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2009年08月06日

『オーロラ』ニルス・ダヴェルニエ

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AURORE

表紙絵があまりにロマンチックすぎるのと他の評価がさほど芳しくないようなので殆ど期待せず、というかちょっと高を括って観てしまったのだが、意外にも始まった途端入り込んでしまって王女と画家の踊りの場面では涙が溢れて止まらなくなるほど感銘を受けてしまった。この映画で泣く人いるのかなあ。ちょっと没頭しすぎか。

いかにも童話めいた物語で単純な進行なのだが、そのシンプルさゆえか、16歳の王女と若い画家の純粋な愛に他にないほど切ないものを感じてしまったのだよ。
童話というのは大概現実の物語を架空の設定に置き換えて表現しているというものだが、父王は「踊ってはならない」と国の掟を定め、娘のオーロラ姫にも「踊ること」を禁じている。
(これはあのオーロラ姫つまり「眠れる森の美女」という童話もまた自由を束縛された王女=少女を眠りという表現で表わしていたのに通じるのだと思うが)
とはいえかつてオーロラの母である妃もその美しさと踊りの巧みさで王の心を射止めたのだが。結婚と同時に王は妃に踊ることを禁じ、そして、王女である娘にもまかりならんと命令する。
これはもう単に女性が自由に行動することを意味しているわけで妃は愛する王の為に自由=踊りを捨てるわけだ。だが娘オーロラが妃の血を受け継いでやはり美しく踊るのを見て妃は娘には絶対踊らせてやりたい=自由であって欲しい、と願うのだが。
父王が禁止しながら娘が踊っているのを望遠鏡で覗いてるのはどうも危ない行為にしか思えんが、父親というものは危ういと思いながらも娘が美しく大人になっていくのを覗いてみているというものなのである。
だがそれが公になるのは気に入らんという独占欲にかられてしまう。
だが、側近の「財政難を救う為に王女に金持ちの王子と結婚してもらわないといけません」という言葉で渋々王女の結婚相手を探す為に舞踏会を開くことにする。
国の掟として「踊りを踊ってはならない」と定めているのに舞踏会を開く、というのはどういうことなのか。これもまあ不純異性交遊はならんが結婚相手を探すのはまた別のこと、っていうことで。
実は側近は国の財産をどうやら横領しているようで、なおかつ国は財政難だとして金持ちの王子との縁談を勧め、3度の舞踏会を開く。
(私としては一人ずつ呼ばず一斉にたくさん呼んで姫に選ばせてもよさそうなもんなのに、と思ったのだが。これもまあお見合いの意味を持ってるんだろう。いくらなんでも多数の男性とのお見合いってはないもんね)
アラビア、日本、ヨーロッパの王子の誰もオーロラを惹きつけない。怒った王子たちは帰ってしまった。
実はオーロラはそのお見合いの為の肖像画を描く若い画家に心惹かれていたのだ。少しずつ。
初々しい美しさを持つオーロラに画家は恋をする。その見つめるまなざしにオーロラも次第に惹かれていくのだ。
画家の描いた自分の肖像画を見て「本人より美しく描くのね」とオーロラが言うと画家は「いい鏡をお持ちでないようですね」と答える。オーロラは着ていた重々しいドレスをするりと脱いで下着姿になり「美しい私はこれよ」と言って踊りだす。
肖像画を描かせる為にじっと動かない彼女ではなく自由に美しく踊るオーロラに画家は我を忘れて見惚れてしまう。
オーロラはそんな画家に自分の美しさを見せつけるように優雅に踊るのだ。
この場面がまず見事で明るい日差しの中貧しげな画家と美しいが重苦しいドレスを着こんだ王女オーロラがその服を脱ぎ捨て踊りだす瞬間のなんという軽やかなことか。
様子を見守っていた、オーロラの弟である王子は二人の間に恋を感じて居たたまれず飛び出していく。
下着姿、と言ってもそれがまあ今のバレエの稽古着みたいなデザインなのだがオーロラのほっそりしたからだと若々しく跳ね上がったお尻のラインが艶めかしい。
途中、母妃が側近の悪だくみで毒を含ませられ死んでしまうのだが、形見となったトウシューズを履いて画家の前で踊る場面で泣けてしまったのは一体何故なんだろう。トウシューズを履いた脚でゆらゆらと体を揺らしながら画家の方へと近づいていく。画家はもうオーロラの美しさに囚われたように動くこともできない。
オーロラの自由になることの許されない運命と限られた短い間の儚い美しさ。彼女の美しさは確かに若いからこその危ういものだから感じる美しさなのだろう。(もっと年を取ればどっかと肝の座った貫禄がついてしまうのだろうが)

果たして二人の許されない恋は見つかり、引き離され、オーロラは閉じ込められ、画家は逃走した後殺されてしまう。

オーロラは母妃の言葉を思い出す「悲しい時も踊れば雲の上に行ける」そしてオーロラは雲の上で愛する画家と踊ることができた。だが母との約束で弟王子を見捨てられず戻ってくる。
弟王子は画家を目指して放浪に出る。
オーロラはもう地上に戻ることもなく雲の上へと舞い上がっていく。

愛を全うしたオーロラと画家の悲恋物語。書いてるだけで涙がこぼれてしょうがないんだけど、そんなに泣かなくてもいいのに何がこんなに悲しくなってしまうんだろ。
ただもうオーロラの美しさと画家の一途な愛に参ってしまったのか。

弟王子が物凄く可愛いのだ。オーロラって父からも危ない愛情、母からも愛され弟はしっかりシスコン。悪い側近からも狙われててみんなから愛された存在なのだ。いいにしろ悪いにしろ彼女を嫌っている人は一人もいない。

日本の王子の登場はちょっと驚いた。殿様髷じゃなくてよかったかも。披露する踊りがまたおっかないんだけど、その国のイメージというのをこれも表現しているんだけど、明らかに閉じ込められて身動きできない女性と彼女を押さえつける恐ろしい男たち、ってイメージだった。判るけど、今の日本はそれほどでもない?フランス人から似ればまだまだ束縛されてるのかな(当人が気づいてなくてどうする。まあ、私も束縛されてるか)
王子がしっかり「従順な姫でないと」って言ってるしオーロラも酷い王子だったって。

監督:ニルス・ダヴェルニエ 出演: マルゴ・シャトリエ ニコラ・ル・リッシュ キャロル・ブーケ フランソワ・ベルレアン カデル・ベラルビ
2006年フランス


posted by フェイユイ at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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