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2009年04月24日

『真木栗ノ穴』深川栄洋

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深川栄洋監督、気になっていたがこれが初めての鑑賞である。
なるほど。売れない小説家が妄想の世界とも霊的な世界ともつかない不思議な状況に陥ってしまう、という物語で『牡丹燈籠』のようでもあり江戸川乱歩のようでもあり、もう半ばで筋書きは判ってしまうのだが、そんなことはどうでもよくて奇妙にもしんみりとさせるいい映画だった。

西島秀俊さんは北野武『Doll』でも大変よかったし、この作品でも甘い二枚目なのがとても効いている。クールなようでおかしさを出せる味わいのある人だ。
映画というのは当たり前だけどストーリーだけじゃなくて観ている時に画面から感じる雰囲気こそが大切である(ほんとに当たり前だけど)
汚い古ぼけた安普請のアパートは雨が降ると湿気てじとじとしそうだし、いつも薄暗い。登場人物は皆情けない感じである。台詞がとってつけたようなわざとらしさがあるのもおかしい。
映画自体がどこが現実でどこが妄想なのか、考えながら観るのも面白いが、孤独な人間にとって妄想ほど楽しいものはない。
妄想と現実がごちゃ混ぜになる、という映画は多いがこれは映像によって妄想を現実として観てみたいという妄想から生まれたものだろう。
現実でかなうこともない美しくセクシーな男女を自分の意のままにできるのだから。
妄想が行き過ぎてしまうのは惨めだがそれが西島秀俊ならば綺麗に見えるというものである。
この主人公が不細工だったら相当反感買いそうだ。

覗き、妄想と普通ならおぞましさを感じさせる行為を映像化しながら、主人公の姿は滑稽なものから次第に心の内側を覗き込むような深遠な意味を持つようになってくる。
現れるはずのない中年女の来訪と色香の漂う人妻との交わりを孤独な主人公が思い描く様はどこか文学的な寂しささえ感じさせる。
この染み入るような情感は観てみないことには説明できそうにない。

タイトルの『真木栗ノ穴』って最初主人公の名前だとは気づかず、真っ暗の穴、ってことかと思ったのだが、やはりそういう意味が含まれているのだろうか。

監督:深川栄洋 出演:西島秀俊 粟田麗 木下あゆ美 キムラ緑子 北村有起哉
2007年日本


ラベル:ホラー サイコ
posted by フェイユイ at 22:47| Comment(0) | TrackBack(1) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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