映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年12月28日

『疑惑の影』アルフレッド・ヒッチコック

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SHADOW OF A DOUBT

物凄く古い映画で画像も音も悪いのは確かだが、とにかく面白いのだった。

ヒロインが「平凡で退屈な毎日。ママも素敵な人なのに毎日同じことの繰り返し。つまらない」とぼやいているとそこからとんでもない日々が始まってしまう、というお話。映画や小説で波乱が起こるのは楽しいが実生活では平凡が一番、という教訓でしょうか。
アメリカ小都市の裕福な家庭にニューヨークに住むハンサムなチャーリー叔父さんが訪ねてきた。
長女チャーリーは若くてハンサムなチャーリー叔父さんが大好きで同じ名前の双子だと言って自慢している。
ところが憧れのチャーリー叔父さんは滞在する間に少しずつ奇妙な言動をするようになる。
初めは冗談で「叔父さんの秘密を知ってみせるわ」と言っていたチャーリーは時折見せる叔父の不可解な態度に疑問を感じ始める。
ニューヨークで起きた未亡人殺人事件と叔父は関係があるのだろうか。

残虐な殺人現場などはなしに二人のチャーリーの会話から怖ろしい現実が見え始める。
平凡で退屈なはずの日常があっという間に変わってしまった。
どこまでも弟を信じている母親を悲しませたくない思いでチャーリーの心は動揺する。
見るからに頼もしくて都会的な紳士然としたジョセフ・コットンが怖ろしい犯罪を隠しているという事実。自分以外の誰もが彼を信頼しきっている。
叔父チャーリーと姪チャーリーの駆け引きも面白いのだが家族それぞれのキャラクターが楽しい。
いかにも良妻賢母だがちょっと気づかな過ぎのお母さん、と義弟に比べるとちょっとかっこ悪げなお父さん。真面目な銀行員で、ミステリー好きの友達と殺人事件について語り合うのが唯一の趣味でストレス解消になっている。食事中にも毒キノコについて話あっているので娘チャーリーを苛立たせてしまう。
チャーリーの妹アン。物凄い本の虫でいつも生意気な発言をするのが可愛い。
そしてまだなにもわかってない男の子らしい男の子の弟くん。
ミステリー友達のパパをしょっちゅう訪ねてくるオタク風の友達。どうやらチャーリーが好きみたいだけど何も言えないでいる様子。

叔父チャーリーの捜査する為、一家に近づいてくる刑事が2枚目なせいで姪のチャーリーと恋仲になってしまうのには驚いたけど。結局この刑事さん、何の役にも立ってないし。

育ちがよくて健康的で真面目そうなチャーリーは世の中が平凡でつまらない、とふてくされている。そこへ犯罪者の叔父チャーリーが登場して「君は何も知らない。世の中は腐りきっているんだ」と言い、清純なチャーリーを驚かせ戸惑わせる。
叔父に連れられて入った酒場にはチャーリーの同級生らしき少女が働いていて「あなたがこんな所にくるなんて」と言う。
チャーリーは突然今まで知らなかった世界と感情をいっぺんに味わうことになっていく。

言葉でああだこうだと説明をしている作品ではないのだがチャーリーが明らかに変化し成長していくのがわかるようだ。
始めのころは突然の出来事に動揺しどう対応していいか判らず叔父から脅迫されるチャーリーが最後に叔父が窃盗した指輪を黙って指にはめることで逆に叔父を追い詰める。
このことで立場が逆転した叔父チャーリーは町を出て行かざるを得なくなる。
そして命懸けの事件の後、叔父チャーリーは皆の記憶には「いい人」として残ることになる。
最後まで母親を守ったチャーリーなのである。

こんなに映像が雑でも夢中で観させてしまう。この前の『レベッカ』は自分にとって原作の印象が強烈だったのでやや評価しづらかったが(それでも大変面白く観れたのは確か)これはもう本当に楽しめるサスペンスミステリーだった。

監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:ジョセフ・コットン テレサ・ライト ヘンリー・トラバース マクドナルド・ケリー パトリシア・コリンジ
1943年アメリカ


posted by フェイユイ at 23:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『バスカヴィルの獣犬』デヴィッド・アットウッド

バスカヴィル.jpg
The Hound of the Baskervilles

シャーロック・ホームズの世界が好きな者には堪らない作品だ。
ホームズの作品の魅力というのは何と言ってもイギリスの都会と田舎の情景がありありと浮かんでくるところなのだが、『バスカヴィル家の獣犬』ではダートムアというまさに荒野という言葉がぴったりの風景が広がっている。
登場人物ステープルトンが素晴らしい土地だと褒めているのだがこうして映像として眺めているだけでも荒涼とした岩場かずぶずぶとした沼地がどこまでも広がり季節が冬(ちょうどクリスマス)ということもあって寒々とした凍りつくような風が唸ってしとど冷たい雨が降りそぼっている、という光景である。こんな陰鬱な誰もいない土地を遺産としてもらってもあまりうれしくない気もするがミステリーの舞台としては申し分ない。
伯父チャールズ卿が不慮の死を遂げ、甥のヘンリー卿が遺産を受け継ぐ為、ダートムアを訪れる。
故チャールズ卿の遺言執行者モーティマー医師はヘンリーを守って欲しいとホームズに依頼をするのだった。

ダートムアの荒野に響く獣の唸り声はかつてバスカヴィル家の領主だったヒューゴーという気性の荒い男が妻の不倫に怒り(この辺、原作と違うのだが)沼地に逃げた妻を殺害する。その時妻が大事に飼っていた大きな犬がヒューゴーにとびかかりその犬も殺される。そして今でもその犬の悪霊が沼地を彷徨い遠吠えをしているのだという。
なんとも怖ろしい伝説で沼沢地の気味悪さをさらに深める。
そしてまたその荒野で発掘をしている博物学者のステープルトンとその妹が登場する。この妹が黒髪の素晴らしい美女でヘンリーはたちまち彼女に惹かれてしまう。

原作とは少しずつ設定も語り口も違うのだがこのドラマはドラマとして非常に雰囲気のある作品になっている。
原作ではいつもワトソンがホームズに首ったけな感じなのであるが、ドラマではワトソンの活躍が目立っていて、彼に秘密を持ったいたホームズにワトソンがふてくされるシーンがあり、またホームズの危機をワトソンが救うという話になっている。その上、最後はホームズがワトソンの機嫌をとるという考えられないおかしな締めになっている。
ホームズ役のリチャード・ロクスバーグはイメージするホームズにしては顔が長くないように思えるのだがなかなか彼らしい雰囲気を出していたようだ。
お気に入りの少年カートライト君は出てこなかったが時々味わうという「薬」を自分に注射するシーンはあって今の時代ではびっくりする人もいるだろうに、と心配してしまう。

今更ここに書くのもなんだけど、『バスカヴィル家』の名前を見ていて昔、あっとなったものだ。
バスカヴィル家の3兄弟の名前はチャールズ、ヘンリー、ロジャーなのだが、この名前でおっと思った人は萩尾望都の『ポーの一族』を読んでいる人だ。
エドガーとアランとポーというのは無論エドガー・アラン・ポーから取られた名前だが、『ポーの一族』の中で何度となく登場する兄弟名がこの3つの名前になっている。
そして『バスカヴィル』で交霊術が行われるがその場面はまさに『ポーの一族』の『ホームズの帽子』で行われる場面を思い起こさせる。
この名前のつけ方、なんてうまいんだろう、と感心したものである。

監督:デヴィッド・アットウッド 出演:イアン・ハート リチャード・ロクスバーグ リチャード・E・グラント マット・デイ ジョン ネトルズ ネーヴ・マッキントッシュ
2002年イギリス

posted by フェイユイ at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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