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2009年03月03日

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』押井守

The Sky Crawlers.jpg

戦争を肯定するかのような台詞があり、戦闘機に乗り込む兵士たちがいずれもハイティーンほどの子供達であるということも含めてやや不評気味のアニメーションだが、何故か非常に観たくなってしまい、相当ぶりに日本のアニメ映画をマジで観ることになった。

などと言っても自分は元々はアニメしか観ないというくらいのアニメ人間であったのだが、ガンダム1代目が終わり、宮崎駿が単一で目立ちだした頃から離れていったものだ(一体いつのことだか^^;)
そういう人間にとってはこのアニメはある一つの疑問の答えを出してくれたような感慨深いものがあった。
大体戦争ばかり繰り返しやっているアニメ、戦士もしくは兵士が子供であるアニメ、というのは殆ど目新しいものじゃあなくそれどころか私が子供の時からアニメと言うのは「地球を守る為に常に戦い続ける」のであって命を懸けて戦う主人公はいつも子供であった。
アメリカのマンガは『スーパーマン』だとか『バットマン』だとか太々とした「大人の男」であって少女の目からは気持ちの悪い存在にしか見えなかった。それに比べ日本アニメのヒーローは常にほっそりとりりしい少年なのであってまだ幼いと言っていい彼らが命をかけて怖ろしい敵と戦う姿を食い入るように観たものだ。若い仲間達が死んでしまってもそれは地球を守る為なのだから「潔い戦死」として子供心に納得していたわけである。それは『マジンガーZ』であり『ガッチャマン』でありその他多くのそういう戦う少年ヒーローたちである。時は移り『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』と続いても状況は同じであった。
そして自分がもう観なくなった昨今でも『エヴァンゲリオン』などという作品もまったく同じなのである。
子供の時は疑問でもなかったそういう状況がさすがにこの年齢になってくると「はあ、なんで子供ばっかりで戦争ごっこやってるわけ?」という目で件のアニメに侮蔑の眼差しを送ることになってしまうのだ。
ではこのアニメ映画はどうなのか、というと見事にその辺を暴き出してくれたのであった。
「私たちは永遠に子供で永遠に戦い続けなければならないの。それを止めるには死ぬしかない」
これは日本アニメで永遠に繰り返される子供戦士たちの悲痛な声じゃないか。(←いや笑ってるんですが)
ワカメちゃんは永遠に子供だが近寄って見ると小じわがある、という小話である。
一体何故日本のアニメの戦士は子供なのか、馬鹿な女にうつつを抜かしているデブいスーパーマンなど見たくないからである。つるりとした丸い頬の細い足首の少年少女が戦士でなければ「萌え」ないのである。
さらに少女戦士は言う「私たちは生まれた時からこの姿で本当は子供時代もないのでは」
そしてこの作品の中で年老いた少女である草薙は繰り返される戦争の中の永遠の少年兵士である反逆として煙草を吸い、酒を飲み、少年をセックスに誘い、子供を産んでいる。
今までの「永遠の少年少女ヒーロー」像としてはあってはならない反抗なのではないだろうか。
何故日本のアニメ(だけではなく他の分野でもそうだが)では子供が命懸けで戦わなければならないのか。他の国では「大人の男、大人の女」であるのに。
たとえそう反論されてもその伝統は続いていくんだろうと思う。永遠に彼らは子供であり戦い続けるのだ。「それを観たいから」
この作品の中で「私たちに戦争をさせ続けることで彼らは安心できるの」と言われている「彼ら」は日本のアニメおたく(最近は外国おたくもみたいだが)のことじゃないか。

「キルドレ」の永遠のライバルである敵のエースが「大人の男」だというのは面白い。しかもティーチャだというのがおかしい。

『エヴァンゲリオン』あたりで大いに不満を感じむずむずとした疑問がしこりとなっていたものがこの作品でやっと解けてほっとした感がある。
この作品、実際の戦争と重ねて考えるより今までの日本のアニメの解答として極めて明快に表現してくれている面白い作品だった。
ラストのラスト、やっぱり永遠に続くのだね。

背景がリアルでも人物は日本のアニメらしいマンガの絵である。頬のこけたアメコミでは嫌だからである。
あくまで可愛いマンガの絵でなければアニメじゃないのだ。(←アニメおたくとしてはそういうことでしょう)

ところでこの作品、あの『エヴァンゲリオン』をよく知らないのでなんとなくだが意識して対抗しているような気がするのだがどうだろう。
あの作品が酷く嫌いな自分としては『スカイクロラ』には非常に頷いてしまったのだった。

アニメ論だけで終わってしまって本作の感想を書いていないようだ。
はっきりとした設定説明をしないぼんやりとした物語であることやどこの国かわからないやや廃れた街のような雰囲気がとてもいい。
昔のアニメで満足していた私にはやや描きすぎくらいの感じがするが技術の高さには感心してしまう。
キャラクターも媚びてなくて適度に可愛らしさがあって文句の付け所はないキがする。
こんなに面白いならまたアニメ世界に戻ろうかな、と思ったほどだが、なかなかここまで凄い作品はないだろうな。

監督:押井守


posted by フェイユイ at 23:12| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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