映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年08月03日

『ヒストリーボーイズ』ニコラス・ハイトナー

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THE HISTORY BOYS

先日観た『センターステージ』がとても好きな作品だったので今まで全く意識したことのなかったニコラス・ハイトナー監督作品に手を伸ばしてみた。いやあ、もう何故今まで観ようと思わなかったのかね?いつもながら自分の目配りの悪さにがっくりしてしまうのだが、とにかくこれはもう素敵な作品だった。

イギリス・シェフィールドのグラマースクール生である8人の少年たち。進学クラスにいる彼らは校長からも「ケンブリッジを目指せ」と励まされ彼らも合格する為に日夜努力を続けている優秀な生徒たちなのだ。
だが校長は彼らには教える教師たちの力不足で優雅さがないと不安を持っている。そこで彼が急遽教師として迎え入れたのがオックスフォード大学卒の若手男性教師アーウィンであった。
それまで少年たちに教養を学ばせていた老教師へクターは入学試験とは無縁な文学・詩果ては映画の一場面を演じさせたり歌わせたりといった具合。でっぷりと太った体格で憎めないが実は妻帯者であるにも拘らずゲイで生徒たちをバイクのタンデムに乗せては股間を触ることを楽しみにしている(優等生諸君はそんな彼の趣味を甘んじて受けている、というのがさすが優秀な頭脳のせいか)という困った人物でもある。
一方アーウィンはケンブリッジ合格に必要な機知を生徒たちに学ばせる。優秀な彼らはみるみるアーウィンの変化に満ちてスピーディで含みのある教え方に刺激を受けていく。
古い型の教師へクターと最新式といったアーウィンの教育のどちらもとても面白いところがいい。つまりこれはどちらかが正しいというのではなくどちらも必要なのだ。少年たちもアーウィンに惹かれつつもへクターの教えも利用していくのがそつがない。
そして実はアーウィンもゲイだったのだ。

8人の少年たちも様々でとても魅力的なのである。この映画は元々舞台でトニー賞を取ったものらしい。しかもキャストはそのままであるというのが驚きだ。
一番目立っているのがドミニク・クーパー演じるデイキン。ちょっとディカプリオを若くして黒髪にしたようなハンサムで勝気な表情が可愛らしい。ストレートにも関わらずゲイのポズナーが近づくのも構わないし、へクターにはサービスだといわんばかりに触らせ、アーウィンの頭の良さにすっかり参って「彼とならやってもいい」と不敵な笑顔を見せる豪放な男なのである(少なくともぶってる)そんな彼に思いを寄せる同級生ポズナー。ユダヤ人でちびで(そんなこともないが)ゲイでどうしようもない、と嘆く。デイキンに並ぶ優秀な頭脳を持っている。デイキンが嫌がらないせいもあって堂々と彼に恋の歌を歌ったりする。同じユダヤ人のスクリップス(ジェイミー・パーカー)に悩みを打ち明ける。そのスクリップスはポズナーのデイキンへの思いを聞きながらデイキンといつも一緒にいるのが彼だったりして。まあ、その気がないからデイキンも傍にいやすいのだろう。
その3人が特に多く登場するが、シニカルなスポーツマンのラッジ、イスラムの少年などの人種や宗教、人生観などを語らせながら彼らの受験勉強の日々が過ぎていく。

イギリスの学校ものに顕著な、女性が殆ど登場してこない作品だがあえて色もの的に出されるより(その役目の女性はいるが)このくらいきっぱりと排除されている方がマシだと思う。
何より背伸びした少年たちの生意気な言葉のやりとりが楽しくてしょうがない。
どうしてもポズナーのデイキンへの恋心に惹かれてしまう。珍しくもデイキンという奴はとんでもなく出来た少年なのでポズナーを毛嫌いしないのがいいとこだし、それゆえ余計ポズナーは辛い。しかもストレートのはずのデイキンがアーウィンとならやってもいい、なんてかなり本気で言いだすので彼の心は千々に乱れるのだった。最後に「ご褒美だ」なんて言ってポズナーを抱きしめるのもますます切ないものがあるがなんだかこれも青春の一こまという奴なのであろう。
めちゃくちゃ切れてかっこよかった転入教師アーウィンが実は、というネタばれがありゲイでもある彼はデイキンの誘惑に揺れ動いていくのがなんとも寂しいが完璧なかっこよさに描いてしまわないのがまたよいのかもしれない。

舞台劇だけあって言葉の応酬が醍醐味の作品。久しぶりにこういう感じ。とても堪能できてこの作品もまた大好きなものになった。

監督:ニコラス・ハイトナー 
出演:リチャード・グリフィス
スティーヴン・キャンベル・ムーア
フランシス・デ・ラ・トゥーア
サミュエル・アンダーソン
ジェームズ・コーデン
アンドリュー・ノット
ラッセル・トヴェイ
ジェイミー・パーカー
ドミニク・クーパー
サミュエル・バーネット
サッシャ・ダーワン
クライヴ・メリソン
ペネロープ・ウィルトン
エイドリアン・スカーボロー
ジョージア・テイラー
イアン・ミッチェル
2006年イギリス

なんだか昔懐かしい作品だった。と言ってもそういうばりばりに有名大学目指して勉強した、なんて過去を持ってるということでなく昔はちょっとこういう勉学に励みながら若者たちが人生や世界について様々に論議し合う青春時代、なんていう話がよくあって自分もそういう仲間みたいのに憧れていたのだが、現実にはこれほど小難しいテーマを論議し合うなんてこともなくただなんとなく過ぎ去ってしまった。今ではそういう若者を描いた作品すらあまりないような気がする(私が知らないだけかもしれないが)アメリカや日本の目にする映画やドラマは不良モノばかりで世界や歴史について議論する少年たち、なんていうのはお目にかかれないようだ。

とはいえこういう少年たちは現実にいるはずなのだが日本ではあまりこういう類の少年たちを散り上げて作品にすることがないようだ。あっても「勉強だけが大事なのか」みたいなどーでもいいようなテーマだったりする。よく知られているのでは『デスノート』がちょっとだけ頭のいい少年たちの話だったのかもしれないが。


posted by フェイユイ at 23:26| Comment(2) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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