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2009年09月02日

『噂の二人』ウィリアム・ワイラー

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The Children's Hour

ついこの前『ダウト〜あるカトリック学校で〜』を観たのでよりインパクトを強く感じた。どちらも同性愛を扱っているのが問題なのは「人の噂」ということでしかも本作ではさらに「言葉、声に出して言う言葉」と言うものがテーマのようにさえ思える。

どちらも自分では見てはいないのにある疑惑を持った人物から(その人物もまたはっきりした何かを見たわけではない)聞いた「言葉」だけで揺るがぬ確信を持ってしまう。『ダウト』では老シスター(と言わせてもらうが)であり本作では老貴婦人である。そして両人とも自分こそが正義であり子供たちを守る責任者だという信念を持っている。
どちらでもごく小さな疑惑だったものを人間は何故信じ切ってしまうのだろう。あの『オセロー』で描かれるように人の心を揺るがす嘘はより真実に聞こえてしまうのだろうか。

老婦人は虚言癖のある孫娘が言葉を口にした途端、迷うこともなく信じてしまう。ここに描かれていたわけではないが自分の孫娘が嘘をつきやすい性格だとまったく知らないわけではなかったんじゃないかと思うのだが、例えそうでなくても言ったそばから信じてしまう、というのは極端のようだが『ダウト』のアロイシアスが「どうしても信じてしまったのです」と同じ状態になってしまう。
17歳の時から仲のいい女性二人マーサとカレンは力を合わせて寄宿学校を立ち上げ経営していく。カレンには婚約した男性がいるのだが、学校が波に乗るまではと結婚が延び延びになっている。そんな折、学校生活に不満を持つ少女メアリーはこっそり見てしまった小さな事実と色々な言葉から一つの疑惑を生み出す。「カレン先生とマーサ先生は怪しい」
マーサは男嫌いで美しいカレンにずっと惹かれていた。だがそれは友情としてのそれだと自分でも思っていたのだが、メアリーが言った噂「二人は恋人同士だ」という言葉を聞いて自分の気持ちが明確になる。自分の感情が友情ではなく恋だったのだと。思うだけの時は気づかなかった気持ちが言葉になって彼女に認識させるのだ。
カレンの婚約者ジョーももしかしたら微妙な不安と疑惑をずっと持ち続けていたのかもしれない。何故カレンは結婚を延ばすのか、友人であるはすのマーサが何故自分を毛嫌いするのか。叔母から噂を聞き激怒する彼だがその半面事実が表に出たことで真実を突き付けられた反動なのかもしれない。
カレンがジョーに「聞きたがってることを言って」と言っておきながら言いかけた彼の口をふさぎ「マーサとは何もなかったわ」と答え、ジョーが「疑ったことはなかったのに僕はなんということを聞いてしまったのだ」というやり取りは傍目には変なやり取りだが、言いかけた、というだけで彼が疑惑の言葉を持っていたことを二人で話し合い、その疑惑の言葉はもう消すことはできないと確認しあったのだ。

「やり直しましょう」と言葉に出すカレンに対し何も言えないマーサは心を隠したままになっている。
この先のエンディングには私は不満である。
本作はワイラー監督36年製作『この三人』が不満だったための自作リメイクだということだが、当時としては悲劇であることに意味があったのかもしれないが、私はどうしてもカレンの言葉にうなづいてマーサも共に歩き続けてほしかった。
今また映画になるならそうであってくれるだろうか。
カレンもまたマーサと同じ気持ちだったとはっきり言葉にしてくれるかもしれない。

この映画の出演陣で最も印象的なのはオードリーでもシャーリーでもなく虚言癖の少女メアリを演じたカレン・バーキンかもしんない。何しろレズビアンというのをできるだけ控えめに演じてる二人と違って思い切り感情を表現してくるから一番目を奪われてしまう。
ワイラーの演出はこの前観た『コレクター』でも他の大作でも本当に素晴らしいが本作の結末の付け方はやはり後味が悪い。モーターみたいにいくら悪いことをしても平然としてるほうはまだ判るがメアリのおばあ様婦人を叩きのめしてすっきりする落ちはどうなのかなあ。後悔する人々を後に堂々と歩いていくオードリーにあんまり「よくやった!」みたいな爽快感はないしね。案外みんな「そうは言っても本当にレズってたんじゃないの」と笑ってあんな風に謝罪したりしないかも。なんか、「ほーらあんた達が苛めたせいで死んだわよ」って感じで歩いていってるように見えなくもない。と言ってもそれを言いたいが為の作品なのかもしれないからねえ。
結末以外の映像は堪能しました。イライラ感がたまらんです。

監督:ウィリアム・ワイラー 出演:オードリー・ヘプバーン シャーリー・マクレーン ジェームス・ガーナー ミリアム・ホプキンス
1961年アメリカ


ラベル:同性愛 疑惑
posted by フェイユイ at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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