映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年09月04日

『テルマ&ルイーズ』リドリー・スコット

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THELMA & LOUISE

こんな爽快な映画を今まで観たことがあっただろうか。女なら絶対もう興奮間違いなし!!と血沸き肉躍るのである。

男バージョンでこういうロードムービー、アウトローになった男二人が手を組んで逃亡する、という話は数々あっただろう。そういった物語を女性版として作り上げたという感じではある。いわばこの映画は女版『明日に向かって撃て!』なのだ。

そして二人の女はアメリカンマッチョを振りかざす亭主に抑えつけられた主婦とそういう事態になるのを恐れているのだろうか若干その予兆もある男を恋人に持つウェイトレス、といういかにもありげな設定である。
そんなアメリカのどこにでもいるだろう女二人がせめて2日羽を伸ばそうとドライブに出たことが発端であった。

特にやや興奮気味の主婦テルマは酒場で男に声を掛けられすっかりハイになってしまうが、その男はテルマとのセックスが目的で抵抗するテルマを殴りつけレイプしようとする。ルイーズが助けに入り事なきを得たが男の捨て台詞にかっとなったルイーズは男を撃ち殺してしまう。平凡な生活を送っていた普通の女二人の逃亡劇が始まる。

初めはまるきり頼りなくルイーズの足を引っ張り続けている甘ったれたテルマが逃走劇の間にみるみる本当のアウトローになっていくのが面白い。男同士だと大体兄貴役と弟分みたいなのが決まっているがめそめそしていた主婦テルマがどんどん変身していくさまが小気味よくまた怖くいほどだ。私を含め同じように毎日の生活に縛られ、大切とはいえ家族に縛られて動けない主婦たちはテルマの成長に熱くなってしまうに違いない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
すんごく引き締まった体が見惚れてしまう美味しそうな若いブラッド・ピットが演じる「若い男」
純朴そうに見える可愛い若者にテルマが惹かれた時、厭〜な予感がしたのは誰でもだろう。しかもわかりやすく強盗だと告白しその手口まで教えてくれる。逃げる為に絶対必要な金を(しかもウェイトレスでこつこつ貯めた金なんだろうに)テルマののぼせ上がったうっかりで盗まれたルイーズの落胆は見るに忍びない。
だがここからテルマが変わっていくのである。
レイプされそうになった自分を助け、男の言葉にかっとなったルイーズが犯した殺人。テルマはそれが自分のせいなのかとルイーズを責めてしまうのだが、それもこの盗難も自分が甘かったせいだと目覚めたテルマは泣き崩れるルイーズを守るためにそれまで彼女が思いつきもしなかっただろう「強盗」をやってしまうのだ。あの若者から聞いた通りの方法で。
ルイーズが犯した殺人は情状酌量の余地がある、がテルマは自ら強盗を犯し、その後彼女らを逮捕しようとした警官に銃を突きつけ脅迫する。ここに一人の刑事が登場し、彼女たちに同情を寄せる。罪もない弱い立場の女二人がたまたま遭遇してしまったレイプ魔(みたいなもんだ)の為に犯罪を重ねていくことに心を痛めるのである。彼は一体何なんだろう。この作品の中で一人変な立場の人間である。思うに、製作者が男たちであるために出てくる男が全部悪人なのはどうも肩身が狭いと一人「話の判る」男を登場させたのではあるまいか。彼以外の男は本当にしょうもない奴ばっかしだ。だけどもそんな彼の存在はなんだかこの作品の中で異質に思えてしまうのだが。

それまで一方的に面倒を見る側見られる側と決まっていた二人がいつしか微妙なバランスで互いを助け合う形になっていく。
ルイーズを助ける恋人のほうはまだいいとしてもテルマの亭主の情けないこと。しかしあちこちでうちの亭主にそっくり、という声が聞こえてきそうだ。
腐りかけたような生活に嫌気がさし旅に出たもののとんでもない事件を起こしてしまっておどおどびくびくと逃げ始めた女二人が旅を続けるに従いそれまで自分が味わったことのなかった自由を感じ、エキサイトしていく。アメリカの広大な大地を車を駆って走り抜ける彼女たちがなんて羨ましいことか。こんなに興奮する逃亡があるのか。

しかしメキシコって遠いんだなあ。今まで観た映画では案外あっさりメキシコに辿りついてたのに、行けども行けどもまだ道がある。景色はもうメキシコみたいに見えるんだけどまだなのだね。アメリカの犯罪者がメキシコへと逃げる物語を今までどれほど観たか。メキシコ人にとっては迷惑な話だが。

下品なトラック野郎をとっちめる二人はもうすっかり本物の悪党だ。「お前ら地獄から来たのか」と叫ぶ男。まさしくそのとおり。

大勢の警察官から追い込まれた二人。「捕まりたくないでしょ。行って」テルマの言葉に車を走らせるルイーズ。その先は断崖絶壁。二人は飛んだ。
昨日観た映画のラストの死に不満を感じた自分がこの二人の死には自由への熱い思いを感じてしまう。不思議な感覚だった。

夫の傲慢さにびくびくしながら生きているテルマを演じたジーナ・デイビスの変身ぶりのかっこいいこと。物凄い長身なのも素敵だ。177センチって言ってるけど絶対180あると思う。逆さばだきっと。
めそめそしてルイーズにたよってる彼女も可愛かったが目覚めてしまった後のテルマはホント男前なのだわ〜。

突然通りすがりの若者ってな登場のブラピの細いこと。まだ無名だったのだねえ、この頃は。キュート。

この映画を観て思い出したのが桐野夏生『OUT』
発表されたのは『テルマ&ルイーズ』の随分後だからもしかしたら影響もあったということはないだろうか。
内容は全く違うが平凡な主婦(本作は片方独身だが)が暴力的な男を殺し家庭を捨て逃亡していく、という筋書きと女が自由を求めていく感覚が同じように感じられる。
せっかく絶賛した本作をやや批判してしまうことになるが、後年出ただけあって『OUT』には本作より以上の面白さがある。というか本作を改良していったような。
一つは本作の主婦テルマに子供を持たせなかったのはやはり子供がいたら観客の感想は正反対のものになっていただろうと思えるから。
『OUT』では子供のいる主婦、介護が必要な老人を抱える主婦が主人公になる。より不自由な生活を強いられているわけだが、そういう存在を抱えた女性が犯罪と逃亡を続ける映画であったら疑問を持たれてしまうだろう。『OUT』では設定をあえてそういう責任を担った主婦があえて犯す犯罪という形にしている。また殺すのは通りすがりの見知らぬレイプ男ではなく夫である。テルマも(と言っても殺すのはルイーズだが)本当に殺したかったのは夫だったのではないか。これも夫を殺す、というのではテルマへの共感が薄れそうなために行きずりの男になってしまったような気がしてしまうのだ。
しかし鬱憤のたまった主婦の多くは子供がいるわけで、子供を持った以上はもうテルマにもなれない、ということになてしまう。もし子持ちでこの行動をとっていたら「子供がかわいそう」という感想のほうが上回ってしまうはずだ。そういう意味で『OUT』は本作の進化形になっているのだろう。だが確かに子供との関係をうまく成立できないでいる『OUT』の物語は苦い味がする。その味が現実、ということなのか。
夫を殺す設定にしなかったのも昔は自分も愛したはずの夫を「殺してしまう」とまでしてしてしまうと何故そこまでするのかという理由づけの話をだらだらと加えることになる。行きずりのむかつく男のほうが簡単でいい。
そしてラスト。犯罪者になってしまった二人の結末は死だということで納得させてしまのではなく『OUT』ではさらに進む物語へと変化している。これも自由を求めた主婦の最期に不満を持った為の反抗のような気がしてならない。

監督:リドリー・スコット 出演:スーザン・サランドン ジーナ・デイビス ハーヴェイ・カイテル ブラッド・ピット マイケル・マドセン クリストファー・マクドナルド
1991年アメリカ


posted by フェイユイ at 00:59| Comment(5) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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