映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年06月04日

『リアリズムの宿』山下敦弘

リアリズムの宿2.jpg

この原作がつげ義春だとは知らずに観てて(いつもの台詞だなあ)途中でそれだと感じた、などということはなく、後で知って「あー、そうかーなるほどー」とやっと思い知ったわけである。
つげ義春のこの作品は読んでなかったのでそんな次第だったのだが、確かにこの間の取り方や笑い方などはつげ義春の持ち味を感じさせる。

映画を観て笑う、というのは実際そうないものだがこの作品はほんとに何度も笑ってしまったのだった。
このブログに『放浪記』とつけるほどで放浪映画が好きな自分なのだが、この映画も放浪をする。ただし酷くみみっちい放浪で多分移動した距離はそう大したものではないはずだ。
それでもなおどうなるのかわからない、どこへたどり着くのか見当もつかない放浪なのである。

いちいち「そうだよなあ。そういう感じわかるなあ」などと感心してしまうのだが、ほんの顔見知り程度で見知らぬ田舎の宿を転々としていく二人の若者のどうにも情けない内容の話しぶりがおかしい。
旅の中味はまったく羨ましくないものなのだが、こういう何の意味もない時間を持つ、なんていうのをもう何十年もやってない自分には彼らの無為な旅が羨ましいのである。無駄にさえ思えるその会話も。

気詰まりな二人の関係がひとりの少女の唐突な出現によって途端に生き生きとした意味を含んだ道中に変わってしまう。
そしてまた少女の唐突な退場によって二人の間は落ち込んでいく。
上手くいかない苛立ちと諍いのうちに宿泊することになったのが普通の民家なのだが、恐怖に陥ることになってしまう。といってもとんでもないことではなく、いかにもありそうでそれでいて実際にそう状況になったらまさに恐怖である、というものなのだ。

『ユメ十夜』『リンダリンダリンダ』と観てきたが、これが一番面白かった。前の方ほど面白いのがちょっと気にはなるが^^;
明日は『松ヶ根乱射事件』を観る予定なのでそこで何か感じられそうで楽しみである。

監督:山下敦弘 出演:長塚圭史 山本浩司 尾野真千子 尾野真千子 多賀勝一 サニー・フランシス 山本剛史
2004年日本


ラベル:放浪
posted by フェイユイ at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『太陽』アレクサンドル・ソクーロフ

太陽.jpg
The Sun

いろんな意味で話題となった映画で観たいと思いつつもいざとなるとどうなのかなと変に尻込みしてしまっていたのだが、これは面白かったなあ。
こういう雰囲気の映画だとは思いそうでまったく思っていなかったのだった。

なんだかヨーロッパのちょっと幻想的ファンタジーかSF映画でも観てるかのような不思議な色彩と音の作品なのである。
日本人であるためにファンタジーとは思えずに「事実と違うのではないか。似てるのか似てないのか」などとつい現実として観てしまうのは仕方ないのだが、これが異国の物語としての鑑賞ならなんとも風変わりで愛嬌のある小柄なおじさんが「エンペラー」であることに微笑ましく思い、戦争に負けて己の生命がどうなるかという瀬戸際に蟹の研究をしていたり、映画俳優の写真を眺めたりしてる様子を面白がったり、怖ろしいはずの戦勝国の将軍相手との対談が中断した折にダンスをしたり蝋燭を消して遊んでいたり、とまるで子供のような姿に見入ってしまうことだろう。
いや日本人である自分だが結局天皇が敗戦のあの時にどのようなことを考え、どう過ごされていたのかは知る由もなく。ただ外国人であるソクーロフ氏が感じた天皇と日本というものはこういうものかと受け取り、彼のヒロヒト天皇への愛情を見てしまう。
 
それにしても中国においての神もしくは龍の子孫であった清の末代皇帝・溥儀が激烈な教育の下で普通の人になった経緯と比べると日本の天皇の人間宣言の緩やかなことか。但し、最後にその為に青年が自決したことを聞き、またもや天皇は苦悩する。だがその苦悩を振り払うようにヒロヒトは皇后に手を引かれて子供達に会いに急ぐのだ。

もっと強い反感を持つのか、途方にくれる思いにさせられるか、と思っていたのだが非常に楽しく観ることができた。
ヨーロッパ・ロシアの人が撮るとやはりそういう雰囲気になるのが面白い。影のある重い色彩がロシア・ヨーロッパらしい暗さであるのが興味深かった。日本人ならもっと白っぽいぺたんとした絵柄になると思うのだが、あの薄暗い廊下や部屋のライティングも影がきつくて重厚なのである。
ヒロヒト天皇と皇后がとても深く愛し合っておられるように描かれているのが微笑ましい。皇后が「あなたは普通の人かしら」神でしょう、と言いながらもまるで子供を抱くように抱かれるのが他の誰も見ていない場面だけに本当らしくて可愛らしかった。
神と呼ばれた人間が人間に戻るまでのひと時を童話のように描いた作品だった。

監督:アレクサンドル・ソクーロフ 出演:イッセー尾形 ロバート・ドーソン 佐野史郎 桃井かおり つじしんめい 田村泰次郎
2005年 / ロシア/イタリア/フランス/スイス
ラベル:戦争 歴史
posted by フェイユイ at 00:32| Comment(2) | TrackBack(1) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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