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2009年04月03日

『パフューム 〜ある人殺しの物語〜』トム・ティクヴァ

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Perfume: The Story of a Murderer

この映画を観るのは初めてではない。最初観た時はまだベン・ウィショーだから観ようと思ったわけではなくただもう物語の強引とも言える魅力に圧倒されさすがに幾つか疑問も感じたものだがそれでもティクヴァ監督の技量に驚かされたし興味を持ってしまう作品だった。
今回は何と言っても主人公グルヌイユを演じたベン・ウィショーに集中して観てみようという再観だった。
その強い印象は2度目だからといって薄れるわけでもなくより彼の魔力に捕まってしまったようである。

ベン・ウィショーの顔と体は観る瞬間によって様々に印象を変える。物凄く奇妙で不細工に思える時もあるし、はっとするほど美しいと心を捕まれる時があるのだ。
体もおかしいまでになで肩で痩せすぎでかっこ悪いとしか思えない時とほっそりとした色気を感じさせる時もある。
髪は真っ黒で唇が赤すぎて皮膚は白すぎで八の字眉にやや吊りあがった目ばかりぎょろぎょろデカイ、という顔立ちだ。首も細くてひょろっと長くて不気味に見える。体格も貧弱でさほど長身なわけでもない。
かっこ悪いどころか気持ち悪いくらいの容貌なのにその不細工さが却って魅力として思えてくるのだから一体どういう魔力なのかと思う。
実際の彼はやたら早口で話す落ち着きのない神経に障る人格のように思えたのだが、映像の中のベンの怖ろしいほどの眼差しはなんだろう。
この作品ではジャン・バティスト・グルヌイユという特に異常な人格を表現しているのだが、彼が肩の下がったやせこけた容姿から「香り」を放ち。すべての人の魂を虜にするようにベンの強い眼差しが心を捉えてしまう。
思いつめた悲しさに満ちた目なのである。
無口なグルヌイユは汚れきった顔から光を放つ目ですべてを物語る。匂いが言葉にならないように思いも言葉にならず目で表現するのだ。

一体この物語の中で彼は何を求めていたのか。世界を征服できる力を手にしながらグルヌイユは人並みに愛されることだけを期待していたという説明がある。だがグルヌイユは自分にとっての「いい匂い」だけを求めて生きていたはずで「人並みに愛されることが目的だった」というのは納得できない。というか彼は「愛する」「愛される」「愛し合う」などという言葉の意味が判らないだけだったのだろう。
彼は人の愛し方が「SEX」でも「プラトニック」でもなく「匂いを嗅ぐ」ということだけに限られていた、という話なのではないか。ただ彼自身には体臭がないので同じ感覚の女性がいたとしても「愛し合う」ことはできない、という悲しい話なのだ。
この辺、増村保造の『盲獣』では盲目になった男女が互いの体の感触だけを楽しみ愛し合うというもので彼らは幸せだったのだと思わされる。

異常人格者の大量殺人を肯定するかのような内容に反発を覚える人も多いだろう。「愛」というものがテーマであって欲しい人にも価値のないものかもしれない。
だがこのとり憑かれた異常な精神に惹かれる者には目を離す事のできない作品である。
そしてその人格に憑依されたかのようなベン・ウィショーの表情、仕草に見入ってしまうのである。

監督:トム・ティクヴァ  出演:ベン・ウィショー ダスティン・ホフマン
2006年ドイツ


posted by フェイユイ at 23:18| Comment(2) | TrackBack(0) | ベン・ウィショー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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