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2009年04月01日

『マイ・ビューティフル・ランドレット』スティーヴン・フリアーズ

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MY BEAUTIFUL LAUNDRETTE

物凄く久し振りに観た。というか昔ビデオだかで観たきり観なおしてはいないのではないか。ダニエル・デイ・ルイスがかっこよかったこととラストシーンとランドリーの奥での二人の抱擁シーンだけは記憶に残っていた。

で、今回観なおしてみてがこれは結構渋い作品なのだった。
まずダニエル演じるジョニーよりもオマールが主体になっているのだが、それでもやはり主人公はジョニーなのだろう。
難しいのはこの映像内では描ききれていないイギリスでのパキスタン人の立場を知識や想像で補うしかないことである。
この映画だけ観てるとむしろオマールたちパキスタン人のほうが悪どくてイギリスの憐れな労働者階級の浮浪児どもが可哀想に見えてしまう。
オマールもジョニーが昔の過ちを償おうと頑張っているのに何度も過去を持ち出す嫌な奴に思えてくるし。
ここは多分「オマールはジョニーが好きなのだがそれでもその気持ちを潰してしまうほど辛く苦しい時期を過ごしたのだ」と想像するしかない。ジョニーもオマール親子を裏切ってしまった過去を恥じるからこそここまで尽くしているんだろう。
とイギリスにいるわけではない自分としては納得をして観ていく。
他にも想像を色々働かせなきゃいけない部分がある。最後、ジョニーが押さえつけた男もジョニーの恋人だったのだろうがここでジョニーはオマールを選んだのだ。オマールと結婚するはずだったタニアが突然オマールを嫌ったように見えるのだがジョニーが「奴と寝たのかい」と聞いているので多分オマールはタニアを抱けなかったんだろう。
物語はオマールの側から語れていく。何もまだ知らないような初心な感じのオマールは最初ジョニーとの再会を喜び彼とまた会うことを心待ちにしている。二人の再会が夢を現実にするようなコインランドリー経営に結びついていく。叔父に任された古びた汚いコインランドリーをオマールはジョニーの手伝いもあって(まあ汚い金を作るんだが)新装開店することになる。開店前に店の奥でやった二人のひと時の抱擁を境に二人の関係がおかしくなっていく。
金儲けの手段を得たオマールは復讐するかのようにジョニーに当たりだすのだ。
それに対して反発を覚えながらもオマールを見限ってしまえないジョニーの気持ちが切なくてたまらなくなってしまう。
本当に彼にこんな仕打ちをされたのなら離れていってしまうのが現実かもしれないが、そこがダニエル演じるジョニーの魅力である。荒っぽくて昔は彼に辛い思いをさせたのを後悔して今度はオマールを助けてやろうと誓っている。でもオマールはジョニーを愛しながらもどうしてもグチをこぼさずにはいられなくて段々それが酷くなっていきジョニーを見下すような態度になってしまう。
それをジョニーが懸命に我慢しているのが観ていてあまりに危うく思えてくるのだ。
そしてラスト。他の映画だったらもう少し二人の間が離れていってこれからどうなるのか、というところで終わるのかもしれないが(もしくはどっちかが死ぬか)傷だらけになったジョニーがもう嫌だと去ろうとするのを今度はオマールが引き止めて洗面所で互いの体を洗いながら笑う場面で終わる。こういうタイプ(つまり差別問題とか同性愛ものとか)の映画としては非常に前向きな明るい終わり方だったので当時とても驚いて大好きになった。同性愛もののラストはその多くが「死」か「別れ」だと決まっているみたいなものだから。
人種差別も含んだ同性愛ものでこんなにも未来を感じさせる作品は今でもそう多くないのではないか。
上流階級ものでもないところが当時も今もとても好きな設定である。

昔はオマールくんがそうかっこよくないような気がしてたのだが今観ると長身で細身で可愛い顔だなと思ってしまうのだからしょうがない。
ダニエルはやたら腕っ節の強いパンク野郎というのがメチャかっこいい。オマールへの愛情もいいのだよねえ。
タニア嬢は普通こういう作品で非常に邪魔になるのだがなぜかあっさりと旅立ってくれるいい人である。
オマールのパパ兄弟が仲直りするのもほっとする最後だった。サリームが酷い目にあうのもよかったし。
レイチェルはお腹がかぶれて可哀想だったが総じてとてもいいところに落ち着いた作品だったのではないだろうか。
オマールとジョニーがこれからも仲良くランドリー経営をやっていってくれるといいな、と願うばかりの心やすまる作品であった。

監督:スティーヴン・フリアーズ 出演:ダニエル・デイ=ルイス ゴードン・ウォーネック サイード・ジャフリー ロシャン・セス
1985年 / イギリス


ラベル:差別 同性愛
posted by フェイユイ at 22:54| Comment(2) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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