
Cat People
当時、ナスターシャ・キンスキーは最も評判の高い美人女優の一人だった。確かに観なおしてみても気品ある美しさにふっくりとした唇のせいか笑うと愛らしい感じで人気があったのは頷ける。しかも胸の薄いスレンダーな体ながらすらりとした体は見とれてしまう。この作品では何度となくヌードも披露しているのだが服を着ている時、ブラジャーをつけてないのか、小さな胸のふくらみがやたらとセクシーだったりもする。オリバーと魚を獲る時短パンをはいているお尻が一番色っぽかったりするのだ。
そのナスターシャがヒロインで彼女の兄役がマルコム・マクダウェルである。
先祖が行った行為の呪いでキャットピープル=豹人間となってしまった兄妹は互い以外の異性とセックスをすれば黒豹となってしまい、人間に戻るためには殺人を犯さなければならない。彼らにとっては兄妹で夫婦となることだけが呪いを防ぐ方法なのだ。夫婦になることを望む兄ポールとそれを拒む妹アイリーナ。
何度も他の女性と交わっては豹になり殺人を繰り返す兄ポール。動物園で知り合った園長のオリバーを愛し始めたアイリーナだが彼とのセックスにはおびえてしまうのだった。
この作品はリメイクで元の話は男性恐怖症の女性が結婚したにも関わらずどうしても夫とのセックスに耐え切れず、自分は猫人間だという物語を信じ込んでしまっている、という筋らしい。どちらにしてもセックスと動物変化による殺人というのが題材なわけで非常に刺激的なはずだが本作はどうも間延びしてかったるくてしょうがない。
ナスターシャの処女らしい清らかな美しさが次第にエロチックに変わっていく様子だとか、マルコムはそのままでも豹に見えてしまうほど獣性を感じさせてくれるのに展開は遅いし、せっかくニューオーリンズという独特な雰囲気を出せるはずの街なのにそれほど特別なものを感じさせてくれないのはどういうことだろう。
プールでの闇の中の豹の唸り声は恐怖を感じさせたし、元の姿に戻してと願うアイリーナをベッドに縛り付ける場面は少しだけエロチックではあったが題材である、近親相姦、殺人、獣姦、食人などという禁忌のエロチシズムは薄められてそこに嫌悪や恐怖を感じるまでには至らないのである。
それは作られた時代のせいもあるのかもしれないがやはり作り手の力量のせいだとしか思えない、残念な惜しい作品だった。
多分観た人はマルコムの異形さを感じさせる顔立ちや演技以上の独特の雰囲気とナスターシャの美貌に見惚れているばかりだろうが。
私はナスターシャといったら『ホテル・ニューハンプシャー』でジョディ・フォスターと共演していて二人が「まるで恋人みたいに仲がいいの」と書かれていてまだその時はジョディがビアンであるなどとはまったく知らなかったが美女二人が同性愛関係だと言わんばかりの報道がとてもうれしかったことを覚えている。本作はそれよりもずっと前の作品になるがナスターシャは髪を短くしていて胸が小さく体は若く引き締まっていてあのきりりとした美貌なのでビアン的なエロチシズムも感じるのだがどうなのだろうか。
本作もそこらももう一つ加味してビアン的な要素もあればよかったのに、と思うがますますそれは無理な話なのだろうな。
この作品を観たのはふぇでり子さんとの会話からだったのだが、確かにベン・ウィショーにやってもらいたい題材である。勿論内容はまったく変えて欲しいが。
この作品でもアメリカの映画監督であるシュレーダー氏が猫人間役にイギリス人であるマルコム・マクダウェルを使ったのは「こういう役はイギリス人が向いてる」という単純な発想だったみたいだがベンもまたぴったりだろう。でもマルコム役ではないような気もする。できるとは思うけど彼のイメージ的にはむしろナスターシャがやったアイリーナのほうだ。と言っても女になれというわけではないよ。男のままで「セックスに恐怖を抱いている未経験男」ということでいいのではないだろうか。
彼を迎えるのはお姉さんでもいいし、この際お兄さんのままでキャットピープル一族初の男同士でやってもらえればもっとうれしい。その場合、園長は男なのか、女なのか。男にしたら野郎ばっかになってしまうな。よいけど。
作ってもらえるかな。監督は誰が?お兄さんは?
監督:ポール・シュレーダー 出演:ナスターシャ・キンスキー ジョン・ハード マルコム・マクダウェル アネット・オトゥール
1981年 / アメリカ
ラベル:エロチシズム