

BOB ROBERTS
いやもうあまりのおかしさ面白さ楽しさにはまり込んで観てしまった。一部の例外はあれど、監督兼主演映画ってあまり面白くならない気がするが、これはまさにその例外、滅茶苦茶愉快な作品だった。
ティム・ロビンスがアメリカ人とアメリカ政治と自分自身のイメージまでおちょくってるようである。白人でとび抜けて背が高い彼はこういうアメリカの保守的若手政治家にはぴったりであるしどこか皮肉めいた表情で尚且つ童顔で人好きのするところはなんとなく人を騙しやすい特徴でもあるではないか。
古風なフォーク調メロディで政治的批判をしていくさまはそれこそ「ボブ」・ディランをイメージさせる。
英語を解さないものにはとてもかっこよさげな曲調に聞こえたりするのだが歌詞がどれもとんでもないものばかりでしかしそれがぱっと聞きにはいいことを言っているような風なのがおかしくてしょうがない。金持ちであることは力があることで貧しい奴は文句ばかり言っている怠け者、だとか犯罪者は吊るしあげろだとか確かに「古きよきアメリカ」というイメージの裏に隠されているものが歌われているような強烈な皮肉だったりする。
無論本当のティム・ロビンスはこの正反対であることは当然のことなのだが徹底して自分の裏返しの姿を演じているのがおかしくてしょうがない。回りを固めているボブ・ロバーツ陣営の役者たちも「あえて」この演技をしているわけなのだろうと思うとますます楽しくなってくる。
ボブ・ロバーツを信奉している若者にジャック・ブラックもいて大笑いであるし。
ボブの側近にアラン・リックマン。ティムの恋人のスーザン・サランドンがTVキャスターとしてTV画面にのみ出演しているのも楽しい。彼女のキャスターもかっこいい。
ラストにTV報道で、ブッシュ大統領(パパの方)がイラクに対し武力行使するというアナウンスが流れそれまで開戦反対が多かったアメリカ国民も大統領の声明で反対派が少数派になってしまったと告げる。
麻薬撲滅運動を歌っていることにしてもティム監督は明らかにパパ・ブッシュをおちょくっているのだろうな。
それにしてもロバート・ロバーツってどういうネイミング?
歌のタイトル「ボブ・オン・ボブ」もなんなんだか。物凄くボブにこだわっているよ。
とにかく最初から最後までおちょくりっ放しで笑わせてくれるんだけど、車椅子に座って動かないはずの足で拍子を取っているというのをアップにするとかね。
ギターも弾いてるみたいだし歌もうまい、と思ったらお父さんがフォーク歌手なのだね。なる。
監督:ティム・ロビンス 出演:ティム・ロビンス ジャンカルロ・エスポジート ゴア・ヴィダル レイ・ワイズ ブライアン・マレイ ジョン・キューザック アラン・リックマン ピーター・ギャラガー
1992年アメリカ