映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年08月16日

『イヴの総て』ジョセフ・L.マンキーウィッツ

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ALL ABOUT EVE

『ガラスの仮面』でマヤを蹴落とし自分がまんまとその地位にとって代わる少女の話の元ネタが本作だと何かで知ってずっと観なきゃと思いつつ今になった。
なのでまあ若干ネタばれしてたわけだが彼女が怪しいというのはすぐ匂ってくるのでさほど影響がわるわけではないし、判ってた方が最初からより面白く観れるかもしれない。

それにしても一番最初に彼女が胡散臭いと気づいたのはマーゴの世話役の女性バーディなんだよなあ。なにしろまず彼女が自分の仕事を奪われるからなんだろう。
40歳の大女優マーゴの出待ちを毎日してる若い娘に気付いたカレンは彼女をマーゴの楽屋につれていく。
彼女の熱烈なファンで毎日芝居を観に来ているという娘イヴの純粋で熱心な態度にマーゴと劇作家ロイド、そして彼の妻カレンはすっかり好感を持ってしまう。(だが付き人さんは最初っから疑ってる。この人が一番凄かったわけだ)
マーゴはその日からイヴを自宅に泊めて身の回りの世話をさせていく。献身的な姿に皆が感心するばかり。だが付き人のバーディは彼女がマーゴの一挙一動を見習っていることに不審を抱く。最初は笑っていたマーゴもイブがマーゴの恋人に連絡を入れていることを知ってから次第に懸念を持つようになった。

脚本がとにかく上手くて面白い。大女優と若い女優志願の娘が火花を散らして駆け引きをする、なんていうのは他にもあるかもしれないが本作が面白いのはその他の諸々の設定やエピソードなのだろう。
設定が「二人の女優」ではなく「二人の女優と付き人の女性と劇作家の妻」という4人(あとで5人目が登場するが。6人か)の女性の駆け引きが主体になっている。男たちはその間をうろうろするという感じだが、だからと言って間抜けなのではなくきちんとした役割を持っているのがまた面白い。
まず何と言っても面白いのが女優ではなく劇作家の妻としての役であるカレン。彼女がこの物語の案内人ということなのだろうが、まずイヴに同情しマーゴの短気を怒るがそれは友人としてであって心底はマーゴを好いているのだが途中で変な計画を立ててしまいそのことで追い詰められてしまうという過ちを犯してしまう。劇作家である夫を愛し、マーゴに強い友情を持ついい女性なのだ。
そして気位が高い女優マーゴは人気実力ともに認められているのに40歳を迎えたこともあり演出家で8歳若い恋人ビルが自分から離れていくような怖れを振り切れない。エキセントリックな女優をベティ・デイビスがこれでもかって感じで演じている。まさに、というところ。
そして非常にしとやかな美しさで騙していくのがイヴを演じるアン・バクスター。マンガ『ガラスの仮面』では彼女役は判り易く悪者顔だったが彼女の顔だけを観てたらやはり騙されるだろうなあ。
ところでこの映画で最も分岐点となるのがイヴがマーゴの恋人ビルに言い寄る場面だと思うんだけど、ここって他の映画なら若い美人の彼女に普通落ちるよね。男の性ということで好き嫌いというよりつい一度関係をもってしまうだけっていうこともあるはずなのに本作ではビルが「僕が愛してるのはマーゴなんだ」ときっぱり言うわけでこれは今ならこうはできないかもなあ。それはカレンの夫も同じなんだけど随分固い男たちなのだ。女性としてはこの辺嘘だろうがとても嬉しい展開じゃない?新聞記事を読んでビルがマーゴを慰めに飛んでくるとこもそうそうこんないい男いないよって感じでよかったねえってマーゴに言ってやりたくなるじゃないか。
(というかうまい脚本だけどここと冒頭皆がやたらイヴを信頼してしまう場面はちょっとだけ「?」とならなくもない。でも許す!)
 
イヴの本性が段々見えてきて騙されていた4人ともすっかり判ってくると却って彼らの仲は前より強く結ばれていくのがおかしい。特にマーゴとビルはこれで結婚することになったんだから逆によかったのか?
そして彼ら以外の人々が(新聞記者マックスは別として)彼女の演技に拍手を送り騙されている中でイヴが受賞した感謝の言葉を述べるのを4人(とマックス)だけがしら〜と聞いているのも楽しい。

まったく意味合いもテーマも違うのだが、どこか昨日観た『マルコム]』と重なるものを感じるがマルコムが自分の犯した間違いに気づいていくのと違いイヴはますますこの道を歩んでいくわけだ。
第5の女性というのはハリウッドから来た女優役の(なんと!)マリリン・モンローで、そのままの役みたいな新進若手女優という役で美貌と愛嬌をふりまくのだが、ちらりと出るだけなのにまるでとろけてしまいそうな色っぽさ。同じ若手女優でもイヴとは全然違うイメージなのだ。そして第6の女性が最後に登場する女子高校生。すっかりスターになったイヴの留守中の部屋に忍び込み、怒って電話しようとするイヴに言い訳をする。イヴのことを思い返せばどこまでが真実か嘘か判らない、という落ちで実際ぬけぬけと嘘をついてみせるのだ。
こっそりと見えない場所でイヴが着ていた華やかなローヴを身にまとい彼女が受けたトロフィーを掲げた姿が三面鏡に無数に映し出されこういう出来事が果てしなく続くことを暗示している。

上にあげた点だとか他にも作りすぎな感もあるがそれでもなかなかおもしろかった。特に関係が破壊されたとかいうのではないから気軽に観れるかもしれない。

監督:ジョセフ・L.マンキーウィッツ  出演:ベティ・デイビス アン・バクスター ジョージ・サンダース マリリン モンロー ゲイリー・メリル
1950年アメリカ

『ガラスの仮面』ではマヤが乙部のりえに踏みにじられてしまうのだが、それを怒ったあゆみさんが芝居で彼女を叩きのめす、という爽快なやっつけ方をする。この話が凄く好きで、あゆみさんってなんて素敵なの〜となってしまう私だった。かっこいい。



ラベル:サスペンス
posted by フェイユイ at 22:27| Comment(4) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『マルコム]』スパイク・リー

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MALCOLM X

この作品も早く観ねばと思いながら今頃やっと観たというものなのだが、やはり早く観るべき映画だった。とんでもなく面白かった。3時間以上の長さというのはやや恐れ入るが一旦観だせばとてもスピーディに進行していくし見せ場が次々と用意され、緩急のバランスも上手く一気に見せてくれる。

「差別問題」「実在の人物」などということで堅苦しく難しい作品かと敬遠していたのもあったのだが、そういう懸念は必要ない非常に引き込まれる楽しさを持った作品だったのはちょっと驚きだったほどだ。
微妙にくすぐり笑い的な表現が仕掛けられていて、特に刑務所で出会うイスラム信者のベインズとのやりとりはどこか滑稽に見えてくるのでこれは何かあるのか?と思っていたらははあやはりそういうことだったのか、と頷ける。
デンゼル・ワシントンがめちゃ若くてハンサムなのも魅力の一つだが実際の彼も負けないほどの二枚目だというのもなるほどだからこそ人々をここまで強く惹きつけたのだろうか。最後の彼への賛辞で「彼を誹謗するものいるが実際の彼の言葉を聞き、彼の笑顔を見たのか。彼自身が何かの暴力を振るったのか」という監督自身の言葉になるのだろうか、そのモノローグにすべて込められている。その気持ちは充分映画作品としてデンゼルの表現として成功している。

マルコム=レッドという青年が恐ろしい痛みを我慢して髪の毛をまっすぐに伸ばしギャングになってしまうところから始まり、刑務所でイスラム信者ベインズから教えを受けてクスリや銃などを遠ざけ、イスラムの指導者イライジャに献身的に尽くしていくエネルギッシュな布教活動を経て、イライジャやベインズが実は敬虔なイスラムとは程遠い存在だったと気づき自らの考えによる団体を作りあげ暗殺されてしまうまでの彼の行動が描かれていく。
マルコムが信奉したイライジャのイスラムの教えが非常な白人排他主義で「アメリカ黒人はアフリカへ戻るべきだ」と説き、女性差別が甚だしいので最初から「こういう考え方の人物を良しとすることはないだろうが」と思っていたらやはりマルコムがそこから離れることになり実際にメッカ巡礼の旅へ赴き、白人のイスラム信者とも交わって祈ることから本来のイスラムには人種差別はない、という考えに至っていく。
まさにこの作品の中で一人の青年が悩み考え辿り着く行程を共に歩むわけで大変判りやすいし、最初から特別に優れた人物だったのではなく手探り状態で葛藤し迷いながら道を見つけ出していく様子は共感できるのではないだろうか。

彼こそは「ニグロ」ではなく「アフロアメリカン」なのだという言葉に、やっとこの言葉の意味が判ったような気がする。

本作で「白人への怒り」の言葉がいかがわしい教団の言葉として激しく発せられるのだが、彼らの偏った表現だとしながら本音をぶちまけているように思える。
マルコムが最後に見つけた自由と平等の社会になる日が本当に早く来て欲しい。キング牧師が語っているように意見の違いを殺人という行為で解決(戦争もまた同じだろう)するようなことがなくなればいい。そう願いたい。
 
監督:スパイク・リー 出演:デンゼル・ワシントン アンジェラ・バセット アル・フリーマンJr. アルバート・ホール デルロイ・リンドー
1992年 / アメリカ
ラベル:人種差別 歴史
posted by フェイユイ at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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