映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年04月22日

『ブレス』キム・ギドク

ブレス.jpg
BREATH

変な人だなあキム・ギドクって。いつまでたってもちっとも上手くならないし、ずっと低予算で仕上げているんだろうな。
そしてまた奇妙な物語である。浮気している夫に嫌気がさした妻が死刑囚の男に突然面会に行き始める。彼女の行動は死刑囚の男に恋をしたからではなく、夫へのデモンストレーションなわけで夫は妻の訴えに気づき、やり直そうとする。死刑囚の男は人妻の面接に夢中になってしまう。同じ房にいる彼を慕う囚人はそんな彼の邪魔をするのだが。

今日のニュースで韓国では10年間死刑執行はなされてないが死刑判決が出たと言っていた。
となればチャン・ジン死刑囚という設定自体があり得ないことだったのか。
とにかく死刑囚の面接にいきなり行って会えるということ、部屋を飾り付けて歌を歌うこと、直接個室で二人きりになれること、キスをし抱き合うことなどあり得ない展開である。
それらを許したのが顔を見せない保安課長でキム・ギドク監督その人である。ならばこの物語は「あり得ない話だが、夫に幻滅した妻が死刑囚と恋に落ちたらどうなるのだろう」という監督の妄想だといわんばかりである。人妻と死刑囚は最初は窓越しに、そしてキスする寸前で止められキスをし最後には体を交わす。だがその時、彼女はもう夫とよりを戻している。
彼女は小さい時、5分間だけ死んだ経験があるという。水に溺れ5分間息が止まっていた。
女は死刑囚チャン・ジンの息を止めてしまう。もがき苦しんだチャン・ジンはそれまでの恋する表情とは違い憎しみの目で彼女を見る。
チャン・ジンを慕う若い男の囚人がいる。人妻に狂うチャン・ジンに嫉妬しているかのように思えるが所詮叶わぬ恋だとチャン・ジンを引き止めたかったのだろう。そうすることしかできない彼の思いが悲しい。

この作品、先日観た『ぐるりのこと。』と設定が似ている。10年目の夫婦の間の倦怠感。こちらは妻のほうが犯罪者と関わっていく。ぐるりの話は抜きにして夫婦のみの話に焦点を集めている。だがぶつかり合いの凄まじさは日本映画『ぐるりのこと。』の比ではないな。互いに血を流しあうまでの戦いである。

チャン・チェンがとてもかっこいい。人妻が「あなたって目がきれい」と言うがほんとに透き通るような眼差しである。彼を慕う囚人くんが切なかったな。きっとすでに肉体関係があったんだろうねえ。

監督:キム・ギドク 出演: チャン・チェン チア ハ・ジョンウ カン・イニョン キム・ギドク
2007年韓国


posted by フェイユイ at 23:15| Comment(0) | TrackBack(1) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『闇の子供たち』阪本順治

闇のこどもたち.jpg

映画化するのが非常に難しい内容ながら役者と作り手の真摯な思いがこもった内容だった。
我が子を助ける為の臓器売買を希望する親と児童買春を映像として捉えなければならない。原作ではもっと生々しい描写だったがそれを映像化するのはかなりの苦渋だったのではないだろうか。子供を放り出す場面で明らかに力が抜けているのが見て取れるが当然のためらいだろう。
タイにおける児童の臓器売買と児童買春が絡み合っている事実が浮き彫りにされる。
理想に燃え先走りしてしまうNGOに属する若い女性は経験のなさから軽はずみな行動をとってしまうがその気持ちは真実であることを貫いていく。
臓器売買の秘密を暴こうとする新聞記者の隠された性癖が少年嗜好であるという事実。
児童買春と臓器売買に関わるタイの青年がかつては彼自身もそういう環境であったこと。
登場する人物の裏表を描き、タイの貧しい子供達の逃げ場のない運命を描いていく。
衝撃の内容に憤っても様々な事柄によって成り立つ状況を簡単に変えてしまうことは難しい。だがそれでも現実を知っていたい。
原作ではもっと児童買春の様子が描かれていて私が一番ショックだったのは一般的には男性の買春に怒りを覚えることが多いものだが、この作品の中では女性も少年を買い、ホルモン剤注射で無理矢理勃起させ性交を強要することだった。無論性器に注射することには激しい痛みがあり、数回の注射を繰り返したことで少年は死に到る。映画ではその場面がありはしたがよく伝わらない描写だったので女性も惨たらしい買春をしているとは受け取りにくかったのではないだろうか。

臓器にしろ性にしろ否応なく子供達の体を売買する仕組みがあることを見せ付けられる。
人格者であるように思えた主人公が実は児童買春をしていたという事実がこの物語をさらに苦いものにしている。

子供たちを運ぶ若い男が車の中で「タイガーマスク」のエンディングテーマをくちずさんでいた。
「ああ、だけどそんな僕でもあの子らは慕ってくれる」って。そりゃないだろうが、孤児のテーマソングなのである。
「強ければそれでいいんだ、ひねくれて星をにらんだ僕なのさ」
「温かいひとのなさけも知らずに育った」んだな、この人も。と思わせる場面だった。

監督:阪本順治 出演:江口洋介 宮崎あおい 妻夫木聡 佐藤浩市 鈴木砂羽 豊原功補 プラパトン・スワンバーン プライマー・ラッチャタ
2008年日本
ラベル:犯罪
posted by フェイユイ at 01:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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