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2008年07月05日

『アイデン&ティティ』田口トモロヲ

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こんなに共感できる映画もない、と感じてしまった。まてよ、私はさほどロックにはまったわけでもないし、バンドをやってたわけでもおまけに男でもないのだが。その上ボブ・ディランのことは殆ど知らない。
それでもこの映画の主人公アイデン=中島と共鳴しつつ観てしまったのだった。

無論いわゆるロック世代に生存していたということはあるのだろうなあ。今の若者とは違うのかもしれない。
ロックという言葉が反逆を意味していた。ロックという音楽に自由を求め、そこに何か人生の答えがあるのではないかと感じていた世代。
そのくせイカ天だって見てたのさ。
原作者のみうらじゅんさんが「大島渚」で出てたのだって見た。申し訳ないことに内容は覚えてないけど(ほんとすみません)

だからアイデン=中島の熱さは昔っぽいし恋人ティティは70年代の女性みたいなしゃべり方だ。
そういう世界にいたわけでもないがそれでもそういう世界に憧れていた若い頃を思い出さずにはいられない。ロックが世界を変えることがあるのかもしれないとぼんやりと思っていた頃の。

最初から終わりまでもうなんだか切ない気持ちで見続けた。アイデンが苦しみながら悩みながらも自分を失わないで生きてくれたことが嬉しかった。そしてすっかりアイデンになってしまった私はティティがホントに綺麗に見えて彼女なしでは生きていけないような気持ちになってしまったよ。もし自分がほんとに男だったらその外見も含めて彼女に恋するだろうなあ。女としては憧れてしまう。危険な可能性も持ったマザーというのが凄い。
反面、実際には彼女みたいな女性が側にいてくれることなんてそうそうないだろう。迷い続けるアイデン中島は彼女と彼にしか見えないボブ・ディラン(アイデン命名)の助言でなんとか危うく自我(つまりアイデンティティ)を保っているわけで。ここまで支えがないとアイデンティティを持ち続けることは難しいんだ。てことは殆ど不可能ってわけですな。苦しいね。

アイデンティティを見失ってしまいそうになるアイデンにティティはいう「君が君でいる限り私は君が好きだよ」
凄く優しい言葉であると同時に凄く厳しい言葉じゃないか。

アイデンを演じている峯田 和伸はどことなくみうらじゅんを彷彿としなくもないし自身がミュージシャンということで演奏が違和感なく観れるというだけでなくこの映画の主役として素晴らしい存在感なのではないだろうか。こんないい役者をどうして見たことがないんだろうと思ってしまった。
ティティ役の麻生久美子さんは文句なしに女神様です。出来すぎとは判ってもやっぱり憧れます。男になったとしても女としても。
彼女が一番ロックですわ。
ジョニーの中村獅童。がはは。おかしい。いつも破壊的な彼のほうがまだ体面を気にする常識者なの、中島に比べると。
でももう滅茶苦茶になるのかと思ってたらあのバンドが好きなんだとか言うのが泣けた。ん、でも復活するのかな、ジョニーって。
そしてそして目的の大森南朋さんが、くーかっこいい!!無口なベーシストなの!背が高くて脚長くて腕が逞しいからもう素敵で素敵で。でも「俺馬鹿だから」ただバンドと中島についていくっていうのがまたおかしい。無口なのは馬鹿だったからなのね。くくく。でもすてきなのだ。
彼も外されそうになったのに何故かずっとくっついていたからほっとしたあ。
社長の岸辺シロー、居酒屋親父の三上寛、なぜかチョイ役ウェイターに浅野忠信(なぜなぜ)中島のお母さんのあき竹城、お父さんが塩見三省なのも愉快(こんな似た夫婦って。しかもアイデン似てないし)

アイデンのティティへの一途な愛は心打たれるのに、そこは悲しい男の性、ライブ後にファンの女の子とつい寝てしまうのだ。
ティティにはもうお見通しで泣きながら謝るアイデンの場面でもつい共感。ふつうこういう話って女性的にじゃ強烈に反感もってしまうのになんでこの作品ではアイデンに共感してんだろ。その後でも風俗行ってしまうしね、あーあ、アイデンって。
この映画って悩み苦しんでるんだけどホントは凄く甘い話なの。彼女のこともそうだし、仲間とも喧嘩別れはしないしね。駄目になっても駄目になってもそれなりに自分の道を見つけて愛する人たちを手放さない、甘い話なんだよね。でもそれでいいんだ。そうあって欲しいんだもん。
それはアイデンが言ってたように中産階級に生まれ不幸を知らないで育ったのが不幸というような人間だからかもしれないけど。

幾つかロック映画も観たけどさ、好きなのもあったけど、この映画はほんとに自分を振り返ることができた作品だった。
まとめるなーとか言われそうだけど(笑)

でもティティってアイデンの心の中だけに存在する女性なのかな、とも思ったの。だってあんまり他の登場人物との絡みがないでしょ。でも話題に上ってくるから実在はするのかなー。
ボブ・ディランとティティは二人ともアイデンのアイデンティティを存続させる為の心の現象なのかな、とも思ったのだった。

監督:田口トモロヲ (っていうのもびっくり) 脚本:宮藤官九郎 原作:みうらじゅん 出演:峯田和伸 麻生久美子 中村獅童 大森南朋 マギー(ジョビジョバ) コタニキンヤ 岸部四郎(岸部シロー)
2003年日本

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posted by フェイユイ at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 大森南朋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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