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2009年03月24日

『情愛と友情』ジュリアン・ジャロルド

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BRIDESHEAD REVISITED

「僕はあの夏、美しい青年に愛された」の美しい青年はベン・ウィショーのほうだったのね。

お世辞にもベンは「美しい青年」ではないと思う。明らかに変な顔だし痩せっぽちすぎてややキモい。私が肉太体型が好きなので余計そう思うのかもしれないけど小柄で痩せ型でかなりファンキーな感じである(と書いてしまってファンクの意味を見たら「怯える」「逃げようとする」「鬱」「臆病」だって。この映画のセバスチャンにぴったりじゃないか)と思うのだが何故か物凄く惹かれるのである。嫌だ嫌だと思いながら目が離せない顔なのだ。
眉は太くて八の字になってるし頬はげっそりとして皮膚が爬虫類みたいだし、首も肩も華奢というより肉がなくて頼りない。目がぎょろりとして鼻ばかりでかいしそういった造作だけではなくなんだか全体から滲み出るものが気色悪いのだ。
この映画ではさらにゲイであり、オネエ的な仕草が加わり、「オゾッ」とする感じがいや増しているのだからもう堪んないのである。
そして私としてはそういうベンが好きだったしこの映画でまたさらにぞっこんになってしまった。
今までの彼の観れる映画は観てきたが大出世作の『パヒューム』は無論のこと、どれをとっても変人な役だ。
本作でもその変人さはしっかり発揮されていて熊のぬいぐるみを抱いて登場する。とはいえそのぬいぐるみは途中でどこやら行ってしまうのでライナスの毛布のような存在ではなかったらしい。且つ惜しむらくは彼は主役マシュー・グード演じるチャールズ・ライダーの回想の人物でその関係は一時期におけるものなので後半次第に消えていってしまうのだった。
とはいえ主人公チャールズ・ライダーの回想という物語の中でベン演じるセバスチャンが最も美しい存在として存在するわけである。
イギリスの貴族であり敬虔なカソリック家族であるフライト家の次男セバスチャンは家族の中で最も威力を持つ母親の支配から逃れようと苦しんでいた。
セバスチャンは自由なチャールズを気に入り二人の友情は次第に深いものになっていく。ある日セバスチャンがチャールズを家に招いたことでチャールズは彼の母、妹、兄と知り合う。そのことが無神論者に近いチャールズとカソリック家族との長い軋轢の始まりとなった。
チャールズは裕福でもなく熱心ではない普通の英国国教会の人間なのでフライト家、特にセバスチャンの母親からは軽侮される身である。
チャールズはセバスチャンに強い友情を持ち、妹ジュリアにも恋心を隠さなかった。二人はチャールズを介してカソリックと母親に対抗するのだが。
なかなか面白く見せてくれる作品だったが、散々言い尽くされた感もあるという感覚は否めない。
ジュリアン・ジャロルド監督は『キンキー・ブーツ』の時もそうだったのだがゲイの要素は見せるのだが結局は女性の方へ行く、という肩すかしなところがあってだからと言って女性との関係がそうそういい感じでもなくどこか物足りないなあという印象を与えるのだ。
原作がそういうものだからなのかもしれないが(未読なので何とも言えない)ところどころ腑に落ちない台詞なんかがあって例えばヴェニスに住む父親の愛人がチャールズに向かって「あなたにとっては一時的な付き合いでもあの子には違うのよ」だとか学友からも「お前が生贄かと思っていたらあいつらが生贄になっていたんだ」だとか、まあ彼らがそう思っただけ、という言い訳はできるが台詞というのはやはり物語を説明するわけだろうし、とはいえセバスチャンがチャールズ一途かといえばそれまでだって仲良くしてた者もいるしチャールズがいなくなっても別の男と関係があるのを見てもチャールズがその言葉で多少動揺してるのだがセバスチャン自身は様々な恋の中の一つだっただけのようだし、しかも学生時代のひと夏にキスを一度しただけにしか過ぎなくてチャールズだけが気に病んでて貴族様は別の恋愛を育んでおられたようだ。ジュリアにしても果たしてチャールズだけがお相手だとは今後を含めば限らない。それにチャールズ自身の愛情もモロッコにいるセバスチャンを僅かな会話だけであきらめて帰国したりジュリアがなびかないのを見てあっさり突き放したり、とさほど彼らに深い愛情を持っているようには思えない。「あなただけを一途に愛します」といった韓国ラブストーリーに慣れてしまった感覚としては実に冷淡に思えてしまう。韓国映画だったら宗教に負けじと尽くし抜くんだけどねえ(『シークレット・サンシャイン』)
実に淡々と過ぎ去った恋愛を思い出すチャールズの物語でさほど燃え上がるわけでもなく本人は愛し抜いたと思っているようだが傍目にはあっさりした愛情と友情のように見える。

ところでセバスチャンといえばカソリックでゲイと噂される聖セバスチャンから取られたのであろう。裸体で矢を射られ苦しむ姿で有名な聖セバスチャンのイメージはセバスチャンにぴったりである(よく裸体で登場するし、苦悩してるし)
また主人公が青春期にまず同性を愛し、次に異性を愛する(その肉親である場合も)という話はやたら多い。
『トニオ・クレーゲル』『草の花』『モーリス(主人公の元恋人がだけど)』など。わかるけど異性の部分はごまかしのような気がしてしまうのだよね。
やはり本作にしてもノスタルジックな覆いをかけ、また途中から異性を愛することでどこか逃げを打っているような気がしてしまうのである。

などとまあ随分責め立ててしまったがそれでもこれはやっぱり見逃せない映画ではあった。
何と言ってもベン・ウィショーとマシュー・グードを観ているだけで充分だ。
ベンはもう滅茶苦茶可愛かった。さりげなくキスするのもいいし、大好きなパパの横に座ってパパから肩を抱かれるとすっと頭をもたせ掛けるとこなんて可愛いったらない。
じっと見つめる眼差しも愛おしくて切ないんである。
二人の美しいひと夏の思い出を観れるならそれだけでもういいのかもしれない。

監督:ジュリアン・ジャロルド 出演:マシュー・グード ベン・ウィショー ヘイリー・アトウェル 
2008年イギリス


posted by フェイユイ at 01:03| Comment(2) | TrackBack(0) | ベン・ウィショー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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