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2009年03月09日

『ベジャール、バレエ、リュミエール』マルセル・シューバッハ

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B comme Bejart

バレエのドキュメンタリーを幾つか観て来たが、これもやはりダンサーたちの美しさに見惚れてしまうばかり。
練習風景が主なので舞台自体を観たい向きには不満かもしれないが、私はこの練習風景というのを観るのが凄く好きだ。もしかしたらバレエそのものよりこういう練習している彼らを見るのが好きなのかもしれない。
練習風景でのダンサーたちは男女ともまだ化粧もなく衣装もなく素顔で簡単な練習着だけなので却って美しい肉体を素で見ることができるし、作品を生み出そうとして振付師と汗を流しながら苦悩している様子は緊張感がある。
練習着もそれぞれの個性もあるしさっと髪を束ねたりしているのが衣装以上に素敵なのだ。懸命に動きを掴もうと何度もダンスを繰り返している仲間をじっと見つめている周りの若者達のポーズもなんだかかっこいいのである。

ベジャールといえばやはり『ボレロ』である。
この作品は『リュミエール』という新作のドキュメンタリーなのだが冒頭ではやはり『ボレロ』の音楽が流れてきたので素人としては嬉しくなってしまった。通の人ならまたかというところだろうが。
なにしろ殆どバレエ生鑑賞の経験がない私の数少ない鑑賞の一つが若い頃観た『ボレロ』だったのである(前にも書いたかもしれないが)
無論それはあの『愛と哀しみのボレロ』を観たからであり、ベジャールというよりジョルグ・ドンに参った私は貧しい財布からなけなしの金を出して天井に届くくらい高くて墜落するんじゃないかというような席のチケットを手に入れて観にいったのだった。
あの激しく心を揺さぶるベジャールの『ボレロ』は今でも比べることのできない踊りだろう。
私のような素人にはベジャールのバレエといえば『ボレロ』のような激しいものを観るのかと思っていたのだが、このDVDに収められた『リュミエール』はそれとはまったく違う明るい軽やかなものだった。

本作の中でベジャール氏が「私は創造者ではない。創造というのは無から有を作るが私は有から有を作るだけだ。私はいわば産婆のようなものでダンサーが踊りを生み出す手助けをしているだけだ」と言うのだが、私には無から生み出しているとしか思えない。
勿論、優れたダンサーとの共同作業だからこそできるのだということはわかる。ベジャールがこう、と言えば彼らはまだ難しい顔をしながらも信じられないほどの動きを見せる。
とはいえ、私には何もそこになく(つまり脚本だとか、マニュアルだとかがあるのでもないのに)まだ存在しない踊りを作り出していくベジャールとそれをさらに美しく見せるダンサーという奇跡のような作業は創造と言っても間違いではないだろう。

ある時は怒りながら(こちらの方が多そうだが)ある時は笑顔で次々と魔法のような踊りを作り出していく。
ベジャールの『リュミエール』は映画の創始者と言われるリュミエール兄弟を描いた舞台で「光」がテーマとなっている。
ベジャール氏は大好きな映画と最も大切な光というテーマを交わらせてバレエにしていくのである。
旧約聖書で第1日目に神によって作られたのが「光」であり太陽や星や月は後から作られたというのがベジャールにイマジネーションを与えているようだ。「光」というのは様々な意味があるのだ。

一体どうなるのだろうと思えたバレエを生み出す仕事もベジャールと言う優れた振付師と卓越したダンサーたちによって完成されていく。
ダンサーたちも様々な人種がいて皆美しい。私も名前を知っている小林十市さんのハンサムな顔も観れてうれしかった。
 
監督:マルセル・シューバッハ 出演:モーリス・ベジャール ジル・ロマン エリザベット・ロス 小林十市 クリスティーヌ・ブラン ジュリアン・ファヴロー オクタヴィオ・スタンリー
2002年 / スイス


ラベル:バレエ
posted by フェイユイ at 23:04| Comment(2) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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