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The Talented Mr. Ripley
何だか急に観たくなってしまったんですよねえ。忘れっぽい私が殆ど覚えているほど見返してるんですが。
この映画で特に好きなのはむしろ女性二人。こういう男性主体の映画だと女性の役っていうのは付け合わせ的になってしまいそうだが、本作は女性の役がとても効果的に使われながら人間的な魅力と存在感があるのがいい。グゥイネス・パルトロウのマージとケイト・ブランシェットのメレディス。特にメレディスは脇役にも拘らず時折思い出しては観たくなるのが不思議なのだが。
勿論男性陣も文句なしでマット・デイモンはカッコ悪い側面と頭がよく感受性が豊かで非常に美しく見える側面を上手く出しているし、気まぐれでちょっと馬鹿なお坊ちゃんをジュード・ロウの美貌でこの上なく素敵なトムが憧れるに足る男性像として表現している。そして強烈な印象のフレディを演じたフィリップ・シーモア・ホフマン。最初観た時なんかはあまりに彼が憎らしくて騙してるのはトムなのに早く彼を殺さねば、という気持ちになってしまったが、観る者をそういう気持ちにさせるのは監督の狙いとホフマンの技ということなんだろう。
ディッキーのパパのジェームズ・レブホーンがまたよくて、放蕩息子を甘やかして自分はよく判っていると思い込んでしまっているのが金持ちらしい。
そして後半登場するピーター役のジャック・デヴェンポート。
トムがディッキーに対して抱いた同性愛の想いは彼の冷酷な気まぐれさが引き寄せたあげく踏みにじられてしまうが、ピーターはトムを愛し、トムもまたピーターに惹かれていくにも関わらずトムは結局保身のために彼を殺すことになる。
こんなに上手く物事が進むものか。神がこんな悪戯をするわけはないから悪魔がトムを手玉に取って楽しんでいるとしか思えない。上手くいけばいくほど彼は泥沼から抜け出られない。彼の言い方で表現すれば地下室のさらに奥の奥に彼は隠れ続けることになるのだ。
私がこの映画を何度も観たくなるのは出演者たちの素晴らしさとサスペンスミステリーの巧妙さもだが、無論ディッキーの贅沢な暮らしぶりのせいなんだろう。贅沢というと極端に馬鹿騒ぎをさせたりするのは幻滅で低俗すぎる。ディッキーの暮らしぶりというのがなんともお洒落でこじんまりとした家だとか、でも服や家具は洗練されていてマージのような本物のお嬢様な恋人と気ままに毎日を送っている感じがとてもよくてトムでなくとも入れ替わりたくなるというものだ。
前半のイタリアの小さな街の3人の生活はやがて来る破綻を感じさせながら楽しげだ。この上なく羨ましいディッキーよりトムは才能に恵まれている。だがディッキーの身の上は望んでも手に入らない、はずのもの。
トムはディッキーを殺害後ホテルのフロントから「グリーンリーフ様ですね」と呼ばれはっとする。だが彼と出会う前からトムはメレディスと言う女性に自分はグリーンリーフだと言っている。その時、いやその前、父親のグリーンリーフ氏がトムをプリンストン大学卒業生だと間違えディッキーの友人だと誤解した時からもうトムは自分を偽っている。
彼は最初からディッキーの物まねをしようと企んでいた。単に憧れていただけなのだろうがその物まねの才能が彼を逃れることのできない犯罪の迷路の中に連れ込んでしまう。
マット・デイモン自身この役をやった時はまだ実績もそれほど積み重ねていない時期だったので実にやりがいのある配役だったのではないだろうか。
監督:アンソニー・ミンゲラ 出演:マット・デイモン ジュード・ロウ グウィネス・パルトロー ケイト・ブランシェット フィリップ・シーモア・ホフマン ジャック・ダベンポート ジェームズ・レブホーン セルジオ・ルビーニ フィリップ・ベイカー・ホール
1999年アメリカ