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2008年12月24日

『妖婆の家』セス・ホルト

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The Nanny

イギリス上流階級の裕福な家庭で小さな女の子が死んでしまった。
こちらもまだ幼い少年である兄に殺害の容疑がかけられ彼は施設にいれられてしまう。

物語は彼が家に戻る所から始まる。
生意気な口をきく少年はばあやを酷く嫌っている。ばあやが妹を殺したのに自分に罪を擦り付けたと言うのだ。
いかにも上流階級らしい夫婦はばあやを信頼しきっている。この家族のために献身的につくすばあや。
だが、ばあやへの少年の態度は断固として変わらず徹底的に忌み嫌う。そして仲良くなった上階の少女にばあやの犯罪を打ち明ける。
果たして少年の言い分が正しいのか、それともすべては少年の嘘なのだろうか。

という懐疑で続く90分である。少年の言動がいちいち憎たらしくこの子の虚言なのかな、とも思えるので一体どちらに転ぶのか第3の人物が出てくるのか最後までどれとも取れる気もするのだが。
ばあやがしっぽを出さないのは彼女の言動も決して嘘ではないからで献身的に一家に尽くしているばあやだからなのだ。
事件のあった日、彼女は激しい衝撃を受ける事実を知ってしまったのだ。
懸命に他人の家族に尽くしている間、我が娘が堕胎手術に失敗し死んでしまったのだ。
貧民街の汚い建物の一室で死んだ娘。25年間娘に会うこともなかった、という台詞で彼女のこれまでの人生が垣間見える。
仕事中に抜け出して娘の死を見届けに行き、帰宅した時に雇い主の小さなお譲ちゃんが湯船に落ちているのを気づかずお湯を入れてしまった。
ばあやは一時に二人の愛する娘を失い、精神に異常をきたしてしまったのだろうか。
一家を世話することに生き甲斐を感じるあまりにそこから引き離されてしまうことに恐怖を感じてしまった。
ばあやは嘘を言ったのではなく。そうだと思いこんでしまったのかもしれない。

イギリスの階級制度が生み出した犯罪とも言えるとても面白い作品だった。
美人女優ベティ・デイビスが年を取ってからだとは言え、けなげだがどこかおかしくなっているばあやという存在を演じていて恐ろしさを感じさせる。献身的過ぎてその目にはおかしくなったものが感じられるのだ。
すっかり騙されているお上品な夫婦とか心臓が弱い叔母さんとかもばあやの怖さを出すのに適した登場人物だ。
少年ジョーイの相談相手になる上階の少女がとても可愛らしくてすべてが疑わしい物語をちょっとほっとさせる。
殆どが一軒の家の中だけで進行するのだが、こういうのがイギリス作品はホントに面白い。

ところで原題は『The Nanny』でこれはイギリスでよく登場する子守であり子供の教育をするばあやのことでまさしくそのままなのだが、邦題の『妖婆の家』って。
これじゃもう結末をばらしているのと同じだし、ナニィのことを妖婆って呼ぶなんて。
『優しいばあや』っていうタイトルだからこそ謎が深まるのに最初から『妖しい婆さん』じゃなあ。
困ったもんだ。

監督: セス・ホルト 出演:ベティ・デイビス ジル・ベネット ウェンディ・クレイグ ウィリアム・ディックス パメラ・フランクリン
1965年 / イギリス


posted by フェイユイ at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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