映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年08月07日

『僕の彼女はどこ?』ダグラス・サーク

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HAS ANYBODY SEEN MY GAL?

先日観た『エデンより彼方に』を観てから初めて知ったダグラス・サーク監督。別段観ようとは思ってなかったのだが、レンタル機能も親切なもので「こういう関連作品がありますよ」と出てきた。
1950年代アメリカ映画と言えば『ローマの休日』『エデンの東』『十二人の怒れる男』『欲望という名の電車』など多くの名作は観てきたがトッド・ヘインズが誉めていたダグラス・サーク作品は日本ではあまり知られていないのではないか。ヘインズ監督が勧めるのなら面白いだろう、と観てみることにした。

オープニング。とてもお洒落なイラストから始まって確かにわくわくさせてくれる。そして現れた画面にはヘインズ監督が再現していた可愛らしい家や人々のファッション。明るい色彩。典型的主婦のママと働き者のパパ。美しい姉妹、悪戯っ子の犬、といった具合である。
とはいえそれらを観ながら思い出したのは(昔の)アニメ『トム&ジェリー』と高野文子氏のマンガだったりしたけど。
そしてまるで幽霊でも観たかのように驚いたのがなんてことないドラッグストアの一場面にジェームズ・ディーンが出ていたのだ!信じられず、「物まね?」とすら思ってしまった。とんでもない。時代を考えれば判るはずだが、まだ売れる以前のジミーがワンシーンだけ出演していたのだった。売れる前とはいえ、ほんの数秒のシーンで店の主人に長たらしい名前のアイスクリームを注文して文句を言われる、というだけの出番。全く知らずに観たのでびっくりしたのだが、それでもあの個性的な顔立ちは数秒でも印象的だと思ったのはやはり知っているからなんだろうなあ。
そしてゲイだと発表してエイズで亡くなるという当時衝撃的な報道をされたロック・ハドソンが貧しいが真面目で爽やかな好青年という役を演じている。

さてこの作品。非常に道徳的、教訓的なのではあるがとてもおかしくて軽妙でさらりとしているので嫌味にならず大変楽しんで観ることができた。
老人フルトン氏は唸るほどの大金持ちだがすっかり気も体も落ち込んで寝た切りとなり窓を開けるのさえも嫌がる始末。
彼は長年抱えてきた後悔の念があり、それは若い時愛した女性から振られ離れてしまったこと。彼はその為に一代で財をなし、大金持ちとなったのだが、愛する女性は別の男と結婚しもう孫までいるのだが、彼と再会することもなく死んでしまったのだ。
フルトン氏は突然彼女の家族に「10万ドル」という大金を送ることを決意する。そして医者の勧めで運動がてら彼女の住んでいたその家を訪れてみることにしたのだ。

いきなり金持ちになる側の話、というのはよくあるかもしれない(先日観た『リプリー』もそんな感じだ)金持ちの老人が主人公で気まぐれで大金を送って見るか、という方からの目線というのはあまりないのではないだろうか。
しかもこのじい様、愛する人に振られるだけあってそれほど善人みたいな人ではないし、頑固者なのだがやはり年の功というものはあるのか、なかなかの分別を持っているし、寝たきりだったとは思えないほど(映画だからね^^;)縦横無尽に活躍する。
フルトン氏はジョン・スミスと名乗っていきなり愛する女性の家庭に策を講じてまんまと下宿人になってしまう(さすがアメリカ。家が広い。日本でこのアイディアは無理だ)家の主人は小さなドラッグストアを経営して幸せな一家なのだが、主婦であるママは金持ちを夢見ていて娘を貧乏なBF(ロック・ハドソン)から引き離し町一番の金持ち御曹司とくっつけようと算段している。娘はロックの方が好きなのだがママの剣幕に負けて仕方なく金持ちカールとデートする。妹はおませで元気いっぱいでいかにもアメリカの女の子という感じ。いきなり入り込んできたスミス氏を気にいって仲良くなる。
素性を隠しているフルトン氏のジョン・スミスはそんな一家がとても好きになっていく。
だがそこへフルトン氏が匿名で銀行家に託した小切手10万ドルが一家に届けられたのだ。

幸せだった一家は突然何もかも変ってしまう。上流階級に憧れるママの指図通り家も車も仕事も犬もすべてが上流に変えられる。
娘のミリーは貧乏なBFとの付き合いをやめさせられ、ジョン・スミスは下宿を追い出されてしまうのだ。
10万ドルというお金は一体どのくらいのものなのか判らないがとにかく彼らは一躍貧乏生活(とはとても思えない広くて豪華な家なんだが、とほほ)から上流階級への仲間入り。ママは思い切り贅沢を楽しむが株価暴落でまたあっという間にすべてを失ってしまう。彼らは再び大金が欲しいと銀行家に掛け合うのだ。
闇酒場でミリーを救いだし、賭けごとで弟を救いだしたジョン・スミスのフルトン氏が最後に出した答えは・・・「10万ドルをあっという間に使ってしまったのならまた渡してもすぐなくなってしまうでしょう。もうお金は上げられません」というものだった。
一家は豪邸を引き払い元の家、元の小さなドラッグストアに戻ったのだ。
そしてミリーはBFと仲直りし、すべては元通りとなった。

最後に種明かしがあるのかと思ったらフルトン氏は何も明かさず去って行った。金持ちが幸せとは限らん、という言葉を残して。

禁酒法の時代なのである。家の中で酒を飲むシーンがあるのだが、「逮捕されるわ」と言って慌ててカーテンを閉め、ちょうどドアをノックされ警察かと怯えるという社会なのだ。賭博も禁止なのだが、その両方の件でスミス氏が逮捕されるという展開がおかしい。
ミリーがBFに振られたと言ってスミス氏にしがみついて泣いてると傍のご婦人が「ふしだらな」と言って早速両親に言いつける、といった次第である。この辺の映画ではよくされる設定のような気がするが妹のロベルタが明るくて作品を軽やかにする効果を出している。
金持ちに憧れるママはちょっと行き過ぎの気もするが彼女とリプリーは同じ穴のムジナなわけで人間の欲望を端的に表わしてみせている。

やや偏屈な金持ちじい様役のチャールズ・コバーンがとてもいい味で、さすが一代で財を成しただけあってギャンブルも凄腕でてきぱきと手際がいい。今だったら瓜二つの孫娘に恋情を持つような表現もあるかもしれないがそれが先に書いた「仲を疑われる」場面で彼はきっぱりと「娘を思う気持ちしかない」と言うわけなんだろう。

まあ、元の生活がどん底ってわけじゃなく、私の目から見たらとんでもなく裕福な家にしか見えないのだが、あんな馬鹿げた上流階級もどきみたいな集まりより元の生活が(あの水準なら)絶対いいに決まっている。でも10万ドルくれるっていうならもらうけど^^;(今の金額でも凄いよね)

ダグラス・サークの作品としてこの作品がどのくらいの位置なのか、初めてなので判らないが、とにかく思った以上に面白い作品だった。
どのくらい描写が正確なのか、ずれているのか、大げさなのか、よく掴めてはいないのだけどね。

本作の可憐なヒロイン・ミリーを演じたのがローリー・パイパー。実に私と言うのは役者の名前を把握していないのだが、この愛らしい少女はどなた?と検索してがーん!!なんと『ツイン・ピークス』のあの意地悪女キャサリンではないか。
可哀そうな香港女性ジョシー・パッカードを苛めぬくキャサリンを演じたのが彼女だったのだ。ぎゃああ。年月というのは無慈悲なもの・・・いや役者としてはこちらがいいのかなあ。単なる清純なだけの美少女より海千の悪女のほうが魅力的というものか。そういえば確かに意地悪なのにやたらともてる役だった。この昔のイメージがあればそうなるのかもしれん。

監督:ダグラス・サーク 出演:パイパー・ローリー ロック・ハドソン チャールズ・コバーン ジジ・ペルー リン・バリ ジジ・ペロー
1952年アメリカ


ラベル:家族
posted by フェイユイ at 23:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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