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2009年03月01日

『ザ・フォール/落下の王国』ターセム

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The Fall

これは凄く上手い映画だなあ、と感心しながら観てしまう。
大体ちょっとブスくれた女の子(わーごめんなさい、単純な美少女ではない、ということなんだけど)が語り手となっている作品は殆ど面白いのではないかと思い込んでいるところがあるのだが、これは語り手ではなく聞き手だが病院の一室で傷心の車椅子の青年が腕を骨折した5歳の少女にお話をしてあげる、という形式で作られていて要するに男の作り話なのでどんな不思議世界になったとしてもそれは許される、というわけで色んな国々のイメージが交錯した冒険ファンタジーとして映像化されていくのである。

なんだかね、これを観てると少女時代、手当たり次第に色んな外国の小説を読んでは空想の世界に浸りこんでしまっていたのを思い出してしまう。
いわばこの物語は子供が考えてしまいそうな考証めちゃめちゃな世界観をあえて作りたくてこういう風に女の子に語って聞かせるという方法をとったのではないだろうかと。現実とファンタジーが微妙に入り混じってしまうのも子供らしいことなわけで。

ブスくれた、なんて失礼なことを言ってしまったが、ちょっと太めなだけでとても可愛いアレクサンドリアちゃん。
みかん畑で収穫の手伝いをしていて落下し腕を骨折して入院。
同じ病院に入院していたスタントマンのロイは落下するスタントで大怪我をしている。それだけでなく失恋にも苦しむロイは自殺する為無邪気なアレクサンドリアにモルヒネの壜を盗んできてもらおうと作り話を聞かせて喜ばせるのだった。
『アラビアンナイト』では「面白い話を聞かせなければ殺す」だがこれは「面白い話を聞かせて自殺する」という変てこな設定である。
ともあれ優しいお兄さん(ファンタジーの中でお父さんになってしまうが)のわくわくする冒険物語を楽しみにして「退院すると会えないから寂しい」なんてじんとする台詞を言ってくれるアレクサンドリアを騙す為にロイは話し続けるのだった。

世界各地の信じられないほど美しい遺跡風景を舞台にして絢爛豪華なファンタジーが繰り広げられる。とにかく口からでまかせだと最初から言ってるんだからどんな奇想天外な展開にしても滅茶苦茶な設定でもいいのである。
現実に側にいる人々がファンタジーの中では謎の人物やお姫様になる。アレクサンドリアも途中からお話の中に入ってしまう。子供なら(大人だって)わくわくせずにはいられない話ではないか。
突然中国風ファッションのお姫様が登場し、まるで張芸謀の『英雄』みたいに矢が飛んできたり、カンフーチックなアクションがあったりと大いに楽しませてくれる。
マーカス・ウェズリーの肉体もこういう物語には不可欠ですな。

ロイの作り話と辛い現実もまた交錯していく。薬中毒になったロイは死ぬことしか考えられず、登場人物を次々と死なせ、アレクサンドリアを悲しませる。
最後にロイ自身が投影されている山賊が殺されようとした時、アレクサンドリアの「死なせないで」という願いと涙でロイは自殺しようとすることをやめる。この場面はもう泣けて泣けて「あーよかったよー」という感じでありました。

その後、無論二人は退院して別々になってしまうのだが、それまで映画を観たことのなかったアレクサンドリアは映画を観て色んな作品にロイが出演していると知る。と言っても彼女が観た映画ははっきりと違う人(バスター・キートンだったり)してるのでこれはアレクサンドリアの勘違いなのかもしれない。
でもきっとロイが映画の中で活躍している姿をアレクサンドリアは観たに違いないのだ。きっと立ち直ってどんどん飛び落ちるロイの姿が彼女には見えるのだろう。
「ありがとうありがとう」という最後の台詞も実に効いてるし、これは上手い映画だったなあ。

監督:ターセム 出演:リー・ペイス カティンカ・ウンタルー ジャスティン・ワデル ダニエル・カルタジローン レオ・ビル カティンカ・アンタルー
2006年インド・イギリス・アメリカ


ラベル:ファンタジー
posted by フェイユイ at 21:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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