映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年07月02日

『ファニーゲーム』ミヒャエル・ハネケ

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FUNNY GAMES

かなりのキワモノという評判のようだったのでどんなブチ切れ映画かと恐る恐る観始めたのだが以前観た『隠された記憶』でもそうだったように巷にある単なるスプラッタやゲテモノ趣味のホラーなのではなく静謐な中に突然不協和音が響くような、やり過ぎない(と言うと語弊があるかもしれんがもっと残酷なことやることのみに興味があるならできるのだがここまでで抑えているのが奇妙な品格さえ漂わせて気持ちが悪い)でいるのも恐怖をさらに増しているのではないだろうか。

幸せそうな家族の楽しげな休暇に出会った二人の青年の言動に主婦が感じたちょっとした違和感と苛立ちが始まりで家族はとんでもない異常な事態に陥っていく。
ハリウッド製スリラー映画のパロディらしいが自分としてはこういったごく普通の人々が突然関係もない人間によって殺傷されるという事件が次々と起きる昨今においては映画とパロディというより現実を写し撮ったという風にしか見えない。
若干、作中の人物がカメラ目線で観客に語りかけたり最後にはこの映画こそが虚構であり虚構こそが現実だ、などということで「これは映画だ」と現実に引き戻されはするがもしかしたら今のこういった犯罪者はどこかで映されていることを感じ、カメラ目線でこういう台詞を現に言っているかもしれない。

虚構のような犯人たちに比して家族たちの恐怖と怒りと悲しみは極めてリアルに表現され、悪ふざけのような男たちの残酷ないたぶりを観る者はイライラしながら眺めているしかない。ハリウッド映画なら男たちの悪行は途中までで最後は彼らが完膚なきまでに叩きのめされ撃ち殺されることですっきりするわけだが、そういうカタルシスは微塵も与えてはもらえない(そういうカタルシスっていうのも酷いもんだが)
映画とはこうあるべきだ、という欲求は全く無視され最初から最後まで観終わっても何一つ救いのない作品にむかっ腹が立ち怒りの置きどころもないわけなのだが、よくもここまで嫌悪感だけの映画をしかも品位を落とさずに作れるものだと感心してしまう。
何しろ暴力をふるう場面、レイプシーン、裸をさらす、殺害場面など普通こういったホラー映画の見どころになる場面はまったく映されないのだ。そういう場面はなしにほぼ会話のみで観る者にこれ以上ない嫌悪感・不快感を与えてしまうのだから。
映画に癒しだの教訓だの愛だのを求める方は鑑賞後憤死してしまいそうだ。

ラストに次の家庭のドアを開け意味ありげな男の表情で終わるなどいかにも「次はあなたの番かも」みたいな(そんな楽しげに言われても)んで非常に上手くまとめられたサイコホラーの秀作の一つだと思うのである。

次は同監督の『ファニーゲーム U.S.A.』を観る予定。ハネケ監督もよくやるが私ももの好きかな。

監督:ミヒャエル・ハネケ 出演:スザンネ・ローター ウルリッヒ・ミューエ フランク・ギーリング アルノ・フリッシュ
1997年オーストリア


ラベル:サイコ ホラー
posted by フェイユイ at 22:45| Comment(0) | TrackBack(1) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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