映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年09月27日

『愛についてのキンゼイ・レポート』ビル・コンドン

mtxuaotet.jpg
KINSEY

研究対象がなんであれ、その時代に反抗しながら突き進むのは困難なものだが、その研究が「セックス」であるとなれば現在でも様々なニュアンスで敬遠され、或は講義を受けていた生徒たちのようにくすくす笑いで迎えられるか同僚の教授や息子のように毛嫌いされてしまうのはあまり変わらないのかもしれない。

どこの国でもあることだろうがアメリカという国は自由さと厳格さが極端な形で存在しているように思える。この物語は1950年頃の物語なのだが程度の差はあれ、そういった自由さと厳格さはいまだに続いていることのようにも思える。
最近になって知ってえっとなったことがある。
『アイラブルーシー』というアメリカTVコメディドラマがあって(ちょうどキンゼイリポートと重なるか少し後くらいだが)出演中のルーシーが現実に妊娠してしまい、どうせ若妻役のドラマなのだから、そのまま主人公が妊娠したことにしようかという話になったのだが、当時のアメリカTVでは妊娠した女性を登場させるのは「はなはだ猥褻なことだ」と叩かれるに決まっているので散々苦悶した、というのである。
「妊娠した女性が猥褻」という意味が判らなかったのだが(普通に結婚している夫婦だし)とにかく妊娠してるっていうのは「セックスをイメージさせるから御法度」だということだったらしい。
私としてはそういう風に考えることがあるということすら思いつかなくてひっくり返ってしまったのだが、そういう時代、そういう国だったのだね。
まあ、聖母マリアは処女で懐妊なされたのだからそう思っとけばいいような気もするが。
とにかく『アイラブルーシー』はそういった当時のタブーを打ち破りルーシーのおなかは実際にどんどん大きくなり、アメリカ中の妊娠した女性が実に励まされた、というのだからやはりタブーを打ち破るのは大変だが大切なことなのだ。(となればこの「妊娠した女性が主人公」のドラマは当時かなりショッキングであり貞節な家庭では観なかったのかもしれないね)

何だかちっとも『キンゼイ』に行かないがそういう国だったのである。

キンゼイは実在の人物であるから、またまた「実際はこうでなかった」とかいう話も転がってはいるのだが、映画は映画という作品として観てみよう。
彼の父親が異常なほど厳格で威圧感のある人物だったことが彼の研究の発端であるように思えるし、昆虫採集の標本の出来栄えの気が遠くなるような細かな作業(小さな小さな紙片をピンで刺しそれに虫がのっかってる)を見ているとこの根気があるからこそ大陸の隅々までサンプルをとって行こうという忍耐力が生まれるのだろう。
また彼が男女ともに性的な関心があることも研究にとっては大事な点で、もし彼が女性だけ(か男性だけ)にしか興味がないのならこうした研究は難しいはずだ。同性愛に反発を覚える人はどうしても拒絶反応を抑えきれないようだから。そして獣姦、SMなどというような性的志向のサンプルを集めていくのだが、最後あたりで幼児性嗜好を持った男が現れ「思春期前の少年や少女と多くの性関係を持った」と言う時だけ「気持ちが悪い」と言って博士の助手が席を立ち、キンゼイ自身も他と違い明らかに不快感を持っているのはやはり今最もタブーとされているのはそういう幼児性嗜好だからなのだろうか。この男だけは気持ち悪い存在として醜く、反感を持って描かれていた。

周囲から好奇の目か軽蔑の目で見られ続け資金も工面できずキンゼイは疲れ果ててしまう。
だがある日の面接で、結婚していた女性が同性を愛してしまい家族から見放されるがキンゼイの本で多くの仲間がいると知り、命の恩人だと感謝される。
「人々を解放するつもりが私のせいでよけい縛りつけてしまった」と嘆いたキンゼイを救う一言だった。
また長い間確執を抱えたままの父子が父の少年期の告白によって少し和らぐ。厳格な父親もまた悩んでいたのだ。

研究者グループ内で肉体関係のいざこざがありキンゼイ夫婦も一人の男性と互いに関係を持つという他では深刻な問題もどこか研究の為、とでもいうような奇妙なニュアンスを漂わせてしまう。

「セックスは統計がとれるが愛は測れない、我々は愛に無知だ」
やはり最後は「愛こそが大切」という幕切れであることが必然であるな。

ピーター・サースガード、可愛い。

監督:ビル・コンドン 出演: リーアム・ニーソン ローラ・リニー クリス・オドネル ピーター・サースガード ティモシー・ハットン
2004年 / アメリカ/ドイツ


ラベル:セックス 科学
posted by フェイユイ at 23:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。