからサルサダンス教室でレミもといキューバ名・モンゴと知り合い、ダンスを踊るとこれが一体どういうことだ!物凄いセクシーなサルサを踊ってしまうのだ。
ナタリーにキューバ訛りのフランス語で話しながら深く愛してしまうレミ。知り合ったキューバ人の老人バレートから嘘を言ってはいけない、と忠告されながらもどうしても本当のことが言えない。

情熱的なサルサダンスと音楽に酔いしれながら、レミの奮闘振りとハンサム振りに見惚れ、ナタリーのフックリした唇の美貌と豊かな胸と激しいダンスにも見惚れ、ああ、やっぱりキューバ音楽はいいなあ、と堪能しつくしたひと時だった。『ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ』はDVD持ってるし、また観よう!
あの楽しく明るいのに涙が溢れるような悲しみが満ちている音楽はなんだろう。男はあくまでマッチョに女は男を誘うように、愛に溢れたダンスの衝撃的な美しさは。

ナタリーが何故サルサダンスが上手いのか。それはキューバ人男性を愛しながら結婚できなかった祖母の教えと実はその恋人がバレートで、ナタリーにはキューバ人の血が流れていたのだったという物語。
ついに会える恋人を前に年老いてしまった祖母が鏡を見てそれでも勇気を奮い起こし若い時のように上着を脱いでいく場面でまた涙が止まらなくなり。

今年度観たどの映画より好きかもしれない。
今回はこれかな。
最高だった。

最後の場面はまさに『ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ』の一場面を思い出させる。
監督があの映画に思いいれが強いことが伝わってくる。

監督:ジョイス・シャルマン・ブニュエル  出演:ヴァンサン・ルクール クリスティアンヌ・グゥ カトリーヌ・サミー エステバン・ソクラテス・コバス・プエンテ ロラン・ブランシュ ミシェル・オーモン アレクシ・バルデス オーロラ・バスヌエヴォ
1999年 / フランス/スペイン )


posted by フェイユイ at 00:48| Comment(6) | TrackBack(1) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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