映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年10月04日

『眺めのいい部屋』ジェームズ・アイヴォリー

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A Room With A View

昔、この映画の公開時ではなくてもビデオかTV放送だかで観たはずだと思うのだが、多分さっぱり判らなかったのだろう。まったく覚えていなかった。
今観てみても物凄く感銘を受けるだとか、血沸き肉躍るなんてことは些かもない作品ではあるが、あちこちでクスリと笑える楽しい映画である。少しは大人になれたのかもしれない。

とはいえ、私なんかはジョージよりもダニエル演じるセシルのほうがずっとハンサムな上にキュートで魅力的に思えてしまうのだが、それはダニエルだからということなのかもしれないが。
また嫌なキャラクターのはずのシャーロットが非常に面白くてKYな性格というのか彼女の言動一つ一つがどっか癪に障るのだが、それがこの作品のとてもいい香辛料みたいなもので効いている。
ヒロイン・ルーシーは行動的な現代娘でありながらもやはり当時の規範から抜け出すことは苦しい葛藤なしにはできないことだったのだろう。様々な人に様々な嘘をつき自分を最も偽りながら、危ないところで打開することができた。すべての答えはジョージの父親が親切にも話してくれるわけで「愛する人と別れることこそが不可能」なのであると。

私はフォースターは『モーリス』しか読んでいないのだが、ここでも物語のラストは「こうであって欲しい」という願いがかなえられた形で表現されている。実際はこの逆の「愛する人と別れ」世の中の規範どおりの結婚をし、眺めのいい部屋を人に譲ってもらうより、自尊心を崩さない人生を歩むものだったのだろう。特に女性においては。

ルーシーたち上流階級とは違い好きになった男性ジョージは身分も低く父親の言動はどうも品がない、としか思えない。
セシルはルーシーと身分は釣り合うが「女性の気持ちが判らず、彼女を所有物の一つとしか見ていない」
ルーシーが友人姉妹の為にヴィラを紹介した、と言ってもジョージはもう別の初対面の人に紹介したと言い切って彼女の言葉をまったく問題にせず、彼女が怒っていることも気にしてもいない風だ。
フォースターの物語は『モーリス』にしてもこれにしても(これの原作は読んでないが)非常に説明的で型にはめられ過ぎのようにも思えるがそこに込められている願いを強く感じさせる。描写も美しい。

この映画で初めて顔を知ってから以降様々な作品で活躍を観ることになるヘレン・ボナム・カーター。ジョージにジュリアン・サンズ、婚約者はダニエル・ディ・ルイス。『モーリス』でモーリスの恋人役を演じるルパート・グレイプス、イタリアで知り合う女性作家にジュディ・デンチなど見応えある役者がそろい踏みである。
テーマはシリアスながら語り口は軽快でユーモアたっぷり。ジュリアンとルパートの全裸シーンもありでゆっくりたっぷり楽しめる一作なのであった。

監督:ジェームズ・アイヴォリー 出演:ヘレナ・ボナム・カーター マギー・スミス ジュリアン・サンズ ダニエル・デイ=ルイス デンホルム・エリオット ジュディ・デンチ
1986年イギリス


posted by フェイユイ at 22:55| Comment(2) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ショーシャンクの空に』フランク・ダラボン

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THE SHAWSHANK REDEMPTION

何度となく観た『ショーシャンクの空に』をまた観たのだが、判っているのに最初から涙腺刺激されてしまい、どうもしょうがない。
映画はどの作品だってごたくを並べて批評するものじゃないだろうが自分はいつもそれをやってるわけだけど、時にぐだぐだ言いたくもないほど好きになってしまうものがある。その一つがこれ。

最初観た時はとにかく原作者のスティーブン・キングが好きだし、彼の原作を映画化した奴は殆どと言っていいほど面白い。程度の差はあれ、やはり元が面白いんだからそうそうつまらなくはできないのだろう。作者キングが気に入らないという『シャイニング』もやっぱり面白いし、キングが脚本を書いたというTVドラマのほうも面白かった。彼のイメージであるホラーでなくても面白いのはまたどういうものか判らないが『スタンド・バイ・ミー』も『ダーク・タワー』も『グリーン・マイル』もまたしかり。
映画としての作品もいちいち挙げるのが大変なほど秀作が多くて一番を選ぶのも難しい。
その中でもやはりとても好きな作品が本作になるのである。

最初観た時は、ティム・ロビンスという役者自身には何の思い入れもなく観たと思う。モーガン・フリーマンはとても好きで本作の彼はやはり特筆すべき存在だろう。
一方ティムは白紙状態だったのでなんだかとても不思議な感じだった。大男なのに童顔でとても頭の良い人間を演じているのにどこかぼんやりしたところがある。
無論それは役柄のアンディの人格そのもので若くして銀行の副頭取までなった男が無実の罪で終身刑になるなんて相当ぼんやりだとしか思えない。多分彼はいい人間過ぎて自分が落ち込んだ運命がどんなものなのかよく判っていなかったんだろう。自分と同じように人は皆いい人間で無実ならいつか判ってもらえる、という「甘さ」があったのかもしれない。ティムはまさにそんな風な男に見えた。
今幾つかの彼の作品を観た後で観ているとこの作品の彼は他のより特に美しさを持っているように見える。それは私が彼の顔が特に好きだからなのかもしれないし、ここで彼は凶悪な男色家達に強姦しまくられる、という設定があるために少し美形になっているのかもしれない。
私がはっとしたのは大人しくて打ち解けないアンディが屋根の上の作業の時に鬼刑務官に銀行家の知識を使って彼の遺産に関する税金対策を申し出、見返りに囚人仲間にビールをおごって欲しいと頼む場面である。はしゃいでビールを飲む彼らの様子を不思議な微笑みを浮かべて眺める、というのは原作にもある描写なのだが、ちょっと難しい表情をティムはとても魅力のある本当に不思議な微笑を見せていた。大男のはずなのにここでは(原作も小柄な男なのだが)あまりそれを感じさせない繊細なイメージがあり気が弱い真面目な性格の人間、という印象を感じさせるのだ。
よく原作がよすぎると映画に不満を持つものだが、この映画は原作の良さと匹敵する素晴らしさがあって、語り手であるレッドを黒人のフリーマンにしたのも秀逸である。彼のレッドを観ると他の配役を考えられない気がする。

それにしてもなんて残酷な物語だろう。それはアンディが無実であるからなのだが、20年という年月を過酷な塀の中で過ごさねばならなかったアンディ。また有罪であることは自分で認めているレッドもまた40年という刑期を経て外へ出ることが逆に恐ろしくなってしまうという事実。
原作でラストにレッドがアンディとの再会を祈る言葉だけであったのが、映画では映像として映し出される。これをレッドの心象風景として捉えることもできるだろうが、どちらにしても私はこの光景が現実になったと信じる。記憶がない、と言われる太平洋を望む美しい砂浜で二人は再開し抱き合うことができたのだと。
とても残酷な物語でありながらまたとても美しい物語でもある。

キングの作品が大好きなのは彼の小説にいつも男同士の深い友情が描かれていることで、本作のアンディとレッドは特に映画では年齢も人種も生まれ育った環境も違いながら二人のつながりを強く感じさせてくれる。この部分もとても美しいと思ってしまうのだ。

ところでアンディがレッドにまるで暗号のような言葉を残していく。
木の下の黒曜石の下に大事なものを隠している、なんてまるで子供みたいなやり方だよね。埋めていたのも男の子が使うような乗り物が印刷された缶ケース。アンディという人間はずっと大人になりきれない子供みたいな人間なのかもしれない。それもまたティムにぴったりな気がする。

モーガン・フリーマンの語りの声が素晴らしくいい。聞き惚れる。

監督:フランク・ダラボン 出演:ティム・ロビンス モーガン・フリーマン ウィリアム・サドラー ボブ・ガントン ジエームズ・ホイットモア
1994年アメリカ
posted by フェイユイ at 00:53| Comment(0) | TrackBack(1) | ティム・ロビンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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