映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年08月08日

『私の愛情の対象』ニコラス・ハイトナー

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THE OBJECT OF MY AFFECTION

愛とは何か、セックスとは何か、人生とは生活とは何かというテーマを数人の男女の交わりから描いていくちょっとお洒落な映画、という感じの作品でニコラス・ハイトナー監督でなければ私的には敬遠してしまうジャンルだったりする。
無論この男女はハイトナー監督作品だけあって(と言っていいと思うが)ストレートとゲイが交錯していくのであって、これが単なるストレートだけの物語だったら途中で寝てしまうか、さっさとDVDを取り出していただろうが。
といってもゲイの問題が絡んだといえど人間同士の確執は同じだよ、というのが答えでもあるようだ。
つまりゲイだから悪人でもかいのなら特に善人でもなく、ゲイだから馬鹿なのでもないように逆に神のように特別な答えが出るのでもなく皆同じように悩み苦しみ、間違ったことをしでかしそしてとても素敵なこともやってくれる。(ゲイだからと言って特別に卑下したり、逆に神聖視したりするのではなく)
ごく当たり前の職業で当たり前の人生を生きている、男と女とゲイとストレートの物語である。

無論ゲイとストレートが交流する話になると色んなことがこんがらがってくる。美男美女同士で好き合っているのに完全な友人同士として一生共に暮らせるか、という設定ではほぼ無理なのではと思えてもこれが片方ゲイなら「できるのかな」となってくる。だがストレートである女性にとって好意を持つ男性が自分にこの上なく優しく、理解してくれるのに特別な感情を持たないでいる、というのは次第に困難になってくる。
しかも彼が目の前で男と手を取り合っているのを見せつけられるならルール違反で感情をぶつけたくなってしまうのが正直なものだろう。
橋口亮輔『ハッシュ!』もゲイのカップルと一人の女性の妊娠にまつわる話で非常に面白かったが(正直に比較すれば『ハッシュ!』の方が面白かった気がするがあちらの方が後に作られているので本作が参考になっていることもあるのかもしれない。勝手な想像だが)
本作の主人公二人の言動というのはとても自由でいるようでその実そんなに奔放なわけでもない。ニーナは強がって見せているがやはり一生添い遂げられる唯一無二の存在を求めている。それはゲイのジョージも同じで相手が同性だというだけで彼は浮気な性質ではなく固く結ばれた関係を望んでいる真面目な人間なのである。だからニーナとの生活も彼女と恋人とを同時に愛することはできなかったのだということだろう。
(この辺『ハッシュ!』はできるんじゃない?)という答えを出しているような気もする。女性の考え方一つでかなり変わってくるかもしれない)

悪魔的でも幻想的でもおどろおどろしくもない普通の男女とゲイの恋物語。
ゲイの主人公は小学校の教師。とても教育熱心ないい教師なのであっていかがわしい欲望を子供に持ったりはしない。好青年で確かにこういうゲイでつまり変な下心がなく親切にされたら女性はなんて爽やかなんだろうかと好きになってしまいそう。
ゲイであることに悩むのではなく、ゲイである自分がどう他のゲイでない男女、そしてゲイである男たちと向かい合いコミュニケートしていくか、という物語なのだった。
そしてストレートであるニーナは他の男との子供を妊娠出産しながらゲイである男性を好きになってしまうことでどう解決していくか、という展開だったのだが、ここでの答えは「ゲイの彼とはあくまで子供のおじさんという接し方でやはりストレートの男性と暮らす」ということだった。
これには何らかの反駁がありそうだ。先に書いたように『ハッシュ!』という映画がもう一つ別の答えを出しているし、ニーナ本人が言いだしたことを撤回することにも疑問をもたれそうである。
それでもこの映画のラストも一つの答えであり、ニーナが自分の思ったことに正直に行動して、様々な人々との交流の中で愛する娘を育てていく、という道はとても愛すべきことだと思う。

ジョージの新しい恋人ポールが舞台俳優でその同居人の老人が劇評論家なのだが、ポールが演じている現代的シェイクスピア劇を観て「時代の雰囲気が感じられない」などと批評しているのがおかしく、ベン・ウィショーのハムレットなどもこう言われたりしたのだろうかとつい重ねて考えたりしてしまった。

ヒロイン・ニーナ役のジェニファー・アニストン。TVドラマでちら観する以外では初めてじゃないだろうか。さすが人気のある女優さんだけあってとてもキュートな女性だった。
そんでもって彼女の兄役を演じていたのが、アラン・アルダ。TV版『M*A*S*H』での彼ピアースがめちゃくちゃ大好きだった。彼はその作品の脚本・監督もしている才媛でもあったのだね。かっこよかったなあ。あんな面白いTVドラマっていうのもないよね。

幾つか観てきて。ニコラス・ハイトナー監督作品ってあんまり官能的ではないよね。なんか理屈っぽいというか。なんていうといけないみたいだけど理屈っぽい映画も好きなんだ、わりと。

監督:ニコラス・ハイトナー 出演:ジェニファー・アニストン ポール・ラッド アラン・アルダ ナイジェル・ホーソーン ジョン・パンコウ ティム・デイリー ジョン・パンコウ
1998年アメリカ


posted by フェイユイ at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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