
久し振りに観た。歯切れのいい展開、台詞回し。窪塚洋介がびんびんにかっこよかった頃だなあ。
在日朝鮮人である主人公・杉原の日本人少女とのラブ・ストーリー。脚本も演出も申し分ない出来栄えの楽しい映画なのだ。「これは僕の恋愛に関する物語だ」と主人公が何度も念を押すのだが、実際に面白いのは彼女との恋愛部分より、父ちゃん母ちゃんのアツアツぶりだとか、喧嘩早い主人公の親友が学校一の秀才で杉原に落語からシェイクスピアまで教えてくれるとこだとか、何と言ってもボクサー親父との喧嘩シーンは印象的なのである。このシーンが凄くよかったので私はこの行定監督と言う人はアクションが得意な人なのかと思っていたのだが、特にそういうわけでもないようで逆にびっくり。凄くかっこいい殴り合いだと思う。
日本人少女とのラブ・ストーリーは、一風変わったところのある美少女に杉原が惹かれていき、とてもうまくいってたのに「僕は日本人じゃない。国籍が韓国なんだ」と打ち明けたところで突然彼女の態度が変わって別れてしまい、半年後彼女からの電話で再会し、再び打ち解ける。というところで終わっている。
ラストシーンでいつも巧く飛び越えていた門の柵を杉原が飛び越え損ねて転んじゃうのが何とはなしに未来を予感させもするし、彼女の父親の中国・朝鮮韓国人への差別意識を聞かされた以上、困難は絶対やってくるのだろうな、と判っている。
それらをもうしっかり認識した上で少年と少女は雪の夜を笑いながら進んでいく、うまいラストなんだよね。
とにかく彼女との恋愛物語なのだが、杉原=クルパーと親父の関係、そして秀才の友人・ジョンイルとのつながりに惹かれてしまう作品なのである。作品の冒頭にも出てくるのだがクルパーがジョンイルから借りたシェイクスピアの一節「薔薇の名前が変わってもその香りは同じ」という言葉はぐっときてしまう。
さてさて新井浩文はこれが映画デビュー作のようだ。杉原が日本人の高校へ行く以前、同じ朝鮮人学校にいた。短髪で喧嘩早い奴なのだ。
その後の彼のイメージの原型みたいな感じだろうか。
それほど印象的な場面はないのだが、朝鮮語を話しているのを観れたのがよかったかなー。
それにしても新井さんの作品はデビュー作からしてスゲエ面白い映画なわけでなんだかそういうとこでも感心してしまう。
監督:行定勲 出演:窪塚洋介 柴咲コウ 大竹しのぶ 山崎努 山本太郎 キム・ミン 新井浩文 細山田隆人 村田充 大杉漣 塩見三省 萩原聖人
2001年日本